過剰防衛
少し胸糞な展開
前話と合わせると即落ち2コマな感じかもね(笑)
翌日の朝から俺達への訓練が始まった。
早朝に起床ラッパで起こされた後に朝礼。その時に1日の予定が発表され、その後に朝食を食べて朝のランニング。
ランニングの後は筋トレや戦闘訓練をして午前中の鍛錬が終われば、昼食。
昼食の後はまた走り、再び筋トレや戦闘訓練等を夕食の時間まで続ける。
そして、夕食を食べて風呂で汗を流した後は座学をし、ソレが終われば漸く休めるって形だ。
そんな訓練の日々の夜になると、皆は疲れた身体を癒すように泥のように眠る。
俺はそんな訓練の日々で新兵時代を思い出し、懐かしい気分になれた。
あ、そうそう……勿論。と、言うよりは当然の様に勇者として召喚された俺達にどんな職業適性があるのか?
魔力量はどれぐらいあるのか?
ステータスはどれほどか?
そんなラノベやアニメで見慣れた確認も行われた。
結果から言うなら、俺には魔力が無かった。ソレこそ皆無と言える程に。
オマケに俺の職業はオペレーターと来たもんだ。
オペレーターって聞いて大概の奴はオペ子みたいなのを思い浮かべるだろう。
実際、ソレは間違ってないし、俺に喧嘩売ってブチのめされたバカ共が「オペ子かよ。電話対応してくれるのか?」ってバカにしても怒る気になれないくらいには、荒事に対して無力に思える職業の名前だ。
だが、俺の職業であるオペレーターと言うのは作戦行動を実行する者。
要するに軍人やPMCS……民間軍事会社で任務に従事する人材の事を指したモノだ。
もし、このプロパテールって神が付与したモノだって言うなら、もっとマシな職業を俺に与えろって文句を言いたい。
俺は12年も職業軍人してた上に15年も傭兵としてドンパチし続けたロクデナシ。そう言うオペレーターとしてのスキルは既に持ってるんだから当然だろう?
それなのに魔法が使えないオペレーターって昔してた職業になるのはバカげてるにも程がある。
ハッキリ言って、プロパテールって神はセンスが無い。
魔法って奴がアニメで見る様な威力なら、爆弾やミサイルを抱えた攻撃機と砲兵隊。それに戦車が無くても同等の強力な攻撃を個人でブチ込める筈だろ?
ソレが使えないのは、俺にとって大きなマイナスでしかない。
因みにだが、ゆーちゃんは勇者でステータスもレベル1の時点で全てカンスト。オマケに色んな耐性やら何やらがオールスターで揃ってた。
やっぱ、主人公してる奴は違うな……
あ、ヤクちゃんは武士だった。
剣と槍。それに弓を扱える上に型月のライダーみたいに騎乗スキルがあるそうだ。
リアルの鎌倉武士が弓と槍と刀で武装してる上に鎧兜のフルアーマーで馬に乗って暴れ回ってたのを考えれば、残当ってくらい当然なんだろう。
だが、流石にリアルパイセンが武士に対して色々と盛り過ぎだろってくらいデタラメ過ぎるって言いたくなっても俺は悪くない。
話が逸れた。
俺のステータスはレベル1の段階で魔法を除けば平均70と地味に高かった。
スキルに関しては俺が軍人してた頃に得たスキル……沢山あるから割愛するが、取り敢えず、狙撃と爆破。
後、コレは一応は内緒にしているが、小火器と重火器。それに爆薬等を弾薬込みで召喚出来るらしい。
らしいってのは、未だ確認してないからだ。
話を訓練に戻そう。
魔法が使えない俺は戦闘訓練では剣や槍。それに弓の扱いと馬の乗り方を学んでいる。
勿論、ランニングや筋トレも真面目にしているし、対魔法戦の座学も真面目に受けている。
魔法なんて代物。1度目の異世界では日本に居た時の様に空想の産物でしかなかったんだから真面目に学ぶのは当たり前だ。
バカにして死んだら笑えない。だからこそ、尚更真面目に学ぶ。
そんな俺の真面目な様子を喜ばしい事に訓練を担当している騎士団のヴェテランであろう副長から好ましく思われてる。
で、そんな訓練の日々があっという間に1週間が過ぎ、更に3日が過ぎた。
漸く訓練にも慣れ、皆にも余裕が出来た頃。
俺のオペレーターって職業をバカにした、召喚される1ヶ月前に俺にブチのめされた3人のバカ共が喧嘩を売って来た。
「よう、蒼木。お前、魔法が使えないんだろ?」
ヘラヘラと嘲る様な笑みを浮かべる軽薄そうな青年……伊吹 慎也は龍兵にそう語り掛ければ、龍兵は呑気に肯定する。
「そうなんだ。神様って不公平だよな」
「だったら、俺がお前の戦う練習の相手になってやるよ」
伊吹 慎也がそう告げれば、彼と共に居た2人の軽薄そうな青年もヘラヘラと不快な笑みと共に告げる。
「しんちゃんが蒼木の練習相手になんなら、俺もしてやるよ」
「なら、俺も……俺達って優しいよな」
そんな3人に龍兵は満面の笑顔で御願いした。
「あぁ、是非とも御願いするよ。例え、1ヶ月前に俺に喧嘩売って半殺しにされた仕返しだとしてもね」
龍兵にアッサリと目論見を見破られれば、3人は一瞬だけ不愉快そうにした。
しかし、直ぐに表情を取り繕って余裕のあるモノにすれば、龍兵を囲む様にしてその場から移動していく。
そんな様子にクラスメイト達は我関せず。触らぬ神に祟りなし。
そう言わんばかりに見て見ぬふりをした。
だが、優は違った。彼は即座に血相を変えるや、慌てて訓練助教をする騎士団の副長の元へ駆け出した。
先に言っておくが、本来ならば魔法が使えぬ者が魔法を使える者に勝てる事は"ほぼ"あり得ない。
地球で言うなら、銃を持った人間と素手の人間くらいに戦力差が開いている。
それ程までに魔法と言う力はソレだけの大きな力があるのだ。
だが、ソレは素人同士の話。
銃を持っていないだけの歴戦の猛者であるプロの人殺しと言う怪物と、銃を持っただけの戦闘と殺人の訓練と経験が一切無い素人の子供と言う条件ではアベコベに逆転する事が多々ある
閑話休題
数分後。
練兵所の外れ。3人によって人気の無い場所へ連れ込まれると、同時。
龍兵は左右に立つ伊吹 慎也の取巻きの2人の喉へ躊躇いなく手刀を打ち込んだ。
「ぐへッ゙!?」
「ガハッ!?」
目にも留まらぬ速さで瞬時に喉へ手刀を打ち込まれると、2人は呻き声と共に地面に崩れ落ちる。
そんな2人に気付いた伊吹 慎也が振り返って驚き、固まってしまった。それと同時、既に伊吹 慎也の目と鼻の先に立っていた龍兵は「遅い」その一言と共に彼の鼻へ掌底を打ち込んだ。
「グッ!?」
己の掌底によって後ろへたたらを踏む様に蹌踉めいた伊吹 慎也が折れた鼻から血をダラダラ流していると、龍兵は心の底から不思議そうにしながら言う。
「やっぱそうだ。喧嘩弱い奴ほど詰められると固まって動かなくなる……ビビってるからかな?」
その言葉に嘲りを覚えた伊吹 慎也は顔を真っ赤にしながら龍兵に対し、声を挙げる。
「て、テメェ……」
伊吹 慎也の怒りに満ちた声と共に龍兵の手刀で倒された2人がゆっくりと立ち上がる。
「ケホッケホッ……」
「ハァハァ、ハァハァ」
立ち上がった2人が怒りを露わに手を翳し、魔法を発動させようとする。
だが、龍兵は顔色1つ変える事無く伊吹 慎也の目と鼻の先まで迫ると同時。彼の喉に手刀を打ち込んだ。
「ゴホッ!?」
喉に手刀を打ち込んだ龍兵は目にも留まらぬ速さで瞬時にスルリと再び蹌踉めいた伊吹 慎也の背後に回り込むと、彼の取巻きの2人が放った魔法弾が伊吹 慎也の直ぐ近くまで迫って来ていた。
龍兵が躊躇い無く伊吹 慎也の背を体当たりで突き飛ばせば、2発の魔法弾は伊吹 慎也に直撃。
2人の取巻きが崩れ落ちる伊吹 慎也の姿を目の当たりにすれば、取り返しの付かない事をした現実に気付くと共に顔をみるみると青褪めさせてしまう。
そんな2人の様子に龍兵は呆れの籠もった溜息を漏らすと、ウンザリとした様子でボヤきを漏らした。
「ハァァ……お前等バカだろ?あぁ、バカだったわ……」
心の底から呆れと嘲りに満ちたボヤき漏らすと、龍兵は目の前の現実に心を押し潰されている2人に対して嘲りを更にたっぷり込めて言う。
「味方が射線に居る時に攻撃したら、こうして味方を誤射しちまうって学べたな……良かったじゃん。実戦の場で味方を殺さずに済んでさ?」
2人は龍兵に何も言い返せなかった。
そんな2人を他所に龍兵は確認作業を始めた。
確認作業の結果が右手に握られると、龍兵はソレを直ぐ近くに寄せてジッと見詰めていく。
「拳銃だけど……何だコレ?FN HERSTAL?Five-Seven?」
自分が召喚したかった拳銃とは異なる拳銃……FN HERSTAL社のFive-Sevenピストル。ソレの最新モデルであるMk3が現れた事に龍兵は首を傾げるも、直ぐに弾倉を抜いて弾が装填されている事を確認していく。
「ん……弾は入ってる」
弾倉に尖端が黒く塗られた5.7ミリ弾が20発。装填されている事を慣れた様子で確認した龍兵は弾倉を戻すと、Five-Sevenピストルのスライドを引いて薬室に弾を込めていく。
そうして殺せる様にした龍兵はゆっくりと銃口を持ち上げると、2人に向けて語り掛けた。
「俺的に魔法ってさ、この銃と変わらないと思うんだ。つー事はだ、お前等は俺に銃口を向けた事に他ならない訳だよな?」
「え?え?」
「な!?」
2人は龍兵に銃口を向けられた事で恐怖に顔を引き攣らせ、間抜けな声を漏らしてしまう。
だが、龍兵は気にする事無く2人に向けて引金を1度ずつ引いた。
大きくも乾いた銃声と共に派手な銃火が5.7ミリの小さな銃口から2度迸れば、2人の右膝が瞬時に撃ち抜かれていく。
「「ぎゃあああァァァ!!?」」
突然の熱みを帯びた激痛と共に地面に転がった2人が大声で喚き立てながら膝から血をダラダラと流していくと、龍兵は銃口から硝煙立ち昇らせるFive-Sevenピストルを気に入った様子で見詰めて「ん……思ったよりも良いな。銃声がクソうるせぇけど」そう独りごちて倒れたまま動かずにいる伊吹の右膝を撃った。
「ぎゃあああァァァァァ!!?」
3発目の銃声と悲鳴を響かせた後。龍兵は再び2人へ銃口を向けると、満面の笑みと共に嗤って告げる。
「俺としては銃口を向けるってのは今からソイツを殺すって意味以外に意味を成さないと思うんだ。真っ当な奴ならサバゲー以外で人に銃口向けたら駄目だってのを理解してる筈だからよ?で、コレはサバゲーじゃない。そうなると……俺はお前等を今この場で殺しても問題無いよな?まさに正当防衛って奴だ」
向けられた銃口に2人は無様に命乞いをして来た。
そんな2人へ嗤ったままの龍兵は引金から指を外しながら大きな声で「バン!!」と、叫べば2人はパタッと動かなくなる。
「あらま、気絶しちゃったのか……しかも、硝煙に混じってアンモニアの臭いがする。まぁ、初めて自分が死ぬって感じたら誰でもこーなるか……」
独り納得した様子で龍兵は銃口を下ろすと、弾倉を抜いてスライドを引いた。
そうして完全にFive-Sevenピストルから弾を抜いて安全な状態にすれば、後始末も兼ねて3人の哀れな獲物達が死なない様に止血処置をしていく。
3人の右膝上を常に持ち歩いてるパラコードでギチギチにキツく緊縛して関節圧迫による止血を施し終えると、部下を引き連れた年輩の騎士……もとい、副長と優が慌てて駆けつけて来た。
そんな2人に龍兵は3人を逆に"イジメた"張本人として告げる。
「右膝に大きな損傷。損傷部である膝の上をキツく縛って止血は試みてますが、急いで処置しないと最悪出血多量で死にます。後、3人の内の1人は2人から魔法弾を受けてるので一番酷い状態だと思われます」
龍兵から告げられると、副長は即座に部下達へ叫ぶ様に指示を飛ばした。
「急いで3人を医務室へ運べ!!それと治癒師も手配しろ!!急げ!!一刻の猶予もないぞ!!」
副長の指示に兵士達はテキパキと用意した担架に3人を載せ、急いで医務室へと搬送していく。
そんな様子を見た龍兵が心の中で「やっぱ王宮務めの兵士って精鋭揃いなんだなぁ……」そう呑気に兵士達の練度を分析していると、副長は困った様子で龍兵に問う。
「何があったのか?詳しく教えて貰えるかな?」
それなりに丁寧な副長の問いかけに対し、龍兵はいけしゃあしゃあと宣った。
「一言で言うなら、喧嘩を売られたので買って返り討ちにしました。あ、膝の傷と喉への打撲痕。それに折れた鼻は私がやりましたが、それ以外は味方を誤射した2人のせいです」
自分は悪くない。そう言わんばかりに宣えば、副長は益々頭を痛めてしまう。
頭を痛めながらも副長は真剣な眼差しと共に龍兵に尋ねる様に言う。
「君ならもっと上手くやってたんじゃないか?」
訓練を担当し、責任を負う副長は今の地位に居るずっと前。龍兵と歳が変わらぬ頃に実家を出奔し、戦場でフリーランスの傭兵として活動多数の戦場を渡り歩いて来た事があった。
それ故に副長は龍兵の立ち振る舞いや雰囲気から、自分と同じ様に戦いを識る同業者と肌と匂いで感じ取っていた。
そんな副長の問いに龍兵はさも当然の様に答えた。
「上手くやりましたよ。キチンと3人とも生きてますでしょう?」
龍兵が本当に殺す気ならば、初撃の手刀の段階で2人の喉を完全に潰して窒息死させ、伊吹 慎也はタマを蹴り潰した後。喉も完全に潰してFive-Sevenピストルを抜くまでもなく、苦しめて殺していた。
だからこそ、そうしていない時点で上手く殺さずに倒したと、龍兵は本心から宣った。
龍兵が本心から言ってる事に気付いた副長は頭を大いに抱え、優は言葉を失ってしまう。
そんな2人を他所に「では、失礼します」そう言い残した龍兵は、クラスメイト達の居る練兵所へと呑気に歩みを進め始める。
龍兵が立ち去ろうとすれば、優は慌てて追い掛けた。
優が追い付いて来ると、龍兵は呑気な様子で
Five-Sevenピストルを差し出して尋ねる。
「ヤクちゃん、コレってどんな拳銃なん?Five-Sevenって名前はCoDで聴いた事あるんだけどよ、こんな見た目じゃなかったと思うんよ……」
龍兵に尋ねられた優は恐る恐る差し出されたFive-Sevenピストルを見ると、驚きを露わに声を荒らげてしまう。
「コレ、ファイブセブンの最新モデルのMk3じゃねぇか!?何で、こんなもんをお前が持ってんだよ!!?」
驚きに満ちた様子の優とは対照的に呑気な様子の龍兵は呑気に答えた。
「え?何か召喚出来た」
呑気に答える龍兵に優は困惑してしまう。
「マジかよ……」
「召喚された翌日にステータスでこの召喚を知った時はメッチャ驚いたわ。でも、俺が出したかったのはコイツじゃないんだよな……気に入ったけどさ」
龍兵から思わぬ答えが飛び出ると、優は困惑しながらも真剣に尋ねた。
「どう言う事だ?」
優に問われると、龍兵は説明する為に前提の確認をする。
「普通なら。否、誰でもだな……まぁ、人って自分が使い慣れた道具を必ず選ぶもんだろ?」
龍兵の確認とも言える問いに優は理解し、納得する。
「そりゃそうだ。すると何か?お前は自分の使い慣れた拳銃を出そうとしたのに、何故かFN社の最新モデルの拳銃が出てきたって言いたいのか?」
「そう言う事。理解が早くて助かる」
優の問いに龍兵は呑気な様子のまま肯定すると、優は恐る恐る尋ねた。
「因みにだけどよ……お前ってどんな武器扱えるんだ?」
そう問われると、龍兵は指折り数えながら答えていく。
「扱えるのは対物ライフル含めた自動小銃とボルトアクションライフルに拳銃、ショットガンにサブマシンガン。軽機関銃に携行式の対戦車ロケットと対空ミサイル。それに設置式のデカい無反動砲に対戦車ミサイルに……あ、対空機関砲も扱えるぞ」
返って来た答えとも言える扱える品々の内容に優がドン引きすると、龍兵な楽しい思い出を思い出した様子で嗤いながら言う。
「そういや、対空機関砲で昔のシリアに居たダーイシュみてぇな連中を薙ぎ払ったり、カミカゼトラックをブチ殺した事があったけど……最高に楽しかったな」
龍兵の楽しかった思い出を聞くと、優は益々ドン引きしてしまう。
強くドン引きする優は龍兵に尋ねた。
「お前、今どんな顔してるか?解るか?」
「何処に出しても恥ずかしくないイケメンだろ?」
おちゃらけて言う龍兵に優は悍ましい怪物を見る様な目を向けながら答える。
「お前、今滅茶苦茶嗤ってるぞ。人を殺した時の事を何でそんな愉しそうに話せるんだよ?」
そう告げられると、龍兵はさも当然の様に答えた。
「実際、愉しかったからな」
「なら、伊吹達を逆にイジメた時も愉しかったのか?」
優の問いに龍兵はつまらなさそうに返す。
「あのバカ共か?寧ろ、その逆。最高につまらなかった」
嘘偽り無く。本心から答えた龍兵に優は「ホントかよ?」と、疑ってしまう。
そんな優に龍兵は本心からの理由を語っていく。
「だって、素人丸出しのアホで雑魚過ぎるクソガキと戦ったって張り合いが無い。だから萎えたし、とてもつまらなく感じた」
「面白かったら殺してたのか?」
優がまた問えば、龍兵は真剣な表情と眼差しを向けて正直に答えた。
実に不愉快そうな様子で……
「其処まで見損なうんじゃねぇよ。幾ら俺が敵を殺すのが大好きなロクデナシでもな、殺して良い奴と殺しちゃいけない奴の分別は付く程度には未だイカれてないぞ」
「成る程。実に狂ってるな……」
容赦無い言葉を放った優に龍兵は肯定で返した。
「あぁ、俺は狂ってる。だから、向こうで軍人辞めた後に傭兵なんて戦争ある所には何処でもホイホイ行くイカれたロクデナシになったんだ」
その答えこそ、龍兵が12年も勤め上げて来た軍人を辞めた理由でもあった。
そんな龍兵に優はハッキリと告げる。
「お前を信用して良いのか?不安になった」
「何でだよ?」
「だって、戦争が大好きだってんならよ……お前は魔族とコズミック・イラな戦争したがるだろ?」
龍兵の言動から一番可能性の高い事を優が口にすれば、龍兵はまたも「見損なうな」そう返した。
「確かに俺はイカれたロクデナシだ。其処は否定しねぇし、出来ねぇよ?でもな、真っ当な思考を巡らせられるだけの人の心もちゃんと持ち合わせてるんだよ」
「うさんくせー」
疑う優に龍兵は改めて告げる。
「俺個人だけなら喜んで戦争して、敵を殺すさ……でもな、戦争したがらない子供を戦場へ送ろうってのはハッキリ言って気に入らねぇし、不愉快極まりない。だからこそ、俺は全員生きて日本に帰す事を選んだんだ」
龍兵の断固たる意志に満ちた答えに優は呆れてしまう。
「其処はせめて、皆の為って言えよ……自分の為とか言わずによ?」
そんな優に龍兵は正直に本心を答えた。
「今の俺が皆の為って言ったらソレこそ胡散臭過ぎてお前、信じねぇだろ?それに俺は皆の為に生命を賭けるなんてしたかねぇのよ……俺は俺がしたいようにして生きるって決めてるから余計にな」
龍兵の答えに優は友として改めて問う。
「信じて良いんだよな?」
優の問いに龍兵はハッキリと真剣に答えた。
「あぁ、俺は絶対に裏切らない。俺自身と名誉に賭けて俺は皆を日本に帰す事を誓う」
その答えに優は少しだけホッとした。
同時に龍兵が自分の知る親友である事にも安心した。
そんな優に龍兵は告げる。
「ヤクちゃん、ゆーちゃんには俺が数日中に動くって伝えといてくれ。後、この件は俺達だけに留めておくのも忘れずにな」
龍兵が告げれば、優は承諾した。
「解った。でも、詰められたら正直に吐くからな?拷問されたりしたくねぇから……」
承諾した上で詰められた時は正直に全て話す。そう返せば、龍兵はさも当然の様に快諾する。
「寧ろ、保身と皆の為に絶対にそうしてくれ……俺独りが悪者になれば、皆は安全になるだろうからよ?」
「すまない」
自分の事しか考えてない事に自ら自己嫌悪に陥りながら謝罪して来た優に対し、龍兵は優しい笑みと共に返した。
「気にすんな。悪役は慣れっこだし、何時もの事だから」
その時の龍兵の笑みは実に優しいモノであった。
だが、そんな古くからの腐れ縁な親友の顔を見れなくなる事を優は未だ知らない。
そして、ソレを龍兵は伝える気が毛先の1つ程も無かった。
金カムイの杉本、土方、キロランケに第7師団の愉快な皆様…この面々に銃口を向けて、引金を引こうとしたら、どーなるか?
答えは火を見るより明らかだよね?
ソレと同じないし、似た結果がこの回なのよ
実際、魔法ってな銃と変わらないと思うのよね…姿形が物体として無いだけでさ?
龍兵が優に語った内容は全て嘘偽りの無い本心
そして、ソレが軍を辞めて傭兵になった理由でもある…
要するにアールネ・エドヴァルド・ユーティライネンみたいに戦場にしか生きる場所が見出せなかったからって感じね。多分




