桜散る頃に〜第1話〜
俺たちはいつも一緒にいた
俺たちの絆は絶対切れないと思ってた
桜散る頃に
君にまた会えたなら
「また比奈に会えてよかった」
「うん。あたしも。翔ちゃんに会えてよかったよ」
「本当は隼人とも会いたかったけどな」
「……そーだね」
「あ,ごめん」
「ううん。隼人,元気にしてるかな?」
「あぁ,きっと元気でやってるさ」
あれから19年が経ち,あと少しで20年が経とうとしている。長かったようで短かった。隼人,俺達はお前を絶対に忘れないから。ずっと思ってるから。お前も忘れんなよ。俺達は,お前も,神様も,誰も切ることの出来ない太くて強い絆で結ばれてるんだ。それは,ずっとこれからも変わらない。俺は,あの日みたいな過ちはもう絶対犯さないから。だから,またいつか,一緒に桜を見にあの丘へ行こう。きっと,その桜吹雪は俺達を祝福してくれるはずだから。
「じゃあ,そろそろ」
「おう。元気でな」
「うん。翔ちゃんもね。バイバイ」
「あぁ,じゃあな。また会おう」
もしかしたら一生会うこともないかもしれない比奈と握手を交わし,別れを告げた。あの時の記憶は,あそこにいたみんなの心に深く刻まれた。だからこそ,もう会う勇気は俺には無かった。ただ,今日会うことが出来たから十分だと思った。比奈に会って,お前のことを話すことが一番いいと思ったんだ。俺のためにも,お前のためにも,比奈のためにも。俺が,今まで助けてもらってた分,俺が今度は隼人や比奈を救ってやらなくちゃいけないから。
「俺も行くか」
加宮翔太は,決心が付いたように19年前のあの日のことを思い出しながら,ゆっくりと歩き出した。