音楽について本気出して教えてみた
「ベースって言うのはね、ギターよりも少ない弦で演奏する楽器で、低音がメインなんだよ。例えば、吹奏楽でコントラバスって楽器があるよね? それの''バス''の部分を英語にするとBassになって、同じスペルになるんだ」
「ふむふむ」
「ギターとは形が似ているけど、出る音も弾き方の力の入れ方も全然違うって......」
「なるほど......。なんか音楽の知識あんまないって言ってた割には詳しいんだね、ちゃんと伝わったよ」
「ほ、本当!?」
「うん、わかりやすかった」
あまり上手く説明出来た自信ないけど、萌路に伝わったんなら結果オーライだね。って思っても、ベースくらいしかまともに説明できる楽器ないんだけど......。
「お姉ちゃんが、ね。ベースやってたから、それでちょっとだけ話聞いたんだ」
「実羽歌のお姉ちゃんって、ベース奏者だったの?」
「うん。今年卒業したんだけど、軽音部でバンドやってたんだよ。凄い上手だったんだから!」
勢い余ってお姉ちゃんの話に持ち込んじゃった。お姉ちゃんのことになると止まらなくなっちゃうから抑えないと、萌路にシスコンだって思われちゃう!
「そうなんだ、だったら実羽歌もお姉さんを越えるベーシストにならないといけないね」
「勿論だよ! ステージでベースを弾く姿をお姉ちゃんに見せたいんだ」
ああもう! 止めないといけないのに止まらないよう! 早速友達出来たと思ったのに引かれちゃったかな......?
「ねえ実羽歌」
「は......、はい......」
真剣な顔してるよ......、さっきの私は壊れて水が堰き止められなくなったダムみたいだったもんね......。
「実羽歌と一緒に、二人でお姉さんにかっこいいとこ見せようよ! 二人で!」
「え、えぇ!?」
「私じゃ、ダメかな?」
「い、いや、ダメじゃないよ!? だけど予想と違った返事が返ってきたというか何かでびっくりしちゃって......」
「さっきまでは楽器高いから、サークル入るのは厳しいかなって、思ってたんだ。だけど実羽歌の話聞いてたら、私もベース弾きたくなっちゃった」
「ん? ベース?」
えっと、さっきギター調べてたはずだけど......?
「え、だって一緒にベース弾いてお姉さんに見せようって話じゃなかったの?」
「いやいや、バンド組むなら基本ベースは一人でしか出来ないよ? 別々のバンド組むんだったらベースでも大丈夫だけど、一緒にやるんだったら萌路は違う楽器になっちゃうよ。私は絶対ベースやるって前から決めてるし......」
「そんなぁ! じゃあ私はどうすれば......」
音楽の知識あんまないって自分で言っちゃったけど、萌路はそれ以上だったか......。でも、何にも知らない状態でいきなり音楽始めるってなったら、大抵の人はこんな感じなのかもしれないね、お姉ちゃんももしかしたら......。
「バンドの構成にどんなものがあるか、萌路はわかる?」
「うーん......、ベース以外だと、歌とか、あとはドラム、ギター、ピアノ......、トランペットとかも必要なのかな?」
「ま、まあ確かにそう言った類いの楽器使ってるバンドがないこともないけど......」
楽器の説明も大事だけど、まずは根本的な所から言った方がいいかな。
「実はね、ギターとベースとドラムさえ居れば、バンドって組めちゃうんだ。あくまで一番少ない人数の場合だけどね」
「え!? 3人だけでもいいの?」
萌路が想像してたのって、どんな音楽だったんだろう......。普段あんまり音楽番組とか見ないのかな?
「うん、そういうバンドは通称スリーピースって言うんだよ。勿論5人以上で組んでるバンドもあるけど、そういうバンドはピンボーカルだったり、シンセが居たりするから多いんだ。勿論曲のバリエーションも人数が多い方が拡がるんだけど......」
「ピン? ボーカル......? シンセってシンセサイザーのこと......? えっと、音楽って難しいね」
「あ、ごめん。つい難しい話を......」
「ううん、難しいけど楽しそうだから大丈夫! 歌うだけでも大丈夫なんだよね?」
「楽器持たないで歌うだけの人のことをピンボーカルって言うんだよ。萌路がやりたいのはボーカル?」
「うーん......、確かにボーカルだけだったらお金は掛からなそうだし、でもギターも興味深いし......」
お、萌路はギターに興味をお持ちですか? メーカーは全然わかんないけど、見た目が良いのを選ぶのに超したことないかな?
「さっき実羽歌はベースとギターとドラムさえ居れば組めるって言ってたもんね。だったら私はギターかボーカルやりたいかな、でもギターは何がいいのか全然だし......」
ネック部分に貼られている値札を左から右へと流し見していく私と萌路。てか別に今日は買うつもりはないんだけどな、どんなものあるか見に行こうと思っただけなんだけど、楽しくなっちゃってすっかり夢中になってしまっている。
「一度さ、軽音部の人達がどんなの使ってるか、あと部室の雰囲気とか、色々見てみようよ。そしたら萌路もパート何にするか決めれるかもしれないし!」
「そ、そうだね。今すぐ焦ることじゃ、ないよね?」
「私も、お姉ちゃんに楽器買った時のこととか聞いてみるね! 参考になると思うから!」
「うん!」
お金もそこまで持ち合わせてなかったし......。でもどうしたらいいか分かってきたから良かったかな。
そう言えばお姉ちゃん、1年生の時は元気無い感じだったのに、いつの間にか人が変わったようによく笑う様になったんだよね......。
一体何があったんだろう、聞き出そうにも触れちゃいけない気がして考えることしかしなかったけど、これも音楽の力がどうとかいう次元だったのかな?
部屋に帰ったら電話してみようかな、無事に鳴成着いたってことも言っておかないといけないしね。
7ヶ月振りのスピンオフ更新になります。
本編のネタバレを避けるよう慎重に執筆しておりますが、考察も兼ねて読んで頂けたら嬉しく思います。
次回は電話越しになりますが結羽歌を登場させる予定です。