第1話 神の選択と無人島
「──汝、リューヤよ。スキルを持って帰るか。それとも、好きな場所へ行くか。どちらかを選べ」
白い光の中で、声が響いた。
目の前にいるのは、人の形をしているようでしていない“何か”。
輪郭はぼやけているが、雰囲気は完全に――
神様。
そして俺は、
美波竜也、二十歳。
さっきまで俺は、勇者パーティーの一員として戦っていた。
そう。
魔王討伐。
勇者が聖剣を振り下ろし、魔王は光となって消えた。
長かった戦いは、ようやく終わった。
……で。
気づいたらここにいる。
「えっと……つまり?」
俺は頭をかきながら言った。
「俺、元の世界に帰れるんだよな?」
「うむ」
神は静かにうなずく。
「ただし、褒美を与える」
「褒美?」
「スキルを持って帰るか。好きな場所へ転移するか。どちらかだ」
なるほど。
つまり、
異世界能力を持って帰るか
好きな場所にワープするか
ってことか。
……悩むまでもない。
「スキル」
即答だった。
「迷いがないな」
「そりゃそうだろ」
好きな場所に行ったところで意味はない。
それより――
スキル持ちで日本帰還。
どう考えても人生勝ち組だ。
神は小さくうなずいた。
「では三つ授けよう」
その瞬間。
光が俺の体に流れ込んだ。
頭の中に文字が浮かぶ。
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物資錬成
栄養素付与
体力拡張
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「おお……!」
なんかすごそうなの来た。
説明も同時に理解できる。
物資錬成
素材から物を作る能力。
栄養素付与
食べ物に栄養と味を与える能力。
体力拡張
身体能力と体力の強化。
「……なんかサバイバル特化っぽいな」
まあいい。
日本で使えばチートだろ。
「では転移させる」
「頼む」
俺は軽く手を振った。
「日本の俺の部屋でよろしく」
次の瞬間。
光が広がった。
視界が白く塗りつぶされる。
そして――
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ザァァァァァ……
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波の音。
潮の匂い。
暑い。
まぶしい。
ゆっくり目を開ける。
青空。
白い雲。
体を起こす。
海。
砂浜。
ヤシの木。
どこまでも広がる水平線。
沈黙。
俺は言った。
「……ここどこ?」
どう見ても。
どう考えても。
日本じゃない。
立ち上がる。
砂浜。
森。
崖。
海。
360度、自然だけ。
人の気配ゼロ。
理解した。
「……ここ、無人島じゃね?」
神。
おい神。
俺、スキル選んだだけだぞ。
なんで無人島。
いや、落ち着け。
深呼吸。
「すぅー……はぁー……」
そのとき。
ぐぅ。
腹が鳴った。
「……腹減った」
そういえば魔王戦のあと何も食ってない。
周囲を見ると、漂流物が少しあった。
木。
ロープ。
そして。
空き缶。
俺はそれを拾った。
その瞬間、思い出す。
スキル。
物資錬成。
「……試すか」
空き缶を手に持ち、集中する。
すると頭の中に、“作れる物”のイメージが浮かんだ。
俺は適当に言った。
「カレー」
次の瞬間。
光が弾ける。
そして――
俺の手の中に現れたのは。
レトルトカレー。
「おおおお!?」
普通にコンビニに売ってそうなパックだ。
「すげぇ……」
ただ、同時に理解する。
これは見た目だけ。
「なるほど」
つまり、まだ食べ物じゃない。
そこで。
「栄養素付与」
パックに触れる。
光が流れる。
次の瞬間。
スパイスの香り。
カレーの匂い。
完全に本物。
「……できた」
恐る恐る食べる。
一口。
「……うまい」
普通にカレーだ。
むしろうまい。
そのとき。
ガサッ。
森から音がした。
振り向く。
草をかき分けて現れたのは――
三人の女性。
ボロボロの服。
疲れた顔。
でも。
驚くほどの美人だった。
一人は黒髪の上品な女性。
一人はショートカットのスポーツ系美女。
そして小柄な銀髪の少女。
三人とも、俺ではなく――
カレーを見ている。
ぐぅぅぅ。
三人同時に腹が鳴った。
銀髪の少女が言った。
「……いい匂い」
ショートカットの女性が警戒する。
「それ……食べ物?」
黒髪の女性はふらついた。
「すみません……」
倒れそうだ。
俺はため息をついた。
そして。
カレーを差し出す。
「食う?」
三人は顔を見合わせる。
そして。
恐る恐る一口。
二口。
次の瞬間。
「「「おいしい!!!」」」
三人とも涙目だった。
「こんな美味しいもの……!」
「信じられない……!」
「神様……!」
……ん?
「神様?」
三人は俺を見た。
目をキラキラさせている。
「神様が助けてくれたんです!」
「空き缶から食べ物を……!」
「奇跡です……!」
俺は頭をかいた。
(いや)
(ただの空き缶なんだけどな)
もちろん。
そんなことは言わない。
俺は笑った。
「まあ……困ってるなら助けるよ」
三人の目がさらに輝く。
「神様……!」
こうして俺の
無人島生活。
そして――
三人の美少女に神様扱いされる生活が始まった。




