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小さな世界

作者: 湖月もか

なろうラジオ大賞に応募させていただきました。

短く纏めるのにちょっと苦労しましたが、お楽しみいただけると幸いです。

 残業続きで疲労困憊な中、人通りのない街灯さえも少ない路地を底がすり減ったパンプスのヒールを鈍く打ち鳴らして歩く。

 ちょうど目の前の信号が赤から青へと切り替わる。

 立ち止まることなく、運がいいと思いながら歩道から足を踏み出す。疲労困憊なのは身体だけでなく頭も同様で判断力が鈍った頭では右から猛スピードで一直線に突っ込んでくる車に気付いた時には遅かった。重い衝撃を受けたひ弱な私の身体は宙を舞った。


『あ、死ぬんだ』という絶望感よりも『あ、これで仕事休める』と思った私は本当に色々と限界だったのだと今更ながら思う。


 そう。事故で宙を舞い死んだと思った私は何故か豪華絢爛な大広場で大勢の人々に囲まれていた。これは俗に言う【異世界トリップ】もしくは【異世界召喚】というものだろう。想像していたよりも周囲の人やものが大き過ぎるが。


「……成功したぞ! 聖女様だ!」


 という男性の声を皮切りに老若男女関わらず歓喜溢れる大声が私の鼓膜を揺さぶる。誰も此方を見ていない。

 ちらりと左後方を見るとそこには可愛らしい少女がいた。彼女は所謂セーラー服を着ているのでおそらく同じ世界だろうと仮定する。仮定するも私と比べて彼女は大きかった。決して横にという意味ではない。物理的な大きさが異なるのだ。

 まるで昔絵本で呼んだ話のよう。今ならお椀で川下りできるんじゃないかしら。


「……このままだと潰されて死ぬよね」

「いえ、それはないかと」

「いやいやいや。どう見ても物理的な大きさが違うんだから気づかないでしょう。そのまま移動されてみなさいよ。プチって」

「ですから、私が貴女に気付いたので潰される心配はないですよ」


 その言葉に視線を前に戻すと透き通った瑞々しい氷のような大きい瞳が二つ、私と同じくらいの高さにあった。


「とりあえず他の方は気付いていないようですので、本当にプチッとなる前にこちらへどうぞ」


 彼の言う通りなので大人しく差し出された手に乗る。本当に手乗りサイズな今の私は人形よりもかなり小さい。


「貴女の周囲に防音膜を薄く張ったので鼓膜が破れてしまうこともないかと思います。不便でしょうが聖女である彼女の役目が終わるまではこのままになります」


 口にしようとした感謝は知らされた驚愕の事実に悲鳴へと変わる。

 この世界で死ぬ未来しか見えない私はこの先どうなるの!?

ご清覧ありがとうございました!

お楽しみいただけたでしょうか?

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