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第五十五話

 さて、夏休み、残す所後1週間程になって、昇と仁は東京にあるテレビ局にいた。二人共クアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーに変身しているが、銃は保有していない。ドラマの事前宣伝として魔法少女に友好的なテレビ局に出る事になった。朝昼夕全ての情報番組やバラエティに出るのだ。


 朝の情報番組、午前7時の全国放送の生放送に出演している。




「くっそ眠い」


「正直、毎朝毎朝漁師よろしく朝早く起きてテレビに出るアナウンサー達に敬服します」




 2人はスタジオの隅でそんな事を小声で話しながら番組の進行を眺めている。東京に来て深夜アニメを生で見て寝不足で若干不機嫌なジェーン・ザ・リッパーに無口無表情で感情も考えも読めないクアトロ・セブンを前にスタッフ達は非常に緊張した様子だった。


 一応、柳葉が付いて来ているがスタジオの隅で大口を開けて寝ており、代わりにザ・オールド・ワンが番組の打ち合わせをしている。




「この番組が終わったら次の番組に出なくちゃいけないってのがもうね」


「ええ、これも仕事ですからね」




 そして、スタッフがどうぞと案内すると同時に、メインアナウンサーがどうぞと2人に告げると、2人は照明に照らしだされたステージに上がる。クアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーはアナウンサー達と隣に立つ。


 2人の正面にはカメラが5台ほど並び、現在映像を写しているカメラのレンズの上にある赤いランプが灯っている。ジェーン・ザ・リッパーがそのカメラハローと右手を振る。カメラ脇にいるディレクターがカンペを持ち、クアトロ・セブンそのカンペをジッと見つめていた。




「今日は、魔法少女のクアトロ・セブンさんとジェーン・ザ・リッパーさんがスタジオに来て下さいました」


「おはようございます」


「どーも」




 2人はアナウンサーとカメラに向かって挨拶をする。


 カメラ脇のモニターには現在テレビで放映されている映像が映しだされており、ジェーン・ザ・リッパーとクアトロ・セブンの所に『乙種魔法少女“クアトロ・セブン”』と『甲種魔法少女“ジェーン・ザ・リッパー”』と出ていた。




「さて、本日はお二人にはクイズに参加して貰いますが、よろしいですか?」


「ええ、聞いています」


「問題ないよ」




 2人にマジックとフリップボードが出された。クイズと言っても今日は何の日?をヒントを回答するだけである。本日は8月18日である。


 クアトロ・セブンは問題が始まる前に既にフリップボードに『占守島の戦いが起こった日(赤軍の対日参戦決定)』と書く。




「あの、クアトロ・セブンさん?まだクイズは始まってませんが……」


「今日は何の日、実に簡単な回答です」




 クアトロ・セブンはそう告げるとフリップボードをアナウンサーに向ける。




「えっと、せ、センモリ島の戦い、と読むんですか?」


「いえ、占守シュムシュと読みます。


 ポツダム宣言受諾を表明し、占守島に居た日本軍が武装解除中に赤軍に襲われそのまま戦闘に移行した戦いですね」


「な、成る程。


 ですが、違います」




 取り敢えず、第一ヒントを見ましょうとアナウンサーが告げ、ドイツの映像が出た。クアトロ・セブンはフリップボード2つにそれぞれ何かを書き込む。


 1つは『パリ解放でゼネストが行われた日』もう1つは『ナチスドイツが国民ラジオ第一号を公開した日』と書いてある。他のアナウンサーたちもフリップボードにそれぞれ何かを書いている。




「クアトロ・セブンさんは二枚書いてますが、自信の程は?」


「ドイツですからね」




 私、不謹慎ですがナチスドイツは好きですよ、ええと告げそのフリップを2つ広げるとジェーン・ザ・リッパーにマニアック過ぎて正解かどうかすら分からないからと言われ、ジェーン・ザ・リッパーが此方でしょと『フリードリヒ・シュトロマイヤーが死んだ日』と書かれたフリップボードを出す。




「えっと、どういう方ですか?」


「カドミウムを発見した人らしいよ」


「へぇ~ですが、違います」


「じゃあ、こちらですね」




 クアトロ・セブンが『ヒルデガルト・ベーレンスが死んだ日』と書いて発表する。誰だそれは?と言う顔で全員がクアトロ・セブンを見る。クアトロ・セブンはテノール歌手の人ですと告げる。アナウンサーは違いますと答え、人ではありませんと更にヒントを言って他のアナウンサーの回答を表示される。ソーセージの日と書いたアナウンサーが笑いを誘ってから第二ヒントに移る。


 第二ヒントは鉄道だと出た所で、クアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーはやっぱり居の一番にフリップボードに書き込んだ。




「これはもう正解を貰いました」


「だね」




 アナウンサーがではどうぞと告げるの2人揃って『フランクフルト駅の開業』と書かれていた。アナウンサーが驚いた顔で正解ですと告げ、ジェーン・ザ・リッパーはカメラにウィンクをし、クアトロ・セブンは当然だという顔で頷いた。




「しかし、良く分かりましたね」


「ええ、勉強しましたから」


「Wikipediaを丸暗記したのよ」




 2人の言葉にアナウンサーが成る程と納得する同時に、それでも正解するとは凄いですねと告げ、番組の告知に入るので、2人はカンペをガン見して告知をする。


 そして、そのまま番組終わりまで番組に出た後、スタッフに先導される形で大急ぎで別スタジオで撮影されている今放送していた番組の後番組に向かう。




「キメラを殺してる方が楽ね」


「ええ、全く」




 2人はそのまま情報番組に出る。此方は8時から1時間半やる番組で番組の最初から最後まで出るのである。防衛省の肝入という事らしい。


 そして、2人は番組のオープニングにギリギリセーフで間に合った。お互いに司会をしている芸能人の隣に立っておはようございますと挨拶する。




「えー今日は特別ゲストの乙種魔法少女のクアトロ・セブンさんと甲種魔法少女ジェーン・ザ・リッパーさんです」


「クアトロ・セブンです」


「ジェーン・ザ・リッパーです」




 2人がカメラに向かって挨拶をする。




「では、まずはこちらから」




 画面が映像に代わり2人は司会達と一緒に席を移動する。コメンテーターとして呼ばれた有名な医者、教師、学者達の隣に座る。


 二人は座る前にコメンテーター達によろしくお願いしますと小声で挨拶してから椅子に座る。目の前にはアイスティーが置かれていた。


 2人は手元に置かれた小さいディスプレイで現在テレビに流れている映像を見る。今、巷で話題に上がっている連続快楽殺人犯が逮捕されそれについての犯人とその関係図を簡潔に解説していた。


 3分程の映像が終わり、スタジオに戻ると局アナが事件に付いての解説を始める。そして、司会の芸人がコメンテーター達に意見を求めるのだ。




「非常に残酷な事件ですよね。


 クアトロ・セブンさんはどう思いますか?」


「キメラにも劣るクズですね。


 キメラは本人達が望んで成っていないません。ですが、これは人間であるにも関わらず人を殺しているんですよね?」




 クアトロ・セブンの言葉に解説のアナウンサーがそうですと頷いた。クアトロ・セブンは人間の恥ですねと言い切り、口を閉じる。司会の芸人がジェーン・ザ・リッパーさんと意見を求める。




「私がキメラを切り刻むのは周知のことだろうけど、流石に人間とキメラを見分け分別はあるよ。


 正直、私は人殺しは死刑で良いと思うんだよね。まぁ、こう言うと『ならお前も死刑だ』って言う奴が居るけどさ」




 ジェーン・ザ・リッパーはキメラは人間じゃなくて元人間だからセーフと口元だけ笑って見せる。クアトロ・セブンは何も言わず無言で頷いた。


 その後コメンテーター達が概ね2人に同調する、殺人犯の身勝手さを強く非難する口調で言葉を進めていく。陰惨な事件の後はさっぱりとした全く別の季節のスイーツに話題が移る。


 東京で人気の冷たいスイーツの店が紹介され、それぞれの前には味の違うジェラートが置かれる。




「こう言う時に芸能人は良いと思いますね。


 私、そちらも食べたいです」


「全くだ。


 人気スイーツがただで食べられる。あーん」




 2人がお互いのジェラートを食べ、カメラがそれを抜く。




「お二人は甘いモノは好きですか?」


「ええ、大好きですよ。


 特にチョコレート関係が大好物です。次回呼ぶ時はバレンタインデー辺りにスイーツのゲストとして呼んで貰えれば参加しますよ」


「それはクアトロ・セブンのチョコレートを期待しても良いって事ですか?」




 司会の芸人がそう尋ねると、ファンに闇討ちされる覚悟があるのであれば作りますよ?とサラッと恐ろしい事を告げる。スタジオが湧き、それから1時間半の番組は恙無く進行し、終わった。これが終わった後は12時からの30分間放送する初代アナウンサーとの面談形式で行われる番組である。


 そして、それまでは2人は局内に用意された楽屋に入る。部屋には柳葉とザ・オールド・ワンに自衛隊、TV局のお偉いさんが揃っていた。




「おつかれ、まぁ、少々ヒヤヒヤしたがあんな感じで良いぞ」


「ネットでの評判も上々だね。


 早速抗議の電話があったけど、どれもこれもつまらないものばかりだったよ」




 机には大量の菓子とジュースが置かれていた。


 2人は疲れたと告げ、座っていると、部屋をノックされる。扉の近く似たスタッフが扉を開けると今朝のテレビの人気アナウンサーが入って来た。




「失礼します、アナウンサーの杓と申します」


「午後からインタビューがあるんだよ」




 ザ・オールド・ワンの言葉に2人は聞いてないぞと言う顔でザ・オールド・ワンを見るが今は打ち合わせお願いねと告げて去って行った。




「インタビューの打ち合わせって何ですかね?」


「そうですね。


 本番ではカメラを回すので、この質問だけはタブーと言うのがあれば」




 杓の言葉に2人は中の人の身バレするような事は基本的にNGですねと告げる。




「では、外的身体変形及び反社会性人格障害者を排除したり、そういう時の事を尋ねるのどうでしょうか?」


「構いませんよ。


 と、言うか、それの質問をNGだと質問する内容がなくなっちゃいますよね」




 ジェーン・ザ・リッパーがそう答えるとそうですねと杓が笑い、メモを取っていく。そして、30分程の軽い打ち合わせをしてからありがとうございましたと去って行く。


 そして、彼と変わるように別のスタッフがやって来て時間ですと告げる。クアトロ・セブンは行きますよとジュースの封を開けて飲もうとしているジェーン・ザ・リッパーの腕を引っ張って外に。ジェーン・ザ・リッパーはもう休みたいと言う顔だった。が、クアトロ・セブンは無視をする。


 代わりに小さく耳打ちする。




「明日、お前の好きな事に付き合うから頑張ってくれ」




 クアトロ・セブンの言葉にジェーン・ザ・リッパーはヤル気を出し歩き出す。


 スタッフの案内で着いた先は人気長寿番組哲子の部屋のスタジオだ。2人がスタジオに入ると拍手で迎えられる。これは朝の情報番組でもそうだった。そして、2人はソファーに座って台本なのかA4の紙を束ねた物を熱心に読んでいるその元祖アナウンサーの方へ。




「生哲子……」


「失礼ですよ」




 ジェーン・ザ・リッパーの感嘆にクアトロ・セブンがそう叱責し、お初にお目に掛かりますと挨拶をする。哲子はその特徴的な少し甲高い声で丁寧に2人にお辞儀をした。


 そして、2人が哲子に挨拶をしたところで、スタッフが撮影開始ししますと告げる。そして、テーマソングが流れ、スタッフ達が一斉に拍手。哲子が今日のゲストはと紹介をする。




「お二人は魔法少女で、このクアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーは正式名称では無いのですよね?」


「はい。私、クアトロ・セブンの正式な名称は乙種魔法少女第7777と申します。


 ジェーン・ザ・リッパーは甲種魔法少女第1530ですね」




 クアトロ・セブンの言葉にジェーン・ザ・リッパーも頷いた。哲子がその名前は誰が付けるのか?と尋ねると、クアトロ・セブンはネットの方達ですねと答え、哲子が驚いた。


 また、別に自身が名称が気に入らないと言う場合は魔法少女側が指名を出来ますと付け足し、哲子がそうなの!と更に驚いてた。




「じゃあ、貴女達の名前はそのネットの方達が決めたので?」


「私はそうですね。7が4つ揃って居たので」


「イタリアかスペインの方で四と言う意味でしたね」




 哲子の言葉にクアトロ・セブンが頷いた。それからジェーン・ザ・リッパーの元ネタはジャック・ザ・リッパーが元名なのか?と訪ねてジェーン・ザ・リッパーが頷いた。




「裁判に呼び出されると、位置位置この正式名称で呼ぶので後期の甲種魔法少女だと凄いですよ。


 私が今、教育係を任さている魔法少女に甲種魔法少女第101918と言う者が居るんですが、彼女もこの前裁判に出頭した時に毎回毎回甲種魔法少女第101918は~と言われてました」




 クアトロ・セブンの言葉に哲子が本当に?と尋ね、ジェーン・ザ・リッパーがそうそうと笑う。それから魔法少女が裁判に呼ばれた時に良くあるネタが披露される。




「裁判所って凄い重苦しい雰囲気でしょう?」


「ええ」


「そんな場所にこう言う格好で行くのですごく場違いな印象を受けるんですよ」


「あと、私達ってこうやって武器を出したり消せたり出来るので、殆どが証拠不十分に成るんですよね」




 ジェーン・ザ・リッパーの言葉に哲子が驚いた本当に?と驚いた顔をした。クアトロ・セブンもそうですねとそれに頷いた。




「乙種魔法少女は銃を使用しますが、この銃のライフリングは全て違うのですよ。


 なので、凶器は無しと成りますね」


「あの、当たり前のこと聞くんですが、甲乙丙っていうのはどうして決まるのですか?」




 哲子の言葉に簡単ですよジェーン・ザ・リッパーが告げる。




「私みたいに刀や斧、ナイフ、ダガーと言った近接武器は甲種。クアトロみたいに銃だと乙、それ以外の所謂魔法を使うなら丙種に区分されるんですよ。


 あと、私達は自衛隊でちゃんと訓練を受けてキメラと戦ってるけど、そうじゃない人達は番号も種類も無いですね」


「あら、そうなの?


 私、魔法少女って全員あの人達と戦うと思っていましたわ」




 哲子の言葉に2人はまさかと笑った。




「あの方達と戦う際は貴方方は怖くないので?」


「もう慣れましたよ」


「慣れましたね」




 2人の回答に哲子は慣れるのですかと驚く。




「ええ、多分、私達よりも私達よりも先にキメラを包囲している警察や自衛隊の方々の方がもっと怖い思いをしている思いますよ」


「成る程、確かにそうでしょうね」


「そういえば、貴女。随分と活躍しているそうね」


「ええ、まぁ、そうですね」




 クアトロ・セブンが頷くと、哲子は批判が多い中で目気ないので?と尋ねる。




「それはないですね。


 確かに、魔法少女が退役する8割が精神病です。命をかけて戦っているのに守っている人達からは非難され、じゃあ、何で私は戦っているのだろう?其処から段々と精神を病んでいくそうです」




 ですが、とクアトロ・セブンは告げる。手元に置かれたお茶を一口飲み、魅せるようにして溜める。実に役者であった。




二話連!続!



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