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湖上さんは隠れ性癖を語りたい ―可愛い委員長が陵辱エロゲ好きではダメですか?―  作者: 時田唯


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2-7 厄介事はいつも重なってやってくる(上)


 湖上さんと別れて帰宅し、一息ついたその時、自分の心が思ったよりも軽いことにふと気付いた。

 あれ、と思いながら鞄を置き、パソコンを起動しながら考える。


 僕は人と会うのが苦手だ。

 どんな相手であろうと緊張してしまうし、口を開く度になにか失敗してしまわないかと不安になるし、相手になにか一言言われる度に怯えてしまう。

 そして後で会話を思い返し、なんであんなことを口にしたのだろうという後悔に苛まれる。

 誘い自体を断ればとも思うのだけど、断ったら断ったでまた相手を不機嫌にさせてしまいそうで断り辛い。


 そうして人と会った後は必ず疲れ果ててしまい、ベッドから起き上がれなくなるのが常だった。

 けど今は、その感覚が珍しく、ない。


 湖上さんとの会話は、思い返せば恥ずかしいことばかり。

 彼女は許してくれたけど、ヘンなことを喋ってしまったのは事実だし。

 すごく気を遣わせてしまったし……。


 それでも後味の悪さや後悔がないのは、湖上さんが素直に喜んでくれていたから、だと思う。

 ……それに。


(遠慮なく相談して、って言われたのは、ちょっと嬉しいかも)


 そんな声かけをしてくれるのは小早川君くらいなので、心配して貰える、というのは何だかんだで嬉しかったのだと思う。


 ――もちろん、本当に相談することはない。

 湖上さんと僕は単なるクラス委員長同士の繋がりであり、趣味を同じくするから意気投合して優しくして貰えてるだけだ。僕自身が日陰者の元引きこもりなことに変わりはない。

 そんな僕が、相手の負担になるような相談事を持ちこむなんておこがましいと思うし、本気で相談しても彼女は困ってしまうだろう。

 宮下さんって、そんな人だったんですね、と見捨てられても仕方無いと思う。


(……けど。……相談じゃないけど、少しくらい、趣味を打ち明けるなら……?)


 本音は言えない。言いたくないし言えるはずがない。

 ただ。

 ただ――

 ……自分が、じつは陵辱系作品が好き……いや、興味がある、程度の話なら……


 もちろん自分が『フィーンテイル』のシナリオ制作者だとか、実は湖上さん以上の収集癖を持っているなんて話は絶対出来ない。

 出来ないけど、実は陵辱系が嫌いじゃない、興味ある……くらいの話であれば……


 ……いや、ダメだ……

 女子がエロ本を「好き」って言うのと、男子が「好き」っていうのは意味が違う。

 僕は何事も思い込みが激しく、つい勘違いもしてしまうタイプだと自覚している。調子に乗って余計なことを口にし、湖上さんとの関係を壊してしまうのはクラス委員長としても大変にまずい。

 触らぬ神にたたりなし、口は災いの元。醤油ソース事件の二の舞は許されない。


 そんな風に今日のことを反省しつつパソコンを起動し終えると、いつもの着信音とともにメールが届いた。


『新規シナリオ作成依頼について』


 いつもの連絡事項――ただし目を惹くタイトルにどきりとしながら、メールを開く。


 内容は一本、短めの同人ADVのシナリオを書いてみないか、というものだった。

 コンセプトは以前から話題に上がっていた女子高生もの。海賊同盟の新作ではなく、師匠が引き受けた別件をこちらに回してきたらしい。


 そのままチャットでやり取りし、コンセプトがどうだの依頼主の要望がああだのと確認する。

 相互認識は重要だ。

 これを怠ると最悪、陵辱作品なのにNTRになっていたとか、向こうの要望がじつは女子中学生ものだったのに熟女ものになっていた、という厄介なトラブルになってしまう。

 何より僕自身がよく勘違いを起こすため、本当にこれでいいのか?

 間違いないのか?

 と、しつこいくらいに確認する。


 けど、本当の問題は別にあった。


『期間だけど、ちょっと短いけど一月でいい?』

「一月……?」


 渋い声をあげたのは、制作期間が短いからだ。

 依頼されたものが然程長くないとはいえ、アイデアを考え、プロットを組んで本文を……と考えると、かなりきつい。

 けど、仕事をもらってる立場上、断るという選択肢は最初からない。

 元より師匠のおこぼれを貰ってる身だ、頑張ります、と返事をすると師匠からサムズアップのアイコンが届き、続けてもうひとつ、メッセージが飛んできた。


『でさ。それが上手くいったら、本番。――大きいのやってみない?』

「え」

『フィーンテイルの次回作。今度こそ君メインで。どう?』


*


 そうして依頼を引き受けた僕であったが、困ったことに、問題事というのは重ねて起きるものらしい。


 同級生の姿を見つつ女子高生が陵辱されるシチュを頭の中で描くという、背徳的な妄想を繰り返しながら学園生活を過ごしていた、ある日の早朝。

 小早川君が何気なく口にした一言で新たな問題が発覚した。


「それにしても、早いよね中間試験」

「え。……まだ九月だよね?」

「そうなんだけど、うちの学校、文化祭が十月半ばにあるから、被らないよう早めの九月末にやるんだってさ」

「へ、へえぇ……」


 となると、シナリオ作成の佳境まっただ中である。


「でも宮下君だから、今回も成績一位取っちゃうんだろうなぁ。入学してからずっと一位だよね。凄いなぁ。僕なんかつい、だらだらゲームしちゃうけど」

「ど、どうかな。毎回、運に助けられてる所あるし……」


 苦笑いしつつ、これはまずいと思った。

 真面目な生徒を装いたい――いや、真面目な生徒でならくてはいけない僕にとって、成績の維持は命題のひとつだ。

 幸い元部高校はさほど偏差値も高くなく、普通に勉強すれば一位を取れる学校ではあるけれど……時間が……


「……頑張らないとなぁ」


 シナリオ製作時間が無限にあった引きこもり時代と違い、学業との両立がどうしても必要になる。

 不安を押し殺すように、僕はじっと机に爪を立ててちいさくカリカリと搔くのだった。





 ――けど。

 本当の厄介事とは、前触れもなく嵐のようにやってくるのだ。


「宮下ぁ! 頼みがあるんだが……クラス委員長と一緒に、文化祭実行委員も一緒にやってくれないか?」

「…………は?」


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