表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のベースとあのこのギターは夢をみる  作者: べるりーふ
第一章
2/6

夕暮れの出会い

 4月7日


「着いたー!!」


 電車で約1時間かけて日本を代表する大都市、鳴成市に辿り着いた。

 これから4年間、はたまた6年間、こんな大きな街に住むということは田舎に住んでいた私からしたらとても信じられないことだけど、これが現実。憧れていた大都市での一人暮らしは私の胸を躍らせた。


 池田実羽歌(いけだみうか)、19歳。

 1年浪人して全国でも有数の偏差値を誇る鳴成大学に合格し、明後日から正式に入学が決まる。

 そんな私は大学でやりたいことがある。それは、サークルでバンド活動をすること! お姉ちゃんが演奏していたのと同じ楽器でステージに立って、沢山の人に見てもらうこと。

 そしていつか、お姉ちゃんよりも上手くなりたい。そのためには並大抵以上の練習をしなきゃだけど、今までやりたいことは最後までやり遂げていた私の事だから、努力するしかないよね!


 ピンクのスーツケースを引きながら辺りを見渡すと、昨日まで衣食住を共にしていた街では見られなかった光景が拡がっていた。

 左右から流れる車の列、見上げるだけで首が痛くなってしまいそうな位高いビル、キラキラ光る装飾が目立つ綺麗なお店。

 どれもこれも田舎では見たことないものばかり、高まる胸は最早制御不能だった。

 お姉ちゃんも初めて来たときは、私と同じ気持ちだったのかな。


 暫く歩いていくと、これからお世話になる私のアパートが見えてきた。大家さんから鍵を受け取ってアパートの階段を上り、203と書かれた扉の前に立ち止まる。

 ふーっと息を吐き、鍵穴を回して扉を開けると、真っ直ぐに伸びた茶色の廊下が扉越しにリビングへと広がっていて、左右には埃一つ無い浴室と台所が見える。

 まずはリビングにある大量の段ボールをどうにかして、私だけの部屋を完成させないとね。


 「うーん、どうしよっかな......」


 まずは大きなものから設置していって細かい家具は後回し、特に電化製品をどうするかは真剣に考えないとね。えっと、まずは机からかな?




 3時間後......


 「ふーっ、何とか終わった......」


 悩みに悩んでようやく私の部屋が完成した。勉強机を窓際に、左端にはベッドを置いて、その後方には木の台に乗せた小型のテレビ。その他諸々の日用品は棚の中や洗面所に入れて置いて、冷蔵庫は台所の適当なスペースに。

 いつの間にか空はオレンジ色に染まっていて、お腹の虫が可愛く鳴っていた。

 夜ご飯、買いに行こう。


 財布を入れたポーチを肩に掛け、外に出る。階段を降りて歩道に出ようとしたとき、丁度1階の部屋が開いた。

 えっと、こういう時って挨拶しなきゃだよね! 初対面の人への挨拶の仕方は......、


「あのっ! 本日付で同じアパートに配属になった池田実羽歌と言いますっ! これからどうぞよろしくお願いします!」

「ほえ......!?」


 咄嗟に私に挨拶のようなものをされて戸惑う住人。肩よりやや下までのおさげを二つ結びにしていて、背丈は大体私と同じくらいの女の子。

 黄色のリュックサックを背負ってこれからどこかに出かけようとしているみたいだった。私と同じだね。


 「えっと......」


 突然話しかけられて驚いていたけど、女の子はすぐに私に返事をした。


柏木萌路(かしわぎめろ)です。実は私も昨日から住み始めたから、これからよろしくお願いします」

「もしかして、鳴成大学の新1年生だったり......」

「え? そうだけど......」


 女の子、柏木萌路ちゃんはキョトンとした表情をして私を見つめている。こんな時は......、


「私もなんだ! これからよろしくね!」

「う、うん! よろしくね」


 ちょっと緊張していたみたいだったけど、萌路ちゃんは安心したような表情に変わっていた。

 こういうときは、何をしようとしているのか聞いてもっと仲良くなれるように......、っと。


「実羽歌、ちゃん? もしかして、これからどこかに行こうとしていたの?」


 あれ? 私が聞く前に萌路ちゃんが先に聞いてきたぞ?


「うん、お腹空いたから何か食べに行こうかなって」

「私も一緒に行ってもいいかな?」

「うん、いいよ。一緒に行こう!」


 ・・・・・・・・・


「おおーっ、これが都会のフードコート! こういうの一度行ってみたかったんだ!」


 駅前にある大型ショッピングモールのレストラン街に着いて、私はその光景にまたしても目を輝かせていた。


「実羽歌ちゃん、こういうとこ行くの初めてなんだね」

「うん、田舎じゃこんなとこなかったから! あと実羽歌でいいよ」

「わかった、私の事も萌路でいいよ」


 様々な種類のレストランが並ぶ中、私は萌路と会話を弾ませていた。大学の授業が始まる前に友達が出来て嬉しいな。高校の友達も鳴成大学の生徒がいるんだけど、私は浪人生だからその人達はきっと他に仲が良い人がいるよね。

 あーあ、私も一発で合格してたらお姉ちゃんと1年間だけ同じサークル部員になれるはずだったんだけどな~。過ぎたことだから仕方ないけど、これだけが心残りだよ~。


「ねえ実羽歌、この店知ってる?」

「ん? えっと、ここラーメンの店だよね」

「うん。そうだけど、ここは他の所よりちょっと変わってるんだよ」

「そうなんだ、どんなのがあるか試してみようかな」

「決まりだね、ここにしよう!」


 都会のラーメン屋......、どんなのがあるんだろう。期待を胸に私と萌路はお店の中に入っていった。

主な登場人物


池田実羽歌:本編で登場するメインキャラ、池田結羽歌の実妹。1年浪人して鳴成大学に入学する。

柏木萌路:実羽歌と同じアパートに住む少女。実羽歌と同じ鳴成大学の新1年生。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ