表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教導者、教育終了後捨てられる。  作者: みかんねこ
1章 どんなに暗くても、星は輝く
5/183

第5話 教導者、再会する。

 北の国、リケハナの入口に無事到着した。


あの場所をもう一度(ファストトラベル)」をまともに使うのは2回目だからな・……。



 わかってても怖いもんだ。




 そもそもなんでこの遠く離れたリケハナに来れたのかというと、当たり前だが以前来たことがあったからだ。


 正しく言うと来たというか、《《飛ばされた》》というのが正解か。


 とある魔法文明時代の遺跡を調査した際、パーティメンバーがトチって転移罠を発動してしまった。


 全員ばらばらに転移させられたのだが、《《俺だけ》》何故か遠く離れたリケハナ付近の遺跡に飛ばされたのだ。


 俺が一体何をしたって言うんだ……。


 その後はまぁ、長くなるから割愛するが別の手段で無事帰れた次第である。


 その事件についてはそのうち語るとしよう。


 見慣れない髪色をした男がいきなり出現したことにリケハナの門番を務めていた衛兵に死ぬほど怪しまれたが、「お話し合い(そでのした)」で無事解決した。


 みんなハッピーで幸せな結果でニッコリである。





 以前来た時に、死に物狂いで身に着けた言語を忘れていなかったのは収穫であった。


 使わん言語はすぐ錆びつくから不安だったんだよ。


 日常会話程度は問題なさそうだ、言葉が喋れるかどうかで生活する難易度が天と地ほど変わるからな……。


 まあ、加えて今回は換金用の宝石などがあってイージーモードだ。


 前は金も無いし言葉は通じない、その上ここがどこだかわからない!で散々だったからな。




 ほんと金と情報、大事。







 なんとか取れた宿で体を休め、今後の予定を立てる。


 まずはこっちの冒険者ギルドに登録だな。


 以前の登録記録残ってれば楽なんだが。


 なるべく早く馴染めるように小さな依頼を採算を度外視して消化して、信頼を少しずつ積み上げていくか。


 こういった地道な作業はとても得意だ。


 一度成功した手法であるため、やり方はわかっている。


 最初は赤字だろうが、すぐに元は取れるはずだ。


 冒険者ギルドには以前お世話になったあの人も居るかもしれないし、ぜひ挨拶はしておきたい。


 とりあえずそこまで予定を立て、気絶するように眠りについた。


 スキルの過重負荷オーバーロード使うととにかく疲れるんだよ……。





 おやすみなさい……スヤァ……。









 夢は、見なかった。











 ただ、あの日見た星空が見えた気がした。











 翌日、冒険者ギルドの扉を叩いた。


あの頃とあんまり変わんねーなぁ……。


壁を見ると付近の地図が貼ってある。


以前より生存領域増えたかな?


 リケハナという国は国土は広いが、魔の森と言われる魔物の巣が大半を占めている。


 そのためギルドの活動は活発で、朝も早くから冒険者たちでにぎわっている。


 人間の活動領域を広げるために腕のいい冒険者がひしめいているのだ。


 兎に角遠くにいきたくてここを選んだが、結果としては大正解だったな。


 常設依頼が貼ってある掲示板をなんとなく眺めていると、いきなり後ろから声をかけられた。






「おめえ……ヴァイス……か?」






 振り向くとやたら体格のいい禿爺がいた。


「モストル爺さん!?」


 以前言葉もわからずカネもない変な異邦人だった俺に、色々教えてくれた恩人がそこにいた。


「おめえ何も言わずにいなくなっちまってよォ!心配してたんだぜェ!?」


 ニコニコしながら背中をバンバン叩かれる。


 以前はその衝撃でよろめいたものだが、今なら平気だ。


「お、あの時より鍛えてんな!感心感心!」


「まあ、いつまでも子供じゃいられませんしね」


「俺にとっちゃァひよっこよォ!」


 からからと笑う。




 あぁ……変わらないな……。





 モストル爺さんも出身も俺と同じアナフィハ王国らしく、同郷の俺が困っているのが見ていられなかったらしい。


 ちょっとガサツで適当なところはあるが、とてもいい人だと思う。


 久々に心が温かくなった。


「おめえ、当分ここにいる感じなのか?」


「そうですね、しばらくはここを拠点に動こうと思っています」


「なら後でメイリアに会いに来いよォ!?おめえが居なくなってあいつめちゃくちゃ落ち込んでたんだからなァ……」




「あー……」



 メイリアさんというのはモストル爺さんの孫で、世話焼きでとてもかわいらしい女の子だ。


 俺のこっちの言語の先生でもある。


 モストル爺さんと同じように、とてもお世話になった。


 国に帰るときはバタバタしていて、お別れの言葉も言えなかったのは気になってはいたのだ。


 あれから数年経つし、きっと素敵なレディになっているに違いない。


「そうですね、今度時間を作ってしっかり挨拶に伺いますよ」


「そこまで畏まる必要はネェんだがなあ……」


 ぺたりとその禿頭を撫でる。


「んで、ここでナーニしてんだぁ?」


「まー、こっちのギルドも久々ですし、登録記録が残ってたら挨拶がてらちょっと面倒な依頼でも消化しようかと思いまして……」


 言外に仕事を紹介してくれと頼む。





「ほう?」





 ギラリとモストル爺さんの目が光る。




 ……これはやらかしたかもしれん。


「残ってるはずだぜぇ。メイリアがオメエが死ぬ訳ないっつって暴れたからなぁ!


おめえけっこう戦闘ヤレるよなあ……


そんなお前に良い依頼があるんだァ……受けるよなァ?」


 はい、受けます以外言えるわけないよな……。

簡単な用語説明

 ・リケハナ

 国土はやたら広いが国土の7割が魔の森と呼ばれる危険地帯である。

 ちょっと森に入ると未盗掘の遺跡がゴロゴロしている、トレジャーハンター垂涎の国。

 やや排他的なところは見られるが、冒険者には門戸を開いている。

 特産品は魔物素材。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ