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第四十九話

 昇と仁がパトリックとジェシカの泊まっているマリオットアソシアホテルに向かうと大勢の報道陣がホテルに押しかけていた。




「何だこれ?」


「僕が知るか。駐車場に行くぞ」




 昇の言葉に仁は頷いてG63AMG6x6を駐車場に回した。マリオットアソシアホテルはタワーズ駐車場と呼ばれるツインタワーにある駐車場に停める。其処から連絡通路やらを使って駐車場とホテルや高島屋等が入った商業フロアと行き来出来るのである。


 駐車場に馬鹿でかいG63AMG6x6を停めた2人はそのままホテルに移動する。昇が携帯を取り出して時刻を確認すると9時50分だった。そして、そのまま柳葉に連絡を入れるために電話を掛けるとワンコールで出た。




「丁度良い。今、何処に居る?」


「タワーズ駐車場ですが?」


「そうか、お前等格好は?」


「クアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーに私服を着てます」


「なら変身を解け」




 柳葉の言葉に昇は何故だ?と尋ねた。すると柳葉はお前等はテレビを見ていないのか?と呆れた様子で返答が来る。昇は仁を見ると、仁はパッドを昇に向ける。パッドには『海外セレブのジェシカ・チェンバレンさんとパトリック・フレドリックさんの両名が極秘来日!?』と見出しのヤフーニュースが一面に載っている。


 また、別の情報サイトでは『ジェシカの憂鬱(原題:MAGICA)の新シリーズを日本で撮影か?』として情報が露呈しているようだった。また、それに関連して昨晩、パトリックが投稿したフェイスブックとツイッターの記事である番組とそこに出演したコメンテーターへの痛烈な批判も取り上げられていた。




「何やってんだあの外人……」


「そういう訳だから、今、お前達がその格好で現れるとかなり不味いことになる」


「了解」




 2人は一旦G63AMG6x6の後部座席に戻り着ている服を全て脱いでから変身を解く。理由としては魔法少女が変身する際に着ている衣装は魔法少女の力に寄って構成されている、つまりはクアトロ・セブンのBARやジェーン・ザ・リッパーの刀と一緒で変身を解けば消えてしまうが、現在着ている服は仁がインターネットを介して購入した物であり、魔法少女の力で出現させた物ではない。故に、その衣装を着たまま変身を解くと衣装はそのままに体だけ元に戻り、更には今まで着ていた服の上に着ることに成ってしまう。


 昇は何時もどおりのカーゴパンツにTシャツ、半袖のシャツを羽織っている地味な見た目に戻る。仁は相変わらずのジャージであったが、逆に目立つということでジェーン・ザ・リッパーが着ている服を着ることにした。


 昇はクアトロ・セブンの服を仁のジャージに包みそのままホテルの最上階、スイートルームに泊まるジェシカとパトリックの部屋に向かう。




「大変なことに成ってるな」


「ああ」




 エレベーター内部、昇は胸の前に抱えた仁のジャージに少しばかり顔を埋める。色は薄紫だった。其処から仁の匂いがするのだ。




「な、何してるん?」


「これからパトリックに会うからな」




 昇の返答に仁は思わず笑い、それから昇の顔を取ってディープキスをする。




「嫉妬深いノボル君が、私は嬉しいよ」




 そして、チーンと少しばかり上品なベルの音をさせてエレベーターの扉が開く。2人は廊下に出ると二人の部屋だと思われる扉の前にはスーツを着た男が2人立っている。そして、昇達を確認すると、1人が袖を掴んで口元に。SPだろう。


 公安関係だろうか?昇はそう考えてから、一瞬だけクアトロ・セブンに変身する。すると、スーツの男達は背筋を伸ばして敬礼するので昇と仁は2人に頭を下げる。SPの1人がカードを持っており、扉を開けた。中に入ると柳葉が立っている。




「それで、どうしたんですか?」


「うむ。


 面倒事が2つ有る。1つは新シリーズ撮影の話がバレた。まぁ、これは予定より早いだけであって然程問題ない。問題はパトリックの投稿した記事についてだ」




 柳葉が携帯を取り出してパトリックが投稿した記事を翻訳したまとめサイトを見せる。全文を翻訳してあった。昇がそれを読み、記事の内容はぶっちゃけ何処にでも有るような魔法少女擁護派が唱えるような内容であり、ここまで大騒ぎする程の内容でもない。


 仁もそれは思ったようで良くある内容だと頷いている。




「問題はパトリックが言ったという事だな」


「でしょうね」


「それで、何が問題なので?」


「うん、問題は熱狂的なファンだ。


 外にいるマスコミの8割は前者の取材で来た連中だ。他にも熱狂的なファンも既にいる」




 柳葉があとは分かるだろう?と告げると2人はOKと頷いた。




「取り敢えず、今日の予定は?」


「名古屋城を見に行きたいそうだ」




 柳葉が窓から外を見て見やる。其処には名古屋城が見える。名古屋城、地元に住む人間からは名城、金鯱城とも呼ばれ、1945年の5月14日に起きた米軍に寄る都市部に行われた無差別爆撃のせいで焼失したが戦後1959年に再建され今の城になっている。




「名古屋城、小学生の頃に行ったな。


 彼処には第3師団の師団司令部と関連する連隊の司令部が置かれた場所だ」




 昇が城を見ながらそう告げてから、パトリックとジェシカを見る。




「今日は名古屋城に行くのか?」




 昇の言葉を通訳が翻訳すると、パトリックがそうだと頷いた。日本の城を見てみたいとか。




「それで、君はえっと、誰だい?」




 パトリックが困ったように笑いながらそう尋ねるので、昇はそれへの返答を変身で示すと、ジェシカが英語で何かをつぶやく。通訳が変身前も後も一緒だと言っていると告げる。昇はそれに対して猫かぶりのお前よりはマシだと告げる。


 通訳は訳さないので、ジェシカが何か通訳に言うと通訳がそれに告げる。ジェシカは通訳の言葉に対して怒った様子で立ち上がるが、パトリックがまぁまぁと間に割って入る。




「しかし、お前達の居場所が分かったとなると色々と不便そうだな。


 この夏の半分は此方に居るんだろう?」




 昇はそう告げるとパトリックがそうだねと答えた。




「マスコミは言えば帰るが、ファンはそうもいかん。


 ホテル側は絶対に追い返さないし、外出るに出れんぞ」




 昇はそのままホテルの下を覗き、まぁ、僕には関係無いことだがねと更に余分な言葉を付け加える。




「脅せば帰る」




 柳葉がそう告げると全員がお前は何を言っているんだ?と言う顔で柳葉に視線を向けた。柳葉は別にヤクザを呼ぶわけじゃない。クアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーが出て行って、淡々と人口密集によるキメラ発生説を説けば良いと告げた。


 人口密集に寄るキメラ発生説とは、言ってしまえば人が集まれば集まるほどキメラが発生しやすくなると言うマクロ視点での極論である。穴が多い理論であるが、都市部でのキメラ発生率と田舎でのキメラ発生率の因果関係を見ると一番最初に目が行くのが人口の違いである。そして、其処から人口密度の観点で見ると、100人あたりではどう考えても都市部の方が高いという一般人を騙すには十分な説得力が有る説であり、今でも一部マスコミではその説を流すこともある。


 実際は人間関係による心情的マイナス、つまりは鬱状態かどうかでありライブなどどちらかと言えば躁状態に振り切れている場合は反対に魔法少女が生まれやすいが、これに関しては伏せられている。




「成る程、僕達が飽く迄もマスコミが言っていることであるがと言う口上を述べてから告げる事で余分なファンを追っ払える訳か」




 昇はクアトロ・セブンの格好のままBARを取り出し、肩に担ぐ。




「良いでしょう、あのまま付いて来られても鬱陶しいです。


 追い払ってきましょう」


「イイねぇ、で、キメラが出たらそのまま斬り殺しちゃえば言い訳だし?」




 仁もジェーン・ザ・リッパーに変身すると刀を確かめて、クアトロ・セブンと並んで部屋から外に出る。廊下にはやはりSPが立っており、2人を見ると、驚いた顔をしていた。キメラですか?と尋ねるので違いますよとクアトロ・セブンは言っておく。


 2人はまずエレベーターホールで防衛省と学者が発表しているキメラの発生件数、名古屋市の人口密度、名古屋市におけるキメラに寄る死傷数のデータを10分程掛けて纏める。


 ある程度のデータが揃ってから2人はエレベーターに乗り込む。クアトロ・セブンは弾倉を空砲が詰まった物に替えて装弾する。ホテルロビーにはマスコミとファンで溢れかえっており、マスコミが2人を見つけるとこぞって駆け寄り、一斉にマイクを向けて質問を浴びせる。それに合わせてクアトロ・セブンがトリガーを引きっぱなしで空砲をぶっ放す。


 その場に居た全員が慌てて耳を抑え、クアトロ・セブンから離れフロア中の全員がクアトロ・セブンを注視した。




「お騒がせして申し訳ございません。


 常識を弁えない輩が大勢居りました故に少々乱暴な手段を使いました事を謝罪致します」




 クアトロ・セブンはそうホテルの従業員やホテルの利用客達に深々と頭を下げた。そして、マスコミ達は勿論、ファン達にも外に出るよう告げる。文句を言おうとしたファンには容赦無く空砲で威嚇する。




「私、本当はこんな乱暴な手は使いたくないのです。ですが、厚顔無恥にも利用すらしないホテルに押し掛け、更には入り口やフロアを占拠してマリオットアソシアホテルや利用客に迷惑しか掛けていない貴方方を見るに見かねて可及的速やかに排除する方法はこの方法しかないと考え付いたのでこの様にしております。


 現在、私は空砲を撃っていますが、担当官からはゴム弾の使用も許可されております」




 クアトロ・セブンはそう告げると、再度弾倉を変える。そして、ゴム弾を使用した場合は実弾で撃たれたほうがマシと言うレベルの激痛が走るらしいと告げてから槓杆を引っ張り威圧した。


 その場に居た全員がクアトロ・セブンの言葉に戦慄を覚え外に出る。ホテルの従業員に対して申し訳ないが薬莢の掃除を頼むと告げてから外に出る。




「さて、貴方方マスコミはアポイントメントを取るという社会人としての常識が欠如して居るのは薄々感じては居ましたが、此処まで酷いと終いには裁判所に行く羽目に成りますよ?


 報道の自由と言う言葉を貴方方はよく使いますが、自由とは規律の上に成り立っている事を自覚なさい。貴方方の行いは“自由”ではなく“無法”です」




 クアトロ・セブンは反論しようとしたマスコミの言葉に銃声を被せ黙らせると、人が喋っている時は最後まで聞くと言うのを小学校で習いませんでしたか?と告げる。


 そして、マスコミを沈黙させた後はファンに向き直った。




「さて、ジェシカの憂鬱と関連して私がキメラの発生件数と人口密度の関連について話して差し上げましょう」




 クアトロ・セブンはそう告げると名古屋市におけるキメラの年間発生件数と地区ごとの分布を事細かに話していく。データに関してはジェーン・ザ・リッパーが手に持ったパッドをクアトロ・セブンに渡してからクアトロ・セブンがそれを使って淡々と語って行く。


 また、キメラが発生し、警官が着くまでの時間、警官が包囲を完了するまでの時間、自衛隊が到着するまでの時間、魔法少女が着くまでの時間、キメラが完全沈黙するまでの時間をキメラの種類毎に連々と並べ立て、それまでに出る平均犠牲者数を述べていく。


 話は大体30分程続き、その場に居た全員や興味を持って現れたホテルの利用客達はクアトロ・セブンの言葉にただただ戦慄し、恐怖を覚える。




「以上を持ちまして、キメラの発生件数と人口密度に付いての具体的な事例を交えての話を終えたいと思いますが、何か質問の有る方は?」




 クアトロ・セブンの言葉に一人のアナウンサーが手を上げた。




「どうぞ」


「ジェシカの憂鬱では実際の外的身体変形及び反社会性人格障害者を使用して撮影していますが、日本ではどうなのでしょうか?」


「貴方は数学の授業中、古文の未然形の種類を聞くのですか?


 まぁ、良いでしょう。貴方方に常識を求める方が間違っていましたね。私が聞いた限りでは本物のキメラは使用しないそうです」




 他にと告げると別のアナウンサーが貴女は少し無礼過ぎないかと言う言葉が上がる。それに対してクアトロ・セブンは驚いた顔をしてからクスクス笑う。ジェーン・ザ・リッパーもそれを鼻で笑った。質問をしたアナウンサーは無礼だと告げるのでクアトロ・セブンは素直に謝罪を口にした。




「申し訳御座いません。


 私が無礼であるなら、貴方方は何なのでしょうか?


 貴方方を前に、私如きは足元にも及びません。最も、私は貴方方を反面教師にこれからの生活を改善していきたいと思います。


 ご指摘ありがとうございます」




 クアトロ・セブンが慇懃に頭を下げるとジェーン・ザ・リッパーはこれは堪らんと腹を抱えて大笑いし始める。


 アナウンサーは無礼だと叫び去って行くの景気にクアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーは全員帰れと告げ、これ以上いる場合は本当に警察が出てくる羽目になるぞとホテルの前に駆けつけた数人の警官達を指差した。


 マスコミとファン達はそのままスゴスゴと去って行ったのを確認して2人はホテルに戻り支配人に謝罪をし、後日正式に魔法少女協会と防衛省からの謝罪と賠償をすると告げてから部屋に戻った。



怒涛の前世最後まで最終投稿

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