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二度目の異世界は勇者召喚でファンタジーでした  作者: 忘八


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11/12

置き土産は忘れずに

大体サブタイ通り


 その者は自分の作品が独りの青年によって尽く殺されて逝くのを目の当たりにすると、信じられないと言った気持ちが大いに籠もった声を荒くあげて居た。


 「何故だ!?何故なんだ!?奴のあんな攻撃で私の作品達が尽く殺されるッ゙!!?」


 自分の思惑や欲望が込められた予想を大きく裏切ると共に絶対に望まぬ展開が起これば、誰だって怒り狂うだろう。

 その者も同様であった。

 だからこそ、その者は実利と感情。その両方から、自分が召喚した劇の駒達に与えた恩恵(チート)を今この場で奪う事を選び、即座に実行した。

 しかし、ソレは()()()()()()


 「どう言う事だ!?どうなってる!!?」


 自分が青年に与えたであろう恩恵(チート)を奪い、今から絶望に顔を歪ませながら死ぬのを愉しく眺める筈であった。

 だが、青年はそんなの知ったこっちゃない。

 そう言わんばかりに次々に武器を召喚し、次々に多数の作品(モンスター)を殺しながら進み続けている。

 自分の取った行動が無意味に終わった事に対し、その者は大いに困惑すると共にまたも声を荒らげてしまう。


 「何がどうなってる!!?」


 何故、こうなったのか?その者は訳が解らなかった。

 その者は自分が書いた脚本通りに物事が進むと思っていた。

 しかし、物語はその者の手から大きく離れると共に自分が絶対に望まぬ展開へと発展。その者にとって、一番望まぬ結果を現在進行系で見せ付けている。

 最下層の最深部手前。最高傑作であるドラゴンが守護する部屋の壁が粉々に砕け、其処に出来た大きな穴が出来たと同時。

 其処から遠く離れた所で青年が、見た事の無い大きな武器で自分の最高傑作にして最強のドラゴンを轟音と共に一方的に攻撃し続ける。

 そんな形で……

 青年は程なくして最深部に辿り着き、己が果てしなく遠い過去に犯した大罪の象徴と対面するのは時間の問題と言えた。

 それ故に、その者は強行手段を取る事を選んだ。


 「アティルーナ!!アティルーナは居らぬか!!」


 その者の怒声が響けば、全身を甲冑に包み、背には8枚の大きな白い羽根を畳んだ若い女が慌てた様子でやって来る。


 「お呼びで御座いますか!!」


 その場に跪くアティルーナと呼ばれた甲冑姿の女にその者は命じる。


 「今から部隊を率いてある場所へ迎い、私の脚本を台無しにした者に裁きを下せ!!奴は大罪を犯せしヤルダバオトを解放戦としている!!」


 自分の主にして最上神たるその者……()()()()()()から命じられれば、戦を司るアイコーン(低級の神)たるアティルーナは直ぐに承知した。


 「主の御心のままに」


 そう返したアティーナは即座に立ち上がると、命令を遂行する為にプロパテールの居室を急いで後にした。

 独り残ったプロパテールは視線の先。

 この場には居らぬ勝利に満ちたムカつく笑みを浮かべる青年に怒り狂って血走った目を向けるや、怒りの籠もった言葉を放つ。


 「こうなれば、全てを無に帰してやる。私の脚本を滅茶苦茶にした貴様も、私の愛を否定したお前も殺してやる」


 そんなプロパテールの怒りに満ちた言葉を露知らず。知ってても気にせず、寧ろ、満面の笑みを浮かべる脚本を滅茶苦茶にするタイプの青年。

 もとい、蒼木 龍兵はもうもうと硝煙が立ち込める中で用済みとなったばかりの大型の兵器の傍らで笑みを浮かべていた。


 「流石は対戦車砲だな……ドラゴンが相手でも威力を発揮してくれる」


 自分の傍らにある硝煙をもうもうと立ち昇らせる7メートルもの砲身を持つ大型の大砲はロシアの対戦車砲である2A45 Sprut-A。

 ソレこそ、龍兵がドラゴンを一方的に殺害せしめるのに用いた武器。否、兵器であった。

 全体を分厚く頑丈な装甲で鎧われた戦車を殺す為。戦車砲を流用して造られた125ミリ対戦車砲を召喚した龍兵は、攻撃開始前にドラゴンの居る部屋の壁を慣れた様子で爆破。

 そうして出来た出入口とも言える空間を作ると共に射線を確保した後。最深部への扉を守護するドラゴンの姿が露わとなれば、龍兵は倒れるまでしつこく対戦車榴弾(HEAT) 対戦車徹甲弾(APFSDS)をブチ込んだ。

 そして、10分も掛からずにドラゴンは焼け焦げた肉塊へと変貌させれば、龍兵はさも当然の様に勝利の笑みを浮かべた。

 実に身も蓋も無ければ、誉れも何も無い酷過い塩試合と言えるだろう。

 そんな塩試合をやった張本人である龍兵は用済みとなった2A45 Sprut-Aの左右角を調整するハンドルをグルグル回し、長く大きな砲身を邪魔にならぬ様に退かすと、その場に残置。それからゲパードを手に奥へ歩みを進めていく。

 歩みを進めてドラゴンだった焼け焦げた肉塊が鎮座する部屋へ入ると、龍兵は自分が殺したドラゴンを見詰め、思った事をそのまま口にする。


 「徹甲弾(APFSDS)をナマモノにブチ込むと、串刺し状態になるんだな」


 2A45 Sprut-Aから放った対戦車徹甲弾(APFSDS)が焼け焦げた肉塊に何本も突き刺さり、裁縫に使う針山の様になってるのを目の当たりにした龍兵は「やっぱ、対戦車用の火器っておっかねぇわ」そう独りごちると、部屋を見廻してから更に言葉を続けた。


 「ドラゴンみたいな空飛ぶ戦車は野戦で制空権を支配してこそ、その強みを大きく発揮するのにこんな狭っ苦しい部屋で使ったら宝の持ち腐れだな……」


 誰に向けて言う訳でもなくそう漏らした龍兵は興味が失せたかの様に正面にある金属製の大きな扉を見据えると、再び歩みを進めて行く。

 歩みを進めて大きな扉の前に立った龍兵は取手に手を掛けると、開け始めた。

 大きな扉を引っ張って開けた龍兵はフレア(発炎筒)を手にすると、シュッと点火してから投げ込んだ。

 フレア(発炎筒)の炎が室内を照らし出せば、龍兵は中へ足を踏み入れて周囲を見廻して警戒。程なくして敵が居ない事を確認すれば、部屋の中央に置かれた大きな石棺に視線を向ける。


 「あの中に救出対象が居るのか?」


 他に見当たらない以上。そう考えるのが妥当と判断した龍兵は石棺の周囲と天井を見て回り、罠が無い事を確認すると、石棺の前に立った。


 石棺にはデカい鍵が掛かってる。

 爆薬が救出対象に危険を及ぼす可能性が高い。

 そうなると……


 石棺を固く封じるデカい錠前を見詰めて其処まで考えた龍兵は「召喚出来るかな?」そう漏らしながら、ある物を召喚する。

 程なくして現れた召喚物に龍兵は「やれば出来るもんだな」そうボヤくと、錠前を壊す為に支度をしていく

 召喚されたガスボンベに細く長い金属パイプを取り付けてスパナで固定し、ネジの切られたパイプの先にピストル型のノズルを取り付けて固定。そうして支度が済めば、ガスボンベのバルブを開放してからノズルの先を錠前に向け、ガスを吹き付けた。

 勢い良く白いガスが噴き出せば、錠前は見る見る内に冷やされていく。

 その内にキンキンに冷やされると共に完全に凍結すれば、龍兵はガスを吹き付けるのを辞めてゲパードの後端を叩き付けた。

 すると、錠前は粉々に砕け散った。

 そんな様子に龍兵は「流石、液体窒素」そう宣うと、共に用意していたバールで石棺の蓋をこじ開けていく。

 程なくして石棺の蓋がドスンと地面に落ち、中身が露わとなる。

 露わとなった中身に龍兵は呆れてしまった。


 「まるでエジプトのミイラだな……」


 中にはエジプトのピラミッド特集で見る様な人型のミイラがあった。

 そんなミイラの中に救出対象が居る。そう判断した龍兵はショートダガーを腰から抜くと、無数の呪符のある包帯を切り裂いていく。

 包帯を切り裂き終えると、龍兵はまたも呆れてしまう。


 「コレ、全頭マスクか?それに両足に枷が嵌められてるわ、両腕は……身体の下に後ろ手にされてる……ピク(PIXIV)のコアなイラストでしか見た事ねぇぞ、こんな拘束……」


 そう呆れる龍兵は「よく見たらマスクと足の枷が石棺内で繋がってやがる」と、面倒に感じながらも液体窒素のボンベを手に取り、枷とマスクに繋がる鎖を凍らせていく。

 暫くして鎖を砕き終えれば、龍兵は漸く石棺から全身を厳重に拘束された救出対象と思わしき人型を引っ張り出す事が出来た。

 そんな救出対象と思わしき人型を地面へ慎重に置き、この拘束をどう解くか?考えていた矢先。

 スマートフォンが鳴り響いた。


 「こう言う時の電話。大概はトラブルが相場なんだよな……」


 嫌な予感を感じながら電話に出ると、依頼人の彼は告げる。


 「君の予想通り。トラブルだ。1個小隊規模が君と救出対象を始末しようと急行している」


 そう告げられれば、龍兵は直ぐに確認する。


 「到着予定時間は?」


 「連中はきっかり5分後。私は……」


 其処で電話が切れると、脇から眩い光がした。

 それはクラスメイト達を日本へ帰還させる時にもあった光であった。

 そんな光と共に何処かの部屋が見えれば、部屋の向こうから龍兵にとって見慣れた顔馴染みがやって来る。


 「今だ。やぁ、ロン……1年ぶりかな?」


 人工的なブロンドヘアをツーブロックにしたピンクメタリックのジャケットとズボンを纏ったアジア系の顔立ちをした中年の男が龍兵に問えば、龍兵は心の中で「相変わらず奇抜な格好してんのにメッチャ似合ってんな……」そうボヤきながら返した。


 「1年ぶりだな、ミン……」


 「さて、先ずは面倒なのが来る前に逃げるべきだと思うんだが?」


 ミンと読んだピンクメタリックのスーツ姿をした男から言われると、龍兵は悪い笑みを浮かべて石棺の前に立った。

 そんな龍兵の笑みから察したミンは「君は相変わらず性格が悪いな」そう呆れながらも、その場で待ち始める。

 ミンを持たせる龍兵は石棺の中にある物を召喚した。

 石棺内にギリギリ収まった程に大きな金属の塊が石棺内に収まると、龍兵は導火線と導爆線のコードリールを1つずつ召喚。

 それから導火線を2メートル半。導爆線は数十センチほど切り出した龍兵は導爆線の端が玉になる様にして結びあげると、雷管をセットした導火線とビニールテープで反対の端を縛着する。

 その後。玉にした導爆線の端を数百グラムのC4爆薬に詰め込んだ龍兵はソレを石棺内に収まる大きな金属製の召喚物……米軍のMk83航空爆弾の先端にある窪みに突っ込み、斜めに切って断面を大きくした導火線に笑顔で点火し、石棺の蓋を閉じた。

 そんな龍兵の作業を眺めていたミンは呆れながらも愉快そうな笑みを浮かべる。


 「相変わらず君は性格が悪いな」


 「ほら、御足労願ったのに無駄足踏ませるのって申し訳無いだろ?だったら、土産の1つくらい用意しとかんとね♡」


 笑顔と共に返した龍兵は未だ拘束されたまま転がる救出対象を担ぎ上げると、ミンと共にこの場から跡形も無く立ち去って行く。

 それから約5分後。

 アティルーナが率いる1個小隊が石棺のある最深部へ展開した。

 その直後。龍兵の置き土産である1000ポンドの航空爆弾を用いたIEDがキチンと起爆し、金属製の弾体内部に充填されていた202キロの高性能爆薬が爆発。

 そんな強大過ぎる爆発と共にアティルーナ達は瞬く間に全員消し飛んだ。

 そればかりか、その衝撃で天井が完全に崩れ落ち、部屋も完全に埋まったのであった。




IEDにした1000ポンド爆弾を置き土産にしてくのホントヒデ

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