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第五十七話

 哲子の部屋の収録を終えた2人が楽屋に戻ると仕出し弁当共に先に戻っていた柳葉とザ・オールド・ワンが控えていた。


 また、部屋の隅には杓も立っている。




「次は、彼等のインタビューだよ」


「昼ごはんを食べてから?」


「いや、会食しながらのインタビューだね。場所はこのテレビ局一階にあるカフェテラス」




 ザ・オールド・ワンの言葉に、この弁当は?とクアトロ・セブンが尋ねると、食べても食べなくても良いよと告げる。ジェーン・ザ・リッパーは弁当の作った会社を見て一目でこれは美味い奴だと確信めいた言葉を告げる。クアトロ・セブンはじゃあ、序にこれも食べましょうと告げて場所をカフェテラスに移動する。


 カフェテラスには既にカメラとマイクがセットされたテーブルが有る。また、テラスは立入禁止になっており、周囲には観光客や修学旅行生が集まっていた。




「インタビュー中、答えたくない質問があれば拒否して頂いても構いません。


 外的身体変形及び反社会性人格障害者に付いてはキメラと言う言葉を使って頂いても構いません。このインタビューは放送する際はカットを入れる編集をしますが、内容は極力そのまま流すつもりです。また、インターネット上にはノーカットのものを無料会員向けで流します」




 席に着くと杓がそう告げる。クアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーは分かりましたと頷いた。




「飲食や注文はお好きにして下さい。こちらがメニューです」




 杓が二人の前にメニューを置く。メニューには外部からの出前であろうピザやら天丼、そばと言ったカフェには似つかわしくない物も並んでいた。


 2人は取り敢えず烏龍茶を頼み、弁当を開ける。唐揚げ弁当で、高そうな物だった。




「改めて自己紹介をしたいと思います。


 中日本テレビのアナウンサー、杓一太と申します。今日はよろしくお願いします」




 杓が頭を下げるとクアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーがそれぞれ名乗ってから頭を下げる。




「まず始めに、ですがお二人の簡単な来歴、と申しますかどのような人物なのかを紹介していきたいと思います」




 杓はそう言うとフリップボードを取り出しす。唐揚げ弁当を食べていたジェーン・ザ・リッパーがおぉと少し驚いた様子だった。ジェーン・ザ・リッパーが活躍し始めた頃の来歴が年毎に簡単に書いてあった。


 隣にはクアトロ・セブンの物もある。




「日本における魔法少女とは防衛省が正式に外的身体変形及び反社会性人格障害者の排除を認めた人物に送られる通称です。


 魔法少女には3種のタイプが有り、格闘武器を使う甲型、射撃武器を使う乙型、特殊能力を扱う丙型の3つがあります」




 杓の言葉にクアトロ・セブンが正確に言うと甲種、乙種、丙種ですねと訂正する。杓は大変失礼しましたと詫びるので、2人揃ってお気になさらずと告げた。




「この種別ですが、どのように決定するのでしょうか?」


「うーん、よく分からないってのが正直な所なんですよ」




 杓の質問にジェーン・ザ・リッパーが苦笑しつつ答えた。クアトロ・セブンが暫く考えてから口を開く。




「参考になるか分かりませんが、私がこの銃、M1918“ブローニング・オートマチック・ライフル”小銃を手にした時、つまり魔法少女に成った時の状況をお話しましょう」




 クアトロ・セブンはM1918“ブローニング・オートマチック・ライフル”自動小銃を取り出して、テーブルに置く。弾倉を抜き、チャンバーから弾丸を取り出した状態だ。




「この銃をご存知でしょうか?」




 クアトロ・セブンは杓に尋ねると、杓はクアトロ・セブンさんがご使用の銃だということぐらいしかと告げる。


 クアトロ・セブンはクアトロとお呼びくださいと告げてからBARの説明をし始める。




「この銃は元々アメリカ軍が第一次世界大戦中に開発した自動小銃です。


 少しマニアックな話になりますが重要な話なので出来ればカットしないで欲しいです。この銃は今でいうところの分隊支援火器に近いものです。


 分隊とは小隊を半分に別けた時の名称です。学校の1クラスを小隊とした場合、それを小分けにした班が分隊です。そして、この銃はその班に一丁づつ配られます。この銃の役目は、分隊を前進させるため、敵に向けて撃ちまくり、弾幕を張る銃です。つまり、小規模な弾幕を張る銃ですね」




 此処までよろしいでしょうか?とクアトロ・セブンが尋ねると杓ははいと頷いた。




「弾幕を張るこの銃は人間が1人で抱え、歩きながら撃つことが出来ます。


 敵からすれば、この銃が火を吹いている間は一切反撃が出来ません。ですから、敵はこの銃を持つ兵士を真っ先に狙ってきます。つまり、この銃を持つ兵士は誰よりも先に撃ち殺されるという事が確定し、更には仲間のために自分はこれを持って銃を撃ちながら敵の注目を惹きつけるわけですね。


 故に、この銃を持つ兵士はとても勇気が必要になる。故に別名が勇者の機関銃と呼ばれます。


 私が魔法少女に成った時、目の前のキメラを殺すために、力が欲しい、そして、何よりも勇気が欲しいと思いました。当時の私は、コンバットと呼ばれるテレビドラマを見てこの銃の存在を知っていました。題名は確か、勇者の機関銃。


 私は勇気が欲しいと願い、その勇気がこれなのです」




 クアトロ・セブンの言葉に杓は大層驚いた顔をした。それから朧気ながらの簡単な纏めをしてみせる。




「クアトロさんの話を纏めると魔法少女の種別は概ねその時の願いと知識から選別される、と言う事で良いのでしょうか?」


「確定ではありませんが、その可能性は大いにあると思いますよ」


「三国志が好きな魔法少女は武器が関羽の青龍偃月刀だったり呂布の方天戟だったりするものね」




 ジェーン・ザ・リッパーが付け足すように答える。


 杓は成る程と手元のメモ帳にそれを書き込んだ。




「では、次の質問を。


 外的身体変形及び反社会性人格障害者をその、排除する際に何か思うことはありますでしょうか?巷では魔法少女の活動を批判する人々も居ますが」


「私は特に何も思わないね。


 言い方は悪いが、ゴキブリを殺す時に罪悪感を感じる人間は居るかしら?」




 ジェーン・ザ・リッパーの言葉にクアトロ・セブンは少し顔を曇らせた。




「口が悪いですよ、ジェーン」




 クアトロ・セブンはそう叱ってからジェーン・ザ・リッパーの言葉を丁寧に解説する。




「私やジェーン・ザ・リッパー、私が指導しているテン・バー、私を指導して下さったベルサイユは概ね共通の認識を持っています。


 1つ、もし、身内、例えば両親、兄弟がキメラに成ったら私達は何の躊躇いもなく彼等の首を刎ねます。確実に殺します。


 2つ、キメラに成った人間は決して自ら望んでキメラに成ったわけではありません。ですから、可及的速やかに殺します」


「それぞれの理由を聞いても?」


「勿論です。


 まず1つめですが、親兄弟肉親が犯罪者に成り、知らぬ人に不幸を与えるのであれば私達はそれを全力で阻止します。キメラの治療法が有るなら生け捕りにしますが、現状そんな事実は見付かっていません。その為に殺します。身内を犯罪者にしないためにも。


 2つ目ですが、これは1つ目にも掛かりますが、彼等は望んでキメラに成ったのではありません。彼等はキメラに成ったために人を含めたあらゆる生き物を殺し、物を壊すわけです。そして、現状彼等を救う手立ては彼等を殺すしか無いのです。


 私がキメラに成ったのなら、可及的速やかにに殺して欲しいです。誰かを傷付け不幸にするぐらいなら死んだ方がマシですから。


 故に、私達は彼等を出来るだけ速やかに殺すのです」




 勿論、反論は有るでしょうとクアトロ・セブンは告げる。しかし、キメラの治療法が発見されるまで、私は殺し続けますと断言した。




「成る程。分かりました。


 続きまして、ジェーンさんに質問です。よろしいでしょうか?」


「何かな?」




 杓は少し質問を躊躇い、それから意を決して口を開いた。




「ジェーンさんは外的身体変形及び反社会性人格障害者を排除する際に、必要以上に傷めつける事が有名ですが、何故その様な事をしているのですか?」




 杓の質問に柳葉や自衛隊関係者の顔が少し曇る。しかし、ジェーン・ザ・リッパーはそれに大丈夫だという風に手を上げた。




「そうね。


 非常に簡単に言えば、私が学校でイジメられていたからその鬱憤をキメラにぶつけていたのよ。多分、魔法少女に成らず、キメラも居なかったら、私は自殺したかイジメていた人達を殺してたと思うわ。


 イジメていた人間に関しては今も恨んでるわ。許されるなら、殺してやりたいぐらいにね」




 ジェーン・ザ・リッパーが武器である日本刀を出現させながらカメラに向かって断言した。




「だから、今、イジメている人達に言うわね。


 お前達がイジメている相手は、お前達が考える以上に苦しんでいるぞ。命が惜しければ、今直ぐイジメを止めろ。イジメをしている奴は殺されても文句は言えないぞ?人間、後がなくなると自分の命すら絶てるのだ。そして、その勇気が外に向いた時、死ぬのはイジメをしていたお前だ。


 そして、イジメを受けている全員に言う。私は君達と同じ体験をした訳だが、君達を救うことも出来ないし、そのツモリもない。しかし、命を絶とうと考えているのならそれはお勧めしない。勿論、相手を殺すのも少し待つべきだ。


 世の中にはネットという物がある。此奴は凄い。あらゆる知恵を貸してくれる。イジメっ子を合法的に、そして徹底的に叩きのめす方法を簡単に教えてくれるんだ。


 ネットがないなら漫喫に行きなさい。金が無い?なら、イジメっ子に払う金を一旦止めて、漫喫に行きなさい。そこで合法的に相手を叩きのめす方法を調べなさい。


 幸いにも世間様はイジメに関しては実に手厳しい制裁を加えてくれる。目には目を歯には歯を、ダメだが、法律を介して出来る事は全てやりなさい。泣き寝入りなんて言う事に成らないように、ネットの先達者に復讐方法を確りと聞きなさい。


 君達の思いを理解し共感してくれる人間は日本中に何人もいる。協力してくれる人間も絶対にいる。だから、死ぬのを少し待って見て頂戴」




 ジェーン・ザ・リッパーはそう告げると、杓に向き直って今のメッセージは絶対にカットせず、CMも挟まずに流して欲しいと告げた。クアトロ・セブンもそれには同意する。


 そして、クアトロ・セブンが言葉を紡ぐ。




「ジェーン・ザ・リッパーの狂気は言ってしまえば人間が創り出した物なのですよ。


 魔法少女と言う非現実な、もう一人の自分が抑圧されていたジェーン・ザ・リッパーと言う形で現れたんですよ」


「NRAは『銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ』と言うモットーを掲げていますが、ある意味心理ですよ。


 道具は人を殺すんじゃないんです。人が人を殺すよう仕向けるんです。また、その逆で人を守るのも人しか出来無い事なんです」




 ジェーン・ザ・リッパーの言葉に杓が最近では余り残虐性が目立たなくなっていますが理由はありますか?と尋ねる。




「“中の人”が人間はまだまだ捨てたもんじゃないって思ったんでよ。


 私、ジェーン・ザ・リッパーは“中の人”の本能と言うか欲求と言うか、そういうのの表れで行動してるからね。中の人が幸せになれば私も大人しくなる。クアトロと係るようになってその事に気付かされたんだよ。


 そういう意味じゃ、クアトロは私の救世主様ね」




 ジェーン・ザ・リッパーの言葉にクアトロ・セブンは恥ずかしい事を言わないで下さいましと少し嬉しそうに烏龍茶を飲む。そして、メニューに目をやって天ぷら蕎麦を注文した。


 ジェーン・ザ・リッパーはシャーシュー麺だ。杓は今まで魔法少女をやっていて嬉しかったことはありますか?と尋ねる。




「そうですね。


 キメラに襲われて助けた人に『ありがとうございました』と言われたことですね。私の行動を非難する人間がいると同時に私の行動に感謝する人間も居ると言うのを改めて感じます」


「私はちょっと前までは強敵のウィークエンドと出会った事だったけど、今はクアトロと一緒で『ありがとう』って言われる事だな」




 ジェーン・ザ・リッパーは夏休み直前の空港でのキメラ騒ぎを出して心境の変化を語った。


 インタビューは2時間を超えて行われたのだった。




ドラマ編はもうそろそろで終わりたいです



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