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二度目の異世界は勇者召喚でファンタジーでした  作者: 忘八


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8/12

セットアップした後は1年ぶりに……

消すな 


 "醜いデカブツ"であるトロルを3本のAT4CSで容易く黒焦げの肉塊に変え、疲労の色一切無いまに2階層目をクリアした後。

 龍兵は順調にその後の階層も踏破して行った。

 3階層目から人の姿ではないモンスター……大きなヒグマの様なのを初めとした動物的なのから、虫を巨大化させた様なモンスター等が居た。

 そんな立ち塞がるモンスター達を全て殺し尽くした。

 その中には偶々、不運にも探索をしていた無関係な冒険者達も居た。

 しかし、龍兵は遭遇した冒険者達を()()()()()()。躊躇いも後悔も無かった。

 勿論、トロルの様な各階層の最深部を守護する大物達とも戦った。

 否、戦ったと言うよりは一方的な殺戮を成功させて来た。そう言った方が正しいだろう。

 兎に角だ。

 龍兵は初めて戦う存在とも言えるモンスター達と無関係な冒険者達を尽く殺しながら迷宮(ダンジョン)の各階層を踏破し、依頼人の彼が指定した場所である15階層目の最深部へと辿り着いて居た。

 そんな龍兵は最深部の安全を確認してからフレアを焚いて離れた所に放って光源にすると、背負っているバックパックを降ろした。

 地面に座り、FASTヘルメットとプレートキャリア。それにコンバットブーツを脱ぎ、戦闘服の上衣の前を開けていく。

 そうしてリラックス出来る体勢になると、早速と言わんばかりに煙草を咥えて火を点した。


 「すぅぅ……ふぅぅ……」


 龍兵が最初の一口とも言える紫煙を吐き出し、煙草を燻らせながら心の中で「そろそろか?」そう呟くと、タイミング見計らった様にスマートフォンが鳴り響く。

 スマートフォンを取り、電話に出た龍兵に電話の主である依頼人の彼は驚いた様子で告げる。


 「相変わらず凄いな……私の物資を受領してからたった2時間で指定した場所へ到達するとは……流石と言うべきかな?」


 その言葉に龍兵は心の底からつまらない様子で返した。


 「全然凄くねぇ。寧ろ、遅いくらいだ」


 龍兵は本心から言うと、更に続けて言う。


 「銃を初めとした各種装具が完璧に揃ってる状態でダンジョンアタックしてんだ。ピクニックと変わらねぇよ……つーか、寧ろ失敗する方が難しいし、したら恥ずかし過ぎて死ねる」


 今放った、この世界の冒険者達等に喧嘩を売ってるような言葉も龍兵の本心であった。

 そんなつまらない様子の龍兵に対し、依頼人の彼は大いに呆れてしまう。


 「君は相変わらずストイックだな。まぁ、君らしいとも言えるが……」


 「そんな事より、指定した場所に着いた俺はどうすれば良いんだ?」 


 自分に呆れる依頼人の彼に龍兵が問えば、この後にすべき事が告げられる。


 「先ずは休め。それから、君の得意分野の1つをして貰う」


 依頼人の彼から告げられた内容に龍兵は首を傾げる。


 「得意分野?俺に得意分野なんて無いぞ?」


 「よく言うよ。君、爆破も得意だろう?フレンセルノールで君がした敵の化学兵器工場を爆破したアレは実に芸術的だった」


 軍人時代に行った非合法な秘密作戦(ブラックオプス)の1つである化学兵器を造っていた敵国の工場を爆破した件を挙げられると、龍兵は自分がこの後する作業を理解すると共に返した。


 「アレはキチンと真面目に学んで訓練してれば誰でも出来る作業だぞ」


 「過ぎた謙遜は嫌味にしか聞こえんよ」


 「嫌味じゃねぇんだけどな……」


 依頼人の彼に諌められた龍兵にすれば、真面目に座学を受けて理論を学んで、実地訓練を真面目に熟していけば誰でも出来る技術の1つでしかなかった。

 そんな龍兵に依頼人の彼は益々呆れながらも続きを告げる。


 「まぁ、良い……今、君が居る部屋には更に続く階層への出入口が隠されている。君は君の持つ技術を用いて、其処を暴いてくれれば良い」


 「了解。因みにだけどよ、爆破に必要な器材も召喚出来るのか?」


 この後にする事を承知した龍兵が気になった様子で尋ねれば、依頼人の彼はさも当然の様に肯定した。


 「可能だよ」


 「電動ドリルやコンクリートマイクとかも?」


 「当然だ。インプロージョンでの爆破には不可欠だろう?」


 そう告げられれば、龍兵は「それなら簡単だ」と、呑気に返した。

 そんな龍兵に依頼人の彼は言う。


 「この後に出て来る敵は今までと違って頑丈だし、数も多い。私なら徹甲弾をしこたま用意した上で機関銃か対物ライフルを使いたくなるくらいにね」


 老婆心の籠もったアドバイスに龍兵は尋ねる。


 「口径のデカい徹甲弾じゃなきゃ殺れない生物って何だよ?」


 「なーに……コレから遭遇するだろう敵が防弾処理も成された軍用義体や連邦の"兵隊アリ"の様に頑丈だという事だけの事さ」


 軍用義体と"兵隊アリ"。

 その2つの単語が依頼人の彼から出てくれば、龍兵はゲンナリとしながらも素直に従う事を選んだ。


 「マジかよ……素直にアドバイスに従うしかねぇじゃねぇか」


 「賢明な判断だ。では、次に連絡するのは君が役目を果たした後だ。健闘を祈る」


 そう告げると共に依頼人の彼が電話を切れば、龍兵は話してる間に先に積もった煙草の灰を落とすと、煙草を燻らせながら少しだけ自信無さそうに独り言ちる。


 「すぅぅ……ふぅぅ……簡単とは言ったものの、上手く行くかな?」


 1年の平和と平穏に満ちた生活の間、ランニングと筋トレは休むこと無く毎日続けて居た。

 だが、戦闘訓練を初めとした戦闘技術に必要なモノは一切してなかった。平和なカタギの生活に必要が無いんだから当然だろう。

 それ故に龍兵の腕は大いに鈍ってしまった。

 だからだろう。

 龍兵は1年ぶりに行う爆破作業に自信が持てずに居た。


 「失敗したら崩落して死ぬとか笑えねぇしなぁ……まぁ、其処は休憩してから考えれば良いか」


 沸き立つネガティブな感情を振り払う様にして呑気に漏らすと、龍兵は静かに煙草を燻らせていく。

 5分後。

 煙草を吸い終えた龍兵は用の済んだ吸い差しを投げ棄てると、早めの昼食を取る事にした。

 バックパックを開け、中から自衛隊の戦闘糧食の詰まった袋と一緒にあったヒートパックのセットを取り出すと、表面に記された内容に目を通した。


 「筑前煮と白米。それに五目飯か……」


 記されたメニューを口に出した龍兵は封を破り、中身を出していく。

 程なくして出し終えると、龍兵は出したばかりの内容物を見廻し、思った事をそのまま口にしてしまう。


 「何か、コンビニとかスーパーで買えそうな中身だな……」


 そんなボヤきを漏らすと、パック飯等に記された通りに加熱剤と共に筑前煮と2つのパック飯をヒートパックの袋に入れる。それからバックパックの脇にある2リットルの水筒を取り、決められた量の水を注ぎ入れてヒートパックの袋を閉じた。

 暫くすると、加熱剤と水が反応して加熱が始まったのだろう。

 小さな蒸気穴から白い湯気が少しばかり吹き出し始めた。

 それから段々と加熱が進み、蒸気穴から白い蒸気が勢い良く噴き出していく。

 蒸気穴から白い蒸気が噴き出さなくなると、龍兵は熱を帯びたヒートパックの封を開けて中身を取り出した。


 「おお、程良い感じに温まってますな……」


 誰に言うわけでもなく、そう呟いた龍兵は戦闘糧食に備え付けられていたスポークを手に取ると、温められたばかりのパック飯の封をスポークの柄で破いていく。

 白米と五目飯の入ったパックの封を破いて開け、筑前煮の封を破いた龍兵は早速食べ始めた。

 筑前煮をオカズに白米を頬張り、飲み込んで口の中を空にした龍兵は食べる手を止めると、感動した様子で言葉を漏らしてしまう。


 「2週間ぶりの米とオカズ美味ぇ……」


 レトルトながらも2週間ぶりの日本食に龍兵は心の底から感動した様子であった。

 それから五目飯もがっつく様に頬張って平らげると、残った白米と筑前煮をがっつく様にして平らげた。

 そうして食べ終えれば、龍兵は満足した様子で2本目の煙草を咥え、火を点す。


 「すぅぅ……ふぅぅ……食後の一服は格別だわ」


 不健康極まりない言葉を紫煙混じりに漏らすと、龍兵は煙草燻らせながらフレア(発炎筒)で照らされる室内を見廻して始めた。

 一頻り見廻すと、龍兵は思った事をそのまま口にする。


 「壁の色に違和感は無いな……まぁ、知られたくない"どっかの誰かさん"にすれば、バレない様にするのは当然か……」


 依頼人の彼が言うならば、この部屋の中に更に下の階層へ繋がる通路があるのだろう。

 だが、ソレを誰にも知られたくない"どっかの誰かさん"が念入りに隠している以上は頑張って見つけ出すしかない。

 そう考えた龍兵は呑気に煙草を燻らせながら更に考えていく。


 「すぅぅ……ふぅぅ……」


 煙草を燻らせ、紫煙を立ち昇らせながら龍兵はふと思った。


 「すぅぅ……ふぅぅ……ん?通路を隠した野郎はどうやって、その階層と行き来してるんだ?」


 そんな疑問を覚えるが、直ぐにその疑問を投げ棄てた。


 「隠した奴が行き来してるとは限らねぇな……見た感じ、放置されてから長そうだし……そうなると、ソイツは隠した通路をバレたくないと思った方が良いな」


 根拠も確証も無い仮説でしかない。

 だが、その仮説は隠した者の思惑を見事に()()()()()()()

 そんな事を知らぬ龍兵は呑気に煙草を燻らせていく。

 きっかり5分後。

 煙草を吸い終えた龍兵は用済みの吸い差しを投げ捨てると、コンバットブーツを履いてから立ち上がり、改めて部屋の周囲。否、壁を見渡していく。

 改めて見廻しても、壁に違和感を感じる事は無かった。


 「地道に捜すしか無いわけね」


 面倒臭そうにそう漏らした龍兵は「捜す前に支度しておくか……」そう独り言ちると、隠し通路捜索の前にさらなる階層へのアタックの支度を始めた。

 手始めにどうするか?龍兵はソレを考えていく。


 アイツ(依頼人の彼)の言う通り、防弾処理済な軍用義体や連邦の"兵隊アリ"じみた連中が相手ってなると、普通の小銃弾じゃ徹甲弾であっても弾の無駄にしかならねぇ……

 そうなると、対物ライフルしか選択肢が無い。


 依頼人の彼から与えられたアドバイスを踏まえた上で思考を巡らせた龍兵は、メインアームを対物ライフルに変更する事を選んだ。


 地球の銃器そんなに詳しくないけど、軽くてパワーのあって取り回しの良い奴が欲しいな……

 そんな都合が良いのあるか?知らんけど。

 光学は至近距離だろうからダットサイトで良いとして、取り回し良くしたいからフォアグリップも有ると良い。

 後、二脚が備わってるなら要らない。

 だけど、代わりにレーザーユニットとフラッシュライト。それに鼓膜保護の為にサプレッサーが付いてると良い。

 弾は一番強力な徹甲弾が良い。

 無いもの強請りかもしれんけど、徹甲弾の効果とセットで焼夷弾か榴弾の効果も備わってたら文句無しだ。



 龍兵はそう思いながら対物ライフルを召喚した。

 程なくして自分の手の中に召喚された対物ライフルのズシリとした重みを感じると、龍兵はその対物ライフルを見詰める。


 「ブルパップ式か……お!俺の欲しい奴がフルセットで付いてるじゃん!」


 召喚されたブルパップ式の対物ライフル……ゲパードM6Lynxには龍兵が求めていた複数のオプションが取り付けられていた。

 そんなゲパードM6が自分の求める条件を満たしてる事に龍兵が喜んでいると、スマートフォンが短い電子音を響かせる。


 「メッセ(メッセージ)か?」


 そう漏らした龍兵はスマートフォンを手に取ると、画面を点灯させて確認していく。

 其処には画像が添付されたメッセージがあった。

 そんなメッセージを読み、添付された救出対象である幼気な少女の顔を見た龍兵は首を傾げてしまう。


 「救出対象はこんな小さな子供なのか?あの野郎の友人にしては流石に幼過ぎるだろ?オマケに救出対象の()()()()()()()()()って……どうなってんだ?コリャ」


 依頼人の彼から送られた救出対象に関する情報に目を通した龍兵は疑問を覚えてしまう。


 「まぁ、救出対象が子供なのは良いとしよう。面倒臭いけど……だけど、何だって俺達を召喚したって言う神とやらと同じ名前を持ってんだ?」


 単なる偶然。

 龍兵はソレで片付けようとは、何故か思えなかった。

 今までの経験が自分に面倒極まりない厄介事がやって来ようとしてる。

 そんな警鐘が自分の中で激しく鳴り響く程に訴えて来てもいる。

 だが、龍兵は直ぐにその疑問を投げ棄てると、スマートフォンをしまった。

 そして、同時に自分の中で激しく鳴り響き続ける警鐘をガン無視した。


 「答えに辿り着くピースが無いんだから考えるだけ時間の無駄だな……つーか、回れ右はとっくに出来ねぇし、ソレ以前に契約を正式に交わしちまった以上は成功させる以外に道も無い」


 諦観混じりにボヤいた龍兵は準備の続きをしていく。

 ゲパードM6の後部に取り付けられた大きな弾倉を抜いた龍兵は弾倉から露わとなっている尖端が薄明るい黄緑と白で塗られた弾を一瞥すると、弾倉に装填可能な弾数を確認する。

 装填可能な弾数の確認を終えると、龍兵は少しだけ残念そうな表情を浮かべてしまう。


 「5発しか入らないのか……せめて、10発装填出来て欲しかったんだけどな」


 残念そうにしながらも「まぁ、嵩張らないから良いか……」と、呑気に漏らした龍兵はゲパードM6を構えて具合を確認しながら思考を巡らせていく。


 バカデカい対物ライフルの弾倉に使える弾嚢(マガジンパウチ)なんて無いだろうな……

 代わりになる物を用意するとしよう。


 そう考えた龍兵はある物を召喚した。

 ゲパードを置いて召喚した品である空の雑嚢を手に取った龍兵は、ゲパードの大きな弾倉を試しに雑嚢へ入れてみた。

 ゲパードの弾倉が入ったのを確認すると、龍兵は雑嚢に残ったスペースを見て笑みを浮かべる。


 「コレなら3つ入りそうだな」


 雑嚢が弾嚢(マガジンパウチ)の代わりになる事に笑みを浮かべた龍兵は其処から弾倉を抜くと、雑嚢をもう1つ召喚。それから更にゲパードの弾倉を6つと、召喚したゲパードに装填されていた尖端が薄明るい黄緑と白で塗られていた弾を1発を召喚した。

 召喚した6つの弾倉を2つの雑嚢に3つずつ入れると、龍兵はズシリと重くなった2つの雑嚢を両手に持ってプレートキャリアの方へと赴いていく。

 その後。プレートキャリアの前で座り込んだ龍兵はプレートキャリアの腹部に取り付けられたPMAGの詰まった弾嚢(マガジンパウチ)を全て取り外すと、入れ替える様に2つの雑嚢を腹部に取り付けた。


 「即応弾はコレで良い。しっかし、足りなくなったら召喚すれば良いってのはマジで楽だわ……調達の為に必要な面倒な書類作らずに済むし、カネも一切飛ばないし」


 自分の与えられた能力を心の底から便利に感じると共にデタラメ過ぎる。そう感じながら龍兵は両耳に耳栓を嵌め、ゲパードの方へ戻っていく。

 ゲパードを手に取った龍兵は弾倉を叩き込むと、大きなチャージングハンドルを引いて初弾を薬室へと送り込んだ。

 そうしてゲパードに弾を装填すると、龍兵はゲパードを構えるなり引金を引いた。

 BREN-2の時よりも大きな銃声と共に壁の一部が砕け、焼け焦げた。

 そんな壁のダメージを見た龍兵は「この弾、徹甲弾に焼夷弾と榴弾の効果があるのか?地球恐いわ」と、何も知らずに放った弾……ラウフォスMk211にドン引きしながらも口元に笑み浮かべて喜ぶ。


 「コイツならゴジラみてぇなんが来ない限りは何とかなりそうだな」


 そう喜んだ龍兵は改めて壁を見詰め、ダメージとして残る弾着の位置を確認すると、ゲパードの上部に取り付けられたダットサイトを調整していく。

 調整した後に再び撃った龍兵は着弾位置を確認すると、またダットサイトを調整した。

 そんな作業を続けていく内に簡単ながらもゼロインが完了すれば、ゲパードから空になった弾倉を抜いて弾を補充する。

 程なくして弾を弾倉に詰め終えれば、大きなチャージングハンドルを引いて薬室へ先ほど召喚した1発を装填してから弾倉を戻した。

 そうしてゲパードを何時でも撃てる様にすると、耳栓を外した龍兵はコンクリートマイクを召喚した。

 ソレにスマートフォンで音楽を聞く時に使ってるお高い有線式イヤホンを繋いで電源を入れると、手近な壁に歩み寄る。

 壁際に立った龍兵はイヤホンを左耳に挿し込んでコンクリートマイクを壁に押し当てると、腰から二振りある愛刀の内の一振りとも言えるフルタング仕様のショートダガーを抜き、ショートダガーの柄で壁を軽くコンコンと叩いた。

 イヤホンを介してコンクリートマイクから聴こえて来る音が求めているモノではない事を知ると、龍兵はポツリと呟く。


 「違うな……」


 呟きを漏らした龍兵は数歩進むと、またコンコンとショートダガーの柄で叩き、耳を澄ませる。またも違えば、また移動して壁を叩いて音を確認する。

 そんな作業を何度も繰り返していく内に漸く、今までと違う音が聴こえて来た。


 「ん?」


 今までと違う音に龍兵は眉を顰めると、確認の為にもう一度叩く。

 再び、その音が聴こえて来た。

 求めていた音が聞こえた事に龍兵はニヤリと笑みを浮かべて呟く。


 「ビンゴ。此処だな……」


 今居る壁の前に求めていた隠し通路がある事をコンクリートマイクを通じて知り、笑みを浮かべた龍兵は何度もショートダガーの柄で叩いた。

 そうして壁の向こうに空間がある事を音から探り当てた龍兵は数歩下がると、壁をジッと見詰めていく。

 一頻り見つめると、龍兵は壁の材質から使用するべき爆薬を考える。


 「コンクリ……つうか、大理石の削り出しと見るべきか?そうなると、燃焼が早いやつよりは遅い奴の方が良さそうだな」


 使用すべき爆薬を決めると、今度はどの様に作業を進めるか?ソレを敢えて口に出しながら考えていく。


 「無難にドリルで穴開けて、爆薬を埋め込む方が良いな……アホみてぇな量の爆薬使いました。崩落しましたなんて最悪過ぎて笑えねぇし……」


 壁に穴を開け、其処に爆薬を突っ込んで爆破する最低限の爆薬のみで効率良く破壊する。

 そんな方法を選んだ龍兵は改めて爆破する壁を見詰めると、仕掛ける位置を決めていく。

 程なくして決まれば、龍兵は作業の為に必要な道具を召喚した。

 召喚された道具は電動ドリルと電動ドリルに取り付けるタングステンが用いられた硬度のある太く長いビット。それに防塵メガネであった。

 龍兵は電動ドリルにビットを取り付け、外れないかを確認する。

 外れない事を確認すれば、電源を入れてトリガーボタンを引き、ドリルを回転させた。


 「コレならいけそうだな」


 そう呟いた龍兵は防塵メガネと耳栓を嵌めると、電動ドリルで穴を開け始めた。

 耳障りな騒音と共に壁が電動ドリルで削られ、瞬く間に孔が開いていく。

 程なくして穴を開け終えると、龍兵は「こんなもんで良いか?」そう呟き、次の穴を開け始める。

 そうして壁の複数箇所に穴を開けた龍兵は、爆薬と爆薬を爆発させる為に必要な品の召喚をした。

 召喚された円筒状の爆薬を見ると、龍兵は爆薬に記された文字を読み上げていく。


 「TNT……確か、メタルギアソリッドの3でスネークが使ってた爆薬だったよな?」


 TNT爆薬の出たゲームを懐かしそうに思い出した龍兵はその場にしゃがむと、両手を地面に押し当てて体内の静電気を除去してから作業を開始した。

 手始めに大きなボビンの様なコードリールからコード。もとい、導爆線を引っ張り出し、専用の工具で切断していく。

 そうして数メートルの程の長さの導火線を2本と数十センチ程の導爆線を多数用意すると、龍兵は其れ等を慣れた手付きで結び合わせ始める。

 導爆線をゆっくりとしながらも、確実かつ素早く結び合わせていく龍兵の中で懐かしい気持ちが湧いて来た。


 「何か、初めて爆破課程を受ける生徒みたいな気分になるな……」


 懐かしい気持ちになり、思わずこんな事を漏らした。

 だが、慣れた手付きで導爆線を巧みに結び合わせていく龍兵の姿は完全に熟練した爆破の専門家にしか見えないのは皮肉以外の何者でもない。

 そうして2本の長い導爆線それぞれに孔の数だけ切り分けた導爆線を結び合わせると、龍兵は地面に手を押し当て、再び体内の静電気を除去した。

 再度、体内の静電気を除去すると今度は長い導爆線に繋がる複数の導爆線を孔の数だけ用意したTNT爆薬に結び合わせ始めた。

 程なくしてTNT爆薬の2箇所に導爆線を結び合わせて縛着し終えると、またも体内の静電気を除去してからTNT爆薬をドリルで開けた穴の中へと突っ込んでいく。

 2箇所に導爆線を縛着したTNT爆薬全てをドリルで開けた孔の奥に突っ込み終えると、龍兵はTNT爆薬を突っ込んだ全ての孔を用意していた粘土で埋めた。

 全ての孔にTNT爆薬を突っ込み、粘土で埋め終えた龍兵は2本の長い導爆線の端へと向かう。

 2本の導爆線を前にしてしゃがむと、信管を2本と長い導火線を2本用意した。

 その後。静電気を除去した龍兵は2本の信管に導火線を繋ぎ合わせると、2本の信管を其々の導爆線に1本ずつビニールテープで固定していく。

 程なくして固定が終わると、龍兵は回路点検を始めた。

 それぞれに結び合わせた導爆線を1つずつ入念に点検し、異常等が無い事を確認していく。

 暫くすると点検が終わった。

 異常は無かった。

 点検を完了させた龍兵は壁際に赴くと、プレートキャリアを纏い、FASTヘルメットを被る。それからバックパックを背負い、ゲパードをスリングベルトで首から提げる。

 最後に2つの点火器を左手に持ち、右手には導爆線と繋がる導火線を持てば、壁に埋め込んだTNT爆薬から離れていく。

 そうして安全な距離まで離れると、敵が居ない事を確認してからその場にしゃがんだ龍兵は手に持っていた点火器と導火線を置いてから、バックパックを地面に降ろした。

 その後にバックパックの手前で伏せた龍兵は両耳に耳栓を嵌めると、2つの点火器と2本の導火線を繋ぎ合わせ、ピンを引いた。

 ピンが引かれた事で導火線に点火されると、導火線は硝煙立ち昇らせながら雷管に向かって燃えていく。

 そんな中で龍兵は両耳を手で塞ぐと、口を開けて爆発に備えた。

 爆発に備えてから暫く経つと、バックパックの向こう側から複数の爆発音が同時に響き、部屋の出入口から粉塵が勢い良く噴き出すと共に沈黙が訪れる。

 沈黙が訪れたのを確認した龍兵はバックパックを背負ってからゲパードを持つと、未だに粉塵立ち込める室内へ赴いて行く。

 部屋に入ると、視線の先にポッカリと空いた通路と地面に無数に散らばる壁だった欠片があった。

 ソレは1年ぶりに行った爆破が完璧に成功した証であった。

 そんな証に龍兵は成功の喜びを覚えると、躊躇う事無く出来上がったばかりの通路へ足を踏み入れ、任務の続きを開始するのであった。




準備と爆破だけなのに8800文字も使うのってバカ丸出しなんやろな(呆れ

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