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教導者、教育終了後捨てられる。  作者: みかんねこ
1章 どんなに暗くても、星は輝く
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第9話 教導者、出会う。

魔王スキル「|遍在する調和《どこにでもいて、どこにもいない》」


「?」


 首をひねる。


「?」


 もう一回ひねる。



 はい!全く!何も!わかりません!


 そもそも、なんで勇者スキルじゃないんだよ!


 お前には勇者スキルなんてふさわしくないんだよバーカ!ってことか!?


 死ねジーク!


 なにもわかんない!お手上げ!


 町で「鑑定士アプレイザー」に鑑定してもらったらなんかわかるかもしれないけど……。


 魔王スキルって思いっきり誤解されそうなんだよなあ……。


勇者スキルを持つ人間を勇者って呼んだりするけど、そうなると俺は魔王になるのか……?


 ………迫害されたりしない?


 え、俺が逆の立場だったらどうするかって?


 そらもうアレよ。




 縛り首(死刑)よ。


 怪しすぎるだろ!常識的に考えて!


 ヤバそうなのは排除しとけってなるよね!


君子危うきに近寄らず!


危ういのは俺でした!


はぁ……。


 一応、身体の中に何かが出来そうな大きな魔力が渦巻いているんだよ。


 きっかけ一つで動き出す、大きな力。


何でもできそうな、なんにでもなりそうなそんな力。


 おそらくこの力こそが、あの時飛んできた魔力塊なんだろな。


……鉄鼠のときのジークに飛んで行った魔力塊は、あれより小さかった。


魔王の大きさによって違う……?


いや、魔王の危険度は大きさに関係がない……どういうことだ……?



しばし考え込むが、答えは出ない。



 まあ、仕方がない。


 仮説・検証・実験は得意だから追々やることにしよう。


 こういっては何だが、未知に対する好奇心がうずいている。


 さっさと帰って調べたいなぁ!


 ふと思ったんだけど、あの爆発跡見て俺が生きてるって誰が思うんだろうか。


 あのクソ村に被害出てたら俺のせいってことになってそう、いや多分なるな……。


 そういう嫌な確信がある。


 ……俺はもう死んだことにして別の地方に行こうかな?


 どうせ親しくなった奴なんかほとんどいないし……いや、モストル爺さんとメイリアさんが悲しむな……はぁ……。


 帰りたくないなぁ!



 そんな悲しいことを考えて、あたりを見回す。


 太陽もかなり西に傾いており、結構な時間気絶していたことがわかる。


 どこかで野営の準備をしたいところだ。


 そこらがすべて羽毛布団みたいなもんだし寝転んでもいいかなと思ったが、生き物の上で火を焚くのも怖いし。


振り落とされたら今度こそ死ぬ。


どっか安心して休めるところはないかねえ……?


……遠くになんか建造物っぽいのが見えるんだよなあ。


 ジズの上に建造物って……。




 正直めちゃくちゃ気になるよなあ!?


 誰か住んでるのかな!?


 信じてもらえないかもしれないが、一生の自慢話になるぞこれは!


 そういうわけで童心に還り痛い身体を引きずりながら、謎の建物がある方向に進んでいった。








 他にランドマークなかったから距離がさっぱりわからなくて、思ったより長い距離を歩かされた。


 足元ふわっふわで歩きにくいうえに、たまにクソデカいのみが飛び出してきてびっくりした。


 1mもあるのみとか立派な魔物だよ……。



 大体1時間ほどかかってその建物らしきものに到達した。


サイズ感としては町のちょっと大きめの一戸建てだ。


 疲れてはいたが建物の付近を調べてみる。


 とりあえず罠らしきものは見当たらないが……。


 様式は古代魔法文明の物であるが、どう見ても新しすぎる。


 つい昨日建てられたといわれても信じられるほどだ。


 少なくとも古代魔法文明は1000年前には滅んでるはずなのだが。


 これがマジの物なら世紀の大発見だぜ……!





 まぁ、誰も信じてくれないんだろうけどな……。


 陽も暮れてきた為、思い切って入口から入ることにした。


 《《入るとき何かを潜り抜ける感覚があった》》が、気のせいであったと思いたい。


 古代魔法文明とは言え、住んでいるのは同じ人間であり部屋の構造はそれほど変わらないようだった。


 玄関から中に入るとすぐリビングが広がっていた。

 

 本当なら気配察知スキルを使いたいところだが、今はちょっと「儀形」スキルは使いたくない。


 あれ色々できるけど、消費する魔力がオリジナルの3倍くらいなんだよ。


 多分無理に使うとまた鼻血とかでると思う。


 鼻血で済むといいなあ……。


 物音ひとつしない。


あたりを軽く見渡すが、特に変なものもない。


 人の気配も感じないし、殺風景で生活感は感じられない。

純粋に物が少ない感じだ。


 飾り気のないランプが灯っていない状態で、3つ掛かっている。


……なんかちょっと違和感を感じるな。


まあいい、探索だ。


 隣の部屋は台所……か?


 息を殺しながらゆっくりと扉を開く。



 何もいない。


 調理器具らしきものは見たことない形状のものもあるが、俺も知っている物が大半だ。


 そっと掛かっている大きなフライパンらしきものに触れる。


普通のフライパンだ。


 裏返すと魔法陣らしきものが書いてある。


 はえー、魔道具かな?


 ちょっと魔力を流してみるが、ほんのり光った後は反応なし。


 使い方が違うのかな?


 そっと戻した。


 食べ物が無いか軽く近くの棚を開けてみるが、何も入っていない。


 まあ、空間拡張鞄にある程度入っているから当面は問題はない。



 一度リビングに戻る。


 ……?さっきはともってなかったランプが1つともってるな……。



 首をひねりながら別の扉をそっと開く。


 ここは……書斎……か?


 書斎とは言うものの、壁の本棚は空だ。


 当時の書籍が棚いっぱいに残ってたら一財産だったんだけどな……。


 残念に思いながら、なにか四角い箱が乗ったテーブルに近寄る。


 なんだこれ……?


 前面に透明で硬い何かがついている箱だ。


 コンコンと叩いてみるが、中には何かが詰まっているようだ。


 こういうタイプの魔道具は見たことないな……。


 調べるにしても後回しだな……。


 ふとテーブルの下をのぞき込むと、さっき台所で見た魔法陣が書いてある。


 なにこれ?


 好奇心で魔力を流してみる。


 ちょっと光るだけでその後は反応なし。


 ?????


 うーん、わかんない!





 一通り漁ったが特に収穫もなく、リビングに戻る。


 また灯ったランプが増えている。



 次の部屋は……トイレか……な?


 構造はちょっと分からないが、貴族の邸宅にあるトイレに似ている気がする。


 あいつらケツ拭くのに紙使うんだよな、贅沢だ。


 古代魔法文明の連中もそうだったのかな?


 作り付けの棚らしきものをのぞき込む。


 ……ここにも魔法陣あるな。


 さっきも何も起きなかったし、罠じゃないだろう。


 三度、魔力を流してみる。



ガタン。




 なんかリビングから音がした。







しばらく息を潜め、様子をうかがう。


なんだ……?何が起きている……?


 トイレの扉をそっと閉じ、リビングに戻る。



 ランプが全部灯っていた。




 そして扉が増えていた。


どういうことだ……?


 しかも、今までの扉と少し様相が違っている。


 魔法陣がびっしりと描かれている見たことない色で光る金属の扉だ。


 なにこれ怪しすぎる!



 見なかった振りをしようと思ったが、まあ気になるよね……。


 ここまで来たら毒を食らわば皿までよ!




 そう思って息を殺して、そっと扉を開ける。




 正直な話、油断はあった。


 ここまで何もいなかったから、ここにも何もいないだろうという無意識下の決めつけがあった。



「な、なんだ……これは……?」


 だからこそ俺は面食らって思わず声を上げてしまった。


 そこは寝室であった。


 ただ、我々の想像している普通の寝室ではなかった。


 イメージするならば金属製の玄室であろう。


 祭壇のような金属製のベッドにそれは横たわっていた。





 美しい女だった。


 銀色の長い髪を持ち、作り物のような美しい顔を持つ女。



 服装は貴族の館にいる下働きの女……メイド?といったか?


 あれらが着ている白と黒の質のいい服に身を包んでいる。


 微動だにしない。

 

 人形……か?


 ふらふらと誘われたように、無防備に近づいて。


 それの顔を覗き込む。





 ぱきん。

 どこかで何かが壊れる音がした。





 目が合った。


簡単な用語説明

 ・古代魔法文明

 何でもかんでも魔法で出来てたとされる文明。

 現代日本と同等の生活が送れていた。

 遺跡はちょくちょくあり、魔法の品物も結構見つかる。

 割とこの手の話である古代文明と思ってくれていいです……

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