第1話 不思議少女降臨
世の中は退屈だらけだ。人と関わり合うことも嫌な事だらけ。いいことなんかない。
高校2年になった俺は再びそう思う。今日はクラスが発表される日だ。眠気を必死に耐え自分の名前を探す。
「明星…明星…あった。」
2年3組。そこに俺の名前はあった。「明星 光」なんて自分に合わない名前なんだとつくづく思う。
「はぁ。」
俺は短くため息を吐く。気持ちの入れ替えをするためだ。学校というのは集団生活であり嫌でも人と関わるということになる。高校に行かないという手段も考えたが冷静に考えた結果、高校は卒業した方が良いと判断したからだ。
…
「ここか。」
いつの間にか自分の教室に着いていたようだ。
「ふぅ。」
小さくため息をしてから俺はガラガラと音を立てて扉を開けた。
開けるとそこにはガヤガヤと喧騒が教室中に響きあっていた。挨拶する人や仲の良い人同士が同じクラスになって喜びを分かち合っている人、緊張しつつもクラス替えで初めて会話し合う人。様々だった。
俺は自分の席に真っ先に座った。1年の時にも誰とも関わらなかったからか誰一人として話しかけないと思う。
「また…」
そう小さく呟いて俺は窓の外を見た。
…
教室のチャイムが鳴った。終礼のチャイムだ。今日は学期始めということもあり、午前で終わりだ。
俺は何となく教室に残りたい気分だった。教室の誰もいない雰囲気が好きだからだ。1年の時にもそういった理由で何度か真っ直ぐ帰らないで教室に残っている。
1時間くらいぼーっと見続けた。
「そろそろ帰るか。」
そう呟き俺は教室を出た。コツコツと空虚な音を鳴らしながら廊下を歩く。
しばらく歩くと渡り廊下の向こう側が少し気になった。見てみると俺は目を見開いた。
長い銀髪の髪にまるで星空のように綺麗な青い目、渡り廊下越しでも分かるとても印象的な女の子がそこにはいた。
「何やってるんだ…?」
見た目だけでなく行動もとても印象的だった。彼女は何やら巨大な看板を持って廊下を行ったり来たりしているのだ。
文化祭準備なら分かるが今は4月まだ数ヶ月も先なはずだ。
「ッ!?」
そう考えてると目が合ってしまった長く見すぎたのかもしれない。まずい、こちらに向かってくる。渡り廊下を巨大な看板を持って歩いてくる。
「ねぇ!」
透き通った声だけど芯のある声で俺に話しかけてくる。
「今日って早帰りだよね!何でいるの??」
「別に、今から帰るってだけで特に意味は無いよ。」
早く切り上げたいそう思う。人と話すのは嫌なのだ。昔から人の気持ちを敏感に感じ取れるから。
「ふーん。そっか。」
そう言うと彼女は俺の顔を覗き込む。
「な、何だよ。」
俺が怪訝そうにそう言うと彼女は
「君は宇宙人…信じる?」
「…………………………………は?」
呆れ返るくらい間抜けな声が自然と出てしまった。
「え?う、宇宙人?何で急にそんな話に…」
「え?あれ?違った?」
「何が!?」
俺は久しぶり大声でそう言った。何だ?何なんだ?コイツ…出会って早々宇宙人を信じるとか何とかって…
「何で急に宇宙人は信じるって話になるんだってこと何でなんだ?」
「え?いや〜あはは…ふと気になって…で?どうなの?宇宙人信じる?」
俺は少し考えて
「…いるんじゃないか?銀河中で地球にしか生命体がいるなんてことはないだろ。何百、何万光年離れた先には地球と同じ環境だってあるかもしれないし。そうであって欲しいよ。」
「そうであって欲しい?」
「あぁ。人間だけがこの銀河にいる知的生命体なんて烏滸がましいにも程がある。人間なんてちっぽけなものだよ。」
「へ〜…君はそういう風に考えてるんだ…」
「割と普通の考え方だろ。」
「う〜ん…」
そう彼女は唸り口元に指を当てて考え事をする時にするポーズをした。
「ねぇ!君!」
「あ、え?はい。」
急に口を開いた彼女に少し驚く反面、次に何を言うのか少し気になった。
「君!私の宇宙船直すの手伝ってよ!」
「…はぁ?」
「私、ステラ!君は?」
「…明星…光。」
これが彼女との出会い。今考えると何気ない出会いだったけど。ここから俺の環境が大きく変わるんだ。