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並行世界  作者: ドン小林
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1st-episode 動き始めたタイムリミット

大学に入学した当初、友達をつくるのが苦手だった俺はなかなか友達ができず悩んでいた。


そんなとき同じクラスの桑山康成(くわやま やすなり)と出会った。康成も俺と同様友達が居なそうで、いつも一人で帰っているのを見た。俺は帰り道に透かさず話しかけた。



「ねえ、俺の2つ後ろの名簿の桑山くんだよね?俺いつも一緒に帰る友達が先に帰っちゃったから、一緒にかえらない?」


「ああ、...まあ別に構わないよ...」



彼は少し驚いた様子だったが、すぐに俺と帰ることを許容してくれた。


「桑山くんってどこ出身なの?」




「東北の方から来たんだけど...田舎だったからまだこういうとこ慣れなくって、正直大学はどこでも良かった、高校の先生に薦められただけ...」




「そ、そうなんだ...早く慣れるといいね」



彼はサラサラとした髪に整った顔立ちで、とても友達がいなそうな雰囲気ではなかった。


「そうだね、なんか公一くんは趣味とかあるの?」


「そうだなー、これと言った趣味はなけど昔はよく友達と遊んだりーあと、都市伝説がすきだったなー」




「都市伝説かー、そういえば昔地元でうわさになった都市伝説を聞いたことがあったなー」




最初は少しテンパって話していた彼も口数が多くなり、その後も気軽に話すことでき、いつの間にかすっかり溶け込んでいた。


「あ、俺家こっち」


「そうか、じゃあまた今度、じゃあな!」


「おう」


そういうと彼は薄暗い路地の中に姿を消していった。


なんか人情味がないというか、物静かなやつだな。連絡先くらい聞いとくべきだったか。


いろいろなことを考えながら気づくと家に着いていた。

その後、帰り道で彼を見かけることがあると彼と帰ることも度々あった。


そんな日々が長らく続き、友人と呼べるくらいまで仲が深まり、学校の帰り道、彼から遊びに誘われた。


「公一、今週の日曜暇ならどっか遊びにいかない?」


「お!いいね!市街地の方遊びにいこうよ、俺案内してやるよ」


「わかった。じゃあ日曜ね!」


彼から遊びに誘うことなど絶対ありはしないと思っていた俺からすると嬉しかった。


そして次の日曜日、俺達は駅前広場で待ち合わせをした。

俺が駅前広場に着くと彼は既にそこに居てこちらに気づいたのか表情が和らいだ。


「お待たせー。ごめん待たせちゃったな。どうする?映画でも観に行くか?」


「お!いいね~、映画なんて久しぶりにみるなー。」


サスペンス映画を見た俺達は、その後俺が行き付けの喫茶店でゆっくりとお茶をし、気づけばすっかり日が暮れていた。


お互いに過去の自分の晒しあいをしていたとき、俺はあることを思い出した。


「そういえば康成、俺今日友達に合コンに誘われてたんだ!良かったら康成なりも来ないか?」


合コンと言っても軽い飲み会のようなものだ。


人と関わることが苦手な康成は相変わらず引き気味になり、とっさに拒絶した。


「...いやいや!俺は遠慮しとくよ!」


「いやいや!そんなこと言わずにさあ、気楽にいこうぜー!」


そう言うと俺は康成の手を強引に引いて、飲み会の会場まで彼を連れ込んだ。


「遅いぞー!公一、なにしてたんだよ

全く」


「あはは、ごめんごめん」


と、親友の悠介との会話を交わしていると、

俺の後ろで恥ずかしそうにしていた康成がひょっこりと顔を出した。


「お!?公一の友達か?ちょうど良かった、一人都合が悪くて来れなくてよー、そいつの変わりに飲んでけよ!」


と、悠介が歓迎の言葉を送ると、誰も嫌がることなく康成を迎え入れた。


「桑山康成です。よろしく、、」


「康成は俺の大学同期で、同じ学部に所属してるんだ」


こんなところに、康成を連れてくるべきではなっかと思った感情はどこへいったのか、

意外にも彼は悠介や他の女子たちともなかなか上手くやっていたのには驚いた。



そんな中俺のことをじっと見つめている女性がいた。

ふと目が合ったとき彼女が話かけてきた。


「公一くんだよね?公一くんって○○大学に通ってるんでしょ?」


「そうだよ、でもなんで知ってるの?」


「友達がね、公一くんと同じ大学で知ってるんだって」


「ああ、そうなんだ」


「良ければ、連絡先交換してよ!」


「あ、ああわかった」


彼女の名前は片渕さなえ(かたぶち)。


どうやら彼女も地元がここら辺らしい。


そんなことはいいのだが、彼女には何か不思議な力というか。

なんというか周りの女子とは少し違った雰囲気が感じられた。



飲み会が終わり、気付いたときには康成の顔は赤くなり少し酔っぱらっていたようにも見えたが、彼は平然としていて、いつもどうり自我を保っていた。


「そろそろ俺達も帰るか?康成、」


「ああ、そうしよう」


帰り道俺達は疲れきってあまり話すことはなく、ただひたすら歩いている。



市街地の街外れに小さな時計台とレトロな感じがいい味をだしているベンチがある。

小中学生の頃よくこの場所を待ち合わせに使ったものだ。


ここを通りかかったとき、康成が口を開いた。


「俺なんかこの風景に見覚えがある。ここには一度来たことがあるような気がするけど気のせいだったかな。」


「康成は市街地に行ったのは今日が初めてなんだよな?」


「ああ、まあそうだけど」


「そういえばいきなり思い出したんだけど、出会ったころに言ってた、地元で有名な都市伝説って何なんだ?」


「あれ?俺そんな話したっけ(笑)地元というか、中学のときちょっと周りで有名になっただけの話なんだけどな。(笑)」


「へー、どんな都市伝説?」


「8分違いのパラレルワールドって知ってるか?」


「よくSF作品なんかで我々の地球とそっくりな別の世界が存在するってやつか?」


「まさにその通りなんだけど、実際に俺の地元ではあるコンビニで偽硬貨を使った罪で男が逮捕された事件があったらしい、でもその偽硬貨はあまりに精工に作られてたらしい、

そこで多くの学者が8分違いのパラレルワールドの存在を明らかにしたらしいが詳しいことはわかってない。まずその話がほんとかどうかもわからないし、多分嘘だろうけど(笑)」


「そうなんだー!興味深い話だね。」


とは言ったものの今の俺は全く都市伝説など信じる気もなかったし、正直興味もあまりなかった。



すると康成がまた不気味なことを言い出した。


「実はさ、さっきの時計台とあのベンチ。


俺小学校低学年のころ家族で山登りに出掛けたことがあって、まだ幼かった俺は興味本位で勝手な行動して家族とはぐれたんだよ。

俺は恐くなってひたすらただただ泣いた。泣き疲れて目を開けたとき、そこには全く俺の知らない風景が広がっていて、俺は山にいたはずなのに、視界に広がったのは連なる山々ではなくて、綺麗な町並みだった。俺はすっかり泣くこと忘れて気づいたら母親の背中で寝ていた。」


「.....」


「ごめんごめん(笑)自分でもあれは夢だったのかもしれないと思うことのほうが多いよ。


でもその時、確かに見た風景の中にあの時計台とベンチがあった気がしたんだ。」



俺は背筋がゾワッとした。半信半疑でいながらもあの日康成の言ったことはほとんど信じていなかった。



ギリギリで終電に間に合い俺らはそれぞれ家に帰った。


パラレルワールドか...。少し気にはなったが昔のように調べたりすることは決してなかった。


この頃からだった。俺があの夢を見るようになったのは。




*





あれから数ヶ月が経った。大学が少しずつ安定してきていたので、俺は駅前の塾で講師としてアルバイトをして収入を得ることにした。


あの飲み会で知り合った片渕さなえとは実はいまとてもいい感じになっている。


彼女は色白い肌に生まれつきのダークブロンドの艶やかな地毛、なんといっても話していて全く苦ではなく話しやすさに惹かれた。


別にどっちがどっちに告白したなどのことはなくても自然にカップルになっていることはお互い理解していた。


ピロリロリンピロリロリン♪大学が終わると、時々かなえから電話がかかってくる。この日も同様電話がかかってきた。


「もしもし、かなえどうした?」


「もしもし公一もし今晩暇だったら、夕飯一緒に食べない?」


「また~?!今月何度目だよ(笑)まあ家帰ったら行くわ」


「ありがとう!待ってるね。」


かなえの料理はいつもお洒落なレストランで出てきそうなほど美味しい料理を振る舞ってくれる。小さいときからよく母親に教え込まれたようだ。


俺は大学から帰ると母親が夕飯の支度をしていた。


「ごめん、お母さん今日外で食べてくるから夕飯いらない。」


「また~?!も~今月何度目よ~。」


俺がかなえに電話で放った言葉に似ていたため思わずクスッと笑ってしまった。


「もう何笑ってんのよ~!最近外食多いわよ。外食するんだったら早めに言いなさい!気をつけて行ってくるのよ」


「は~い。」



そう返すと俺はすぐに家をでた。大学が終わるのは午後7時。腹を空かせていたので、急いで自転車を走らせた。かなえの家は駅から徒歩7分の距離。


ピンポーン ピンポーン


「開いてるから入ってきて~!」


「お邪魔しまーす。」


「今日のディナーはペペロンチーノと和風サラダ!」


かなえの料理は非の打ち所ないほど旨かった。


夕飯が終わると特にすることがなかったため最近の出来事について話した。


「最近さ。何回も同じ夢を見るような気がしてさー。」


「私よくあるよー。特に怖い夢だと目覚めが悪くてやだよね。」


「うーん。俺の場合は別に怖いとかじゃないんだけど、なんというか現実的なものと当に夢って感じのものが混ざりあった感じでなんか見てて気持ち悪いんだよね。。」


「何回も見るんでしょ?もしかしてそれパラレルワールドに導かれる前兆かもよ。」



その瞬間俺の背筋がゾワッと冷や汗が流れた。


「な、なんだよそれ(笑)なんかの都市伝説?」


俺は康成とのあの話を鮮明に思い出した。


康成との関係は今も良好で仲良くやってる。でもあれ以降あの話が話題に上がることはなかった。



「そうだよ。結構有名な話。知ってる人は知ってるよ。」


都市伝説など全く似合わないかなえがいくらちょっと有名な話だとは言え知っていたことに不信感を抱いた。


「でもなんでそんなこと知ってんだよ?」


「....」


かなえは黙った。


「こんな話したら信じてもらえないと思うけど、、」


「いや、いいよ。話してくれないか?」


「まだ私が幼かったとき、5、6歳だったかな?


その時、毎晩、底気味悪い夢を見たの。はっきりとは覚えてなかったんだけどね。

そんなとき、ほら?一回台風で大洪水が起こったときあって町の市民体育館まで避難したことあったじゃん?

避難している途中家族と歩いてたんだけど、周りに人が賑わっててよく見ると鼻が高くて、エメラルドグリーン色の目をした外国人がたくさんいて、でも中華街みたいな和風っぽさもあれば、ヨーロッパ風の建物も目にしてこの世界にはいないような動物がいたり、それは異様な光景だった。


お腹が減っていた私は美味しそうな食べ物を見つけてそれを手にして食べたら、イカツい男の人達が訳のわからない言葉を話して、こっち追いかけてきて、恐くなった私は食べ物を投げ捨てとっさに逃げて、路地裏みたいなところに逃げこんで追っ手が居なくなったのを確認して、そこから出てみたら急に見慣れた風景に変わって振り向いたらそこは家の前だった。

腰まで雨水が浸っていて雨量がだんだん増えていったところに、偶然通りかかった自衛隊のヘリコプターに救助してもらったらしい。

後から聞いた話によると避難所に向かう途中急に私の姿がなくなり、行方不明者として手配される直前だったらしい。親にはこっぴどく叱られたよ。」


「それを夢でみたってこと?」


「夢で見ていたときは目覚めるとなんの夢かほとんど忘れてたけど、その出来事があって完全に合致した。」


「そ、そんな、じゃ、じゃあ俺ももしかして....!」


公一は一気に恐怖にかられ半分金縛りのような状態になった。


「大丈夫!大丈夫!絶対すぐ戻って来れるよ。確かにほんとだとしたら恐すぎよね。私も大きくなってから幻覚だと思うことにしたし。」


かなえの家から帰る帰り道俺は全神経を張り巡らせ、常にすべてのものに警戒していた。


やっとの思いで家に帰ると、俺は急いでパソコンを開きパラレルワールドについて入念に調べた。


パラレルワールドとは、ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。並行世界、並行宇宙、並行時空ともいう。



なるほど、タイムトラベルと違って単に時間の違いではない、かといって四次元とか二次元とか次元の問題でもない。ただ平行して別の世界が存在しているか。



他にもいろいろと調べ続けた結果あたかも嘘丸出しのような情報もゴロゴロとでてきた。



こんな面白いサイトも見つけた。それは自分が体験した都市伝説のような体験談を書き、公表し、コメントをもらったりするようなサイトだった。


検索キーワードでパラレルワールドを入力する。ほかのジャンルと比較的パラレルワールドへ行ったという体験談はそう多くはなかった。


だが中には、さなえがした体験に似た体験も書き込まれいて、その時は背筋がゾワッとした。しかし、人によって体験談は多種多様で一概にしてこんな現象だという結論を導き出すことはできなかった。



結局は都市伝説だし、あんまり気にしないほうがいいのかも。



そんなことも思いながら、昔のように、進んで都市伝説を調べていた自分がどこか懐かしく、再び愛着がわいたような気がした。


翌日、大学に行くと朝イチで康成に話かけた。


「康成!ちょっと話がある。ちょっと来てくれないか?」


「公一どうした?!こんな朝早くから、俺なんか悪いことしたっけ?」


康成は焦った様子で、いきなり謝り始めた。俺は康成を人に聞かれないようなところに連れ出した。


「ごめん、俺が悪かった許してくれ!」


「違うんだ康成(笑)!いきなりで悪いんだけど少し前にパラレルワールドの話。

詳しく教えてくれないか?」


どうやら康成によると、かなえのような前兆として夢みることはなかったそうだ。



怯えながらも普段通り生活を続け、あの出来事から4ヶ月経って、季節は冬の始まろを告げるころ 、あの夢は2、3回みるだけで、全く記憶に留めていなかった訳ではないが、以前のような怯えながら生活するような公一の姿はそこにはなかった。




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