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私のじゃない夢の仕事

作者: カヲリ納豆
掲載日:2026/03/15

あなたの行き先をセンスで決める者。

「(ああ、この曲は…)」


頭の中、曲が流れる。


最近。いや、もしかしたら、大昔かもしれない。


日本のアニメで使われていた、主題歌。

海賊しかいない世界に、普通の高校生が異世界転移する、小説家になろう発の。


私の姉が大好きだった、作品。


今日は、その曲で目が覚める。


目が覚めると、頭の中で流れていた曲は止まる。


ここは、私しかいない世界。

世界?

空間、か。


真っ白で、テーブルと。


それの上にある、大量にある紙。


「さて、決めるか」

誰を異世界転生させ、誰を異世界転移させるか。

私のセンスで決める、知らない人たちの行き先。


これは、お姉ちゃんがしたかった仕事。




『見て! またランキングに入った!

作家前進だね!』


よく、お姉ちゃんは言って、私にスマホの画面を見せてくれた。


正直、本が苦手な私には創作をネットに投稿するなんて、遠すぎる世界だったけど。


確か、中1からだっただろうか、姉が作家になるって言い始めたのは。


作家、ライトノベル作家。

『今は異世界系が流行ってるから、そういうのを書かないとっ』

やっぱり、私には遠すぎる世界だった。


そして、

『作家になれなかったら、異世界系の仕事に就きたい! 異世界転移とか、異世界転生とか、そういうのをセンスで選ぶの!』

とも、言ってきた。


まあ、中2のときに首を吊って自殺しちゃったんだけど。

誰に対しても夢を語っていたから、孤立して。


作家を目指すなんて夢、皆が応援するって訳じゃないのに。




「お姉ちゃんがしたかった仕事をしている…」

私は呟く。


記憶はあやふや、いつからこの仕事をしているのかは今の私にはわからない。

そもそも、私は死んだのだろうか?

転移か、転生か。

『似てるけど全く違うよ!』

姉の言葉は、思い出せる。簡単に。


誇らしいこと、なんだろう。

姉のしたかった仕事、皆の行き先を決める仕事。


でも、私がいないような。


昔の記憶があやふや、ただ姉のしたかったことを毎日する。


私という、ヒトの意味が。


「まあ、ぼちぼち考えていけばいいんだけど」

頭をかく。


姿は、いつまでも、17歳のまま。

だから、時間はたくさんある、のだろう。


毎朝、姉が好きだった作品の主題歌で起きる。

曲は色々、作品の内容は、なんとなく知ってる。

そして、センスで行き先を決める。


まあ、ぼちぼちでいいよ、先のことなんて。


1日の終わり、鼻で歌いながら、意識を手放す。



ありがとうございました。

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