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第五十話

 名古屋城は1612年に徳川家康に寄って建てられた城である。日本の100名城に選ばれており、金鯱城とも呼ばれ天守閣には雄雌の鯱が乗っている。


 1945年の空襲で一度消失した後に名古屋城再建に際して製造した。




「日本の城はこうも背が高いが、攻められたら直ぐに落城しそうだね」




 パトリックの言葉に昇はそんなわけなかろうと本来があった城の外郭図を見せる。城の外堀は迷路状になっており、そこに辿り着くまでには幾重にも道を曲がる必要がある。そして、入り口は狭かったり、急に広い広場になっていたりする。狭い通路は部隊が陣を取れないほどの狭さであり左右から攻撃できるようになっていたり、広い広場は十字砲火で敵を殲滅するために作られている。


 昇の説明にパトリックとジェシカはその作りに驚いた様子だった。




「クアトロはなんちゃってミリオタだからね」


「ええ、なんちゃってミリオタですからね。


 最も、この城も西洋から伝わったより長距離高精度の大砲により江戸時代を最後に作られていませんがね」




 昇はそう告げると、中には入りますよと通訳とボディーガードを交えた6人は名古屋城に向かう。入場料は500円。


 6人はまず城の周りを廻る事にした。




「あら、彼処に鹿がいるわ!」




 ジェシカがお堀に居る鹿を指差した。




「……少なくなってる?」




 昇も堀を覗き込み、首を傾げていると名古屋城のおもてなし武将隊の1人がやって来る。




「名古屋城の鹿は病気や他の動物に襲われて少なくなってしもうたのだ」




 そして、武将の1人がそう答えると、ジェシカとパトリックはその格好に興奮した様子で通訳に何と言ったのか翻訳するよう告げる。通訳は武将の言葉を翻訳するとジェシカが可哀相よと告げ、パトリックが保護はしないのか?と尋ねた。


 武将は鹿は江戸時代よりずっとこの堀に住んでおり、彼等の家は此処だと答えた。




「それより、この鎧は何処で売っているんだい?


 とてもクールでナイスじゃないか!」




 パトリックが武将の鎧を指差すと、通訳が武将にその言葉を告げる。武将、織田信長はこれは自分の鎧であり他の者には譲れぬが、そういう店は探せば有ると告げる。すると、パトリックは昇を見て紹介してくれと告げるので、昇は携帯を使ってそういう店を探す。


 すると、確かにネット通販や一から作っている店と言うのがあり、また後で見ていこうと告げた。


 それから、織田信長が昇と仁がクアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーであることに気が付き、それを尋ねた。




「そちら、魔法少女のクアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーではないか?」


「如何にも。私、魔法少女のクアトロ・セブンです。こちらはジェーン・ザ・リッパー。


 現在、アメリカのセレブで日本に遊びに来ているパトリック・フレドリックとジェシカ・チェンバレンの為に名古屋城を案内しているのでございます」




 昇は既にお仕事モードに入っており、いつもの様に慇懃な態度で話を続けていく。お忍びに近いので余り声を大きくしないで欲しいと頼むと信長は分かっておると笑い、折角だから写真を撮っていってはどうだ?と告げた。


 そして、全員で信長と写真を撮り、信長がボランティアで名古屋城を案内している団体から1人案内係の老人を呼び案内してやって欲しいと告げ、去って行った。6人はガイドの案内で名古屋城を午前中一杯楽しむ事が出来たのだった。


 事件は6人が名古屋城を後にして昼食を取ろうかと言う時に起こった。場所は栄、地下街。




「ひったくり!」




 6人が休日で混雑する地下街を歩いているとそう声が聞こえてきた。そして、人垣を掻き分ける様にして1人の男が昇と仁の方に走ってくるではないか。男は左腕に女物のブランドバッグを抱えており、どうやら彼がひったくりらしい。




「退け!」


「お断りします」




 男は昇と仁が退かないと見るや懐から包丁を取り出す。それに合わせ、周囲の人々が悲鳴を上げて逃げ始めるた。ボディーガードのトニーは機敏な動きでパトリックとジェシカの前に出て、通訳は携帯を取り出して警察か柳葉に電話を掛ける。




「退けぇぇ!!」




 男は昇目掛けて包丁を振り回しながら突撃してくる。しかし、昇は右手にM1918“ブローニング・オートマチック・ライフル”自動小銃を出現させ、そのまま槍のように前方に突き出す。銃口は男のみぞおち辺りにクリーンヒットし、男はそのまま後ろに数歩よろめいて気絶してしまう。


 昇は男の脈と息を確かめ、生きていることを確かめてから脇に落ちた包丁とバッグを回収、取り敢えず、近くの店に警察に連絡するよう告げる。


 人垣から1人の女がやって来る。女は40代ぐらいの小金持ち風のおばさんであった。




「私のバッグ!」


「どうぞ」




 昇はバッグを差し出すと女はひったくるようにしてそれを回収し、バッグの中身よりも外側の傷を確かめ始める。


 そして、表面に傷を見付けると昇に詰め寄って此処に傷が付いているじゃないか!と騒ぎ出す。そして、昇を何処かで見たことあると言い出し、昇が魔法少女のクアトロ・セブンですと告げると更に騒ぎ出した。カバンの傷から人殺しだの何だのと騒ぎ出したのだ。


 この女が行き成り発狂し始めたのでパトリックとジェシカは一体どうしたのか?と通訳に尋ね、通訳は仁に尋ねる。仁は暫く考えてから口を開く。




「この人は反魔法少女派の人で更に言えば自分のバッグに傷が付いてるのを見てクアトロが傷を付けたと怒ってるのよ」




 仁の回答を聞いたジェシカとパトリックはおもいっきり顔を顰め、それから女に詰め寄ろうとしたので仁がそれを止める。


 それから、ニヤッと笑ってからビデオカメラを指差して、映像を撮ってるんだから、後でそこをクリップでYouTubeやフェイスブック、ツイッターに上げれば良いと告げた。これが現在の日本における魔法少女の実態だからねと告げるとパトリックが、まずは目の前の昇と女だと言う。ジェシカもそれに賛同する。


 だがね、と仁は言う。2人が介入すればよりややこしい事に成るので、君達は此処で見ているように、と。因みに、パトリック達の動画はハンディーカムを動かしすぎていてぶれぶれであるが、昇が直前に仁に渡したハンディーカムは仁が確りと撮影しており殆ど振れていないので、ネットに上がった動画はこちらになった。


 また、動画には全世界向けに仁監修の下で通訳に出来るだけ忠実に翻訳され、やっぱり各種報道番組に取り上げられた。


 その際にクアトロ・セブンがBARを取り出してド突いた事を問題視した連中もい始めたが、魔法少女は自衛隊で徒手格闘や武器に寄る、乙種なら銃剣道や小銃を使用した格闘術を教わる。更に言えば、安全性の面からもクアトロ・セブンの行動には何ら可笑しい事はないと防衛省が発表した。




「お疲れ様~」


「ええ、本当に」




 その後直ぐに警察が来て仁がハンディーカムの動画を警官に見せると昇は簡単な事情聴取をされただけで開放された。問題は被害者の女で警察に隔離されるまでクアトロ・セブンは人殺しだの何だのと騒ぎまくっており、遂には警察官数名で近くの駅の事務所に運ばれる始末だった。




「私が出ても良かったのに」


「貴女が出るとあの犯人の手足が無くなってる可能性がありますた故に」




 昇の言葉に仁は人間相手にはそんな酷いことはしないよ、せいぜい手足の一本が折れるかもしれないけどと笑った。


 気絶した男はその後目を覚まし、みぞおち辺りに円形の痣を残した。罪状は銃刀法違反と窃盗の罪で執行猶予付きの懲役刑に成るだろうとの事である。


 また、捕まった後は暴れることもなく警察の取り調べには素直に応じているそうだ。




「それで、昼ごはんはどうします?」


「日本料理が食べたい。


 白いヌードル、ウドゥン?あれを食べたいな」




 ウドゥン?と昇が首を傾げ、仁がうどんじゃね?と告げる。なら、適当な店に入ってうどんを食べようじゃないかと告げ、6人はデパチカの飲食店街に歩きだす。


 暫く歩いていると、うどんそば処と描かれた暖簾が掛かっている店があったので6人は其処に入った。パトリックとジェシカは『ザ・ニホン』と言う感じの店に満足した様子で店内をハンディーカムと自分の携帯におさめていく。


 そして、メニューを見てから全て日本語で書かれているのでこれは何だ?と言う質問タイムに成る。通訳は日本語が出来るカナダ人であり、日本人ではないので日本のメニューには疎いのである。




「たぬきうどんって狸が入っているの!?」


「違います。天カスが入ってます」


「狸は天ぷらが好きなの?」


「いいえ?」




 昇とジェシカのやり取りをパトリックと仁がきつねで同じ事をやっており、アメリカ人2人は勿論、ボディーガードのトニーと通訳すらも首を傾げていた。なので、昇が携帯を取り出してたぬきときつねの理由を説明した。


 たぬきとは狸ではなく、天ぷらのタネを抜いた、つまり天カスが入っているからタネ抜きうどん或いはそばが訛ってたぬきと成ったのではないか?と言う説を入れた。また、きつねに関しては油揚げあキツネの毛と同じ色、質感だったのでそう名付けられたと言う説を2人に告げる。




「へぇ、なら私はそのタヌキってやつにするわ」


「ではかけにしますか?冷にしますか?」




 掛けとは言ってしまえばラーメンのように温かいスープに麺が入っている物で、冷とは冷たいスープを後から掛ける物であると説明する。ジェシカは最近は蒸し暑いし冷の方で告げた。昇は分かりましたと頷き、自分も冷を頼む。


 パトリックはきつねうどんを頼み、仁はざるを頼んだ。トニーと通訳はそれぞれかけ蕎麦のとろろを頼んだ。暫くしてから料理が届く。




「……素直にフォークで食べては?」




 うどんを食べ始めたジェシカを見ながら昇は告げた。ジェシカの箸の握り方は幼稚園児レベルの握り方で逆に食べ難いのではないか?と思うほどだ。




「うどんは箸で食べるんでしょ?


 それに、箸は使えるわ」




 ジェシカが箸を交差させて動かしてみせる。食べ方は丼に顔をかなり近づけて箸で上に上げるという食べ方だ。うどんが啜れないのであるからしょうが無い。しかし、箸で麺を掴むのも難しそうで、何度か麺を溢している。


 昇はう~むと唸り、如何ともし難いと言う顔で顔を近付けて食べている。食べ辛いのなら素直にフォークを使う方がよいと昇は思うのだが、本人がそれで納得しているのならそれで良いかと昇は冷うどんを啜りだす。


 ズルズルと食べているとジェシカが昇に話しかけてくる。




「何で日本人は皆そうやって麺を食べるわけ?」


「理由としては空気を一緒に食べることでその食材の香りと味を楽しむ事、次に熱い物を食べた際に外の冷たい空気を一緒に吸い込み冷ます為ですね。


 今回は前者の理由が大きいです。日本人としては貴女達外国人の食べ方は非常に不味そうに見えます」




 昇の言葉にジェシカはフムと考え、啜り方を教えなさいよと言い出した。これに困ったのは昇だ。箸の持ち方は教えられるが啜り方は教えられない。と、言うよりも教え方を知らないのだ。なので、昇は啜り方なんか知らんと告げ、息を口で吸うようにして麺を啜るんだ言う。


 ジェシカは麺を啜ってみるとそのまま咽た。




「難しいわよ!?」


「空気と一緒に麺を飲み込めばそれは器官には入ります。


 口の中で止めておきなさい。ストローでジュース飲むのと一緒です」




 昇の言葉にジェシカがわかったような分からんような顔で頷き次は恐る恐ると言う感じで啜る。上手に出来たようで何やら満足気にドヤ顔を昇に向ける。昇はウムと頷き、序に箸の使い方も教えてやる。と箸の使い方を教え始めた。


 箸講座はその場に居た外人4名全員が強制参加せられた。曰く、見苦しい、と。それから箸の使い方をある程度マスターしたジェシカとパトリックに満足した昇は2人に箸を買ってやろうと上から目線で次の目的地をデパート巡りにしてしまった。最もジェシカもパトリックも反対しなかったので6人は食事を終えてデパートを巡りをした。




名古屋城の鹿って戦時中は何処に居たんですかね?


戦時中に野犬に襲われて数が減ったという所と、全滅したという所もあり、以外に詳しいこと知られてないっぽい?


因みに、堀にいるのは親子の鹿なので、全滅必須で、名古屋市は動物園等から新しく鹿を呼ぶ計画してるらしいですが、どーなってんでしょうね?

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