第四十八話
それから真達は5人で愛知県長久手市にあるトヨタ博物館に行く事になった。何でも父親の会社の付き合いで券を4枚貰ったそうだから、せっかくだからダブルデートという形で行こうと持ったらしい。
パトリック分の金は昇が立て替えて後で請求すると言う事で話は済んだのだが、車内での空気は非常に悪い。
現在G63AMG6x6のハンドルを握っているのは昇であり、仁とパトリックは後部座席で真と慶太郎を交えて談笑している。最も、楽しく話しているつもりなのはパトリックであり、仁と真、慶太郎は昇から発せられる不穏な空気に背中に冷や汗を掻いているのだ。
昇がイライラしている理由が誰もわからないし、普段怒らない昇がああもイライラしている事自体初めてなので、全員がどう対処して良いのか分からないのである。パトリックはこれから行くトヨタ博物館とその更に行った場所にモリコロパークに付いて話をしている。
真と慶太郎が隣同士に座り、座席シートを前後回転できるようにしてあり後ろを向けて、パトリックと仁が座って、パトリックの言葉を仁が通訳していた。道中、昇は一切会話に入らず、ズッとハンドルを握りっぱなしである。
「駐車場は無料。入場料は大人千円ですか。
パトリックは大人でよろしいので?」
昇がパトリックを見るとそうだねと頷いた。昇が券売機で券を買い、中に入る。
入り口で昇が自分の身分を明かし、それから此処でビデオを回して良いか?また、このビデオを後日DVD、BDを出す際の特典映像として付ける可能性があるが宜しいか?と尋ねると、受付嬢が少し驚いた顔をしてから少々お待ちくださいと告げ、何処かに電話を掛けた。
しばらくするとスーツを着た中年男性達がやって来る。何でもここの館長と広報部の人間に学芸員らしい。そして、今日はようこそと挨拶をしてから撮影を許可し更には案内もしてくれるとのことだ。そして、出来れば宣伝もして欲しいとか。
昇はありがとうございますと礼を告げ、真と慶太郎は何かラッキーと喜んでいた。
「それじゃあ、行きましょうか」
それからちょっとした人数で館内を巡る。昇とパトリックがカメラを回しながら学芸員の解説を聞いていく。トヨタ博物館には120台以上の自動車を保有し、それの殆どが動態保存されているとの事である。
「凄い!流石日本人の博物館だ!世界のトヨタだ!」
パトリックは磨き上げられて保存されている1階に置かれているトヨタAA型を前に興奮した様子で告げる。
「こちらは復刻版ですが、当時と出来る限り同じ内装、製法で作った物です」
学芸員が告げると、パトリックは仁と昇を呼んで学芸員に自分の携帯を渡す。それが終わると、真と慶太郎の2人と写真を撮った。そして最後に5人で一緒に撮影をする。
「これって買えるので?」
仁が興味をもった様子で学芸員に尋ねる。
「流石にこちらはお譲りは出来ませんが、限定復刻版100台を保有している人からお譲り頂くと言う事になります」
「因みに、幾らですかね?」
学芸員はえっとと告げて広報部の男が直ぐに資料を取り出してから二百万ちょっとですと告げると、仁はかなり安いと驚いた様子だ。学芸員達が驚いた顔をしたので、昇が「彼女は大金持ちですから」と断りを入れた。
それから順番に3時間程掛けて館内を巡った。学芸員達による詳細な解説が付くことで自動車に興味のない真や慶太郎は非常に楽しめていた。ただし、昇は違う。昇はズッとパトリックと通訳をしている仁を見ておりその表情は変わらなかったが、発せられる雰囲気は戦場を経験した物にしか分からない綿密に練られた殺気に近い気が出ているのだ。
見学を終えてから、買い物コーナーで一旦休憩と言う段になり、真と慶太郎は愈々只事じゃない昇について密かに話していた。
「何か、深見先輩滅茶苦茶怒ってるよね?」
「う、うん。何かパックと仁さんズッと睨んでるよね?」
「多分だけど、仁さんが通訳するもんで自然とパックの近くになるから嫉妬してるんだと思うんだよね」
真の言葉に慶太郎が昇が流石にその程度の事で怒らないでしょうと笑う。真は絶対そうよ!と告げると昇の襟首を掴んでそのまま隅に。
「行き成りなんだ」
「昇は仁さんがパックの隣にズッと居るのが気に入らないんでしょ?」
真がそう尋ねると、昇は少し驚いた様子を見せそれからそうだと素直に頷いた。
「勿論、仁がこの程度であの外人に靡くとは思っていないが、気に入らん物は気に入らん。
そして、その程度でこんなにヤキモキしている自分が更に気に入らん」
昇の言葉に真と慶太郎は何と言っていいのか分からんが、取り敢えず馬鹿だコイツはと思う。勿論、それを言っても仕方無いので、取り敢えず昇の不機嫌の理由が分かったし良いかと放っておく事にした。仁には後で事情を話すとして、これはこれで面白いので暫く黙っておいても良かろうと案外畜生な事を考える真であったが、慶太郎がそれを見透かして止めてあげて下さいと告げ、伝えに行きなさいよと言った。
そして、真に仁を連れて連れションに行って来いと告げ、真はハイハイと仁に一緒にトイレに行こうと耳打ちして釣れ出した。
さて、その場に残されたパトリックと昇、慶太郎は男子3人でトヨタ2000GTのミニカーを前にして買うか買わないかを模索している。10分程悩んだ後、慶太郎は値段がそもそも手を出せる額ではないとして諦める。
パトリックと昇はお互いに視線を交え、それからパトリックがゆっくり、はっきりと正しい文法と単語で君はこれを買うかい?と尋ねた。昇は暫く考え、それからYesと答えるとそれを4つ手に取るとレジに向かい、現金で払う。そして、それぞれを贈呈用に梱包してからフレンド、ユー、プレゼントと告げて差し出す。
単語だけであったが、パトリックは大喜びでThank Youと告げ、握手と熱いハグをした。慶太郎はそのシーンを昇に渡されたカメラで録画している。そして、昇はノープロブレムと告げ、残りの一個を慶太郎に渡す。
「お前にもやろう。
今日の例だ」
「いや、俺じゃなくて真のお父さんですよ先輩」
「構わん。
今日の事を黙っていろという賄賂でもある」
昇の言葉に慶太郎はそういう事にしておきますと笑うと丁度2人がトイレから帰って来た。そして、それにあわせて館長が館内レストランで食事の用意が出来たので是非にと告げる。5人はそのままレストランで博物館カレーを食べた。これに関してはレトルト版も売っており、帰り際に博物館側が5人にボールペンや定規、シールと一緒にくれたのだった。
帰りの道中、ハンドルは昇が握り、仁は助手席に、後部座席ではハシャギ疲れてうとうとしている3人が座っている。
「真さんから聞いたよ」
「そうか」
2人はそれだけ交わし、後は無言で真と慶太郎を真の自宅まで送り、パトリックをホテルまで送った。今日は飛行機での疲れも有るだろうからまた明日の10時位に来ると告げてパトリックと別れる。そして、そのまま仁のマンションに向かった。
柳葉には今日のところはこれで終いだと連絡を入れて2人は変身を解いた。
「何か、今日はごめんなさい」
仁は部屋に入ると昇にそう告げた。昇は仁に振り替えるとそのまま仁を抱き締めそれからお前のせいではないと告げる。
それから回転ベッドに座り今日の話をしようと言い出した。
「僕はどうやらお前を信用しきれていないようだ。
申し訳ないが、僕はまだまだ子供なようだな。悪いが、暫くはお前の家に泊まり込み、お前の傍に居たい。具体的に言えば、ドラマの撮影が終わりパトリックが帰るまでだ」
「おほ?
君のような子供は居ないよ。子供が子供だと自覚した時、それは既に大人なんだよ、昇君。さぁ、セックスをしよう。私は君に全てを尽くす忠実なる雌犬さ。
君が満足するまで、私は君に付き合おう。その苛立ちを私にぶつけて。私に吐き出して?」
昇は桜に暫くは仁の家に泊まりこむとメールを打ち、携帯を切ると仁を押し倒した。
◇◆◇
パトリックは部屋で昇、クアトロ・セブンから友好の証として受け取ったトヨタ2000GTとトヨタ博物館のおみやげを広げ写真を撮ると、彼とクアトロ・セブン、ジェーン・ザ・リッパーと共にトヨタAA型の前で撮った写真をフェイスブックとツイッターで公開する。
題名には『日本の魔法少女達と会ったよ』と言う題名だ。ドラマに関する情報は殆ど載せていない代わりに、トヨタ博物館に付いて色々と書き込んで公開したのだ。その反響は大きく、自動車マニア達からのアクセスもあった。
パトリックが嬉しそうに2000GTを眺めているとジェシカが部屋に入ってくる。バスローブを着ておりリラックスした様子だ。
「何その玩具?」
「クアトロ・セブンから友好の証だって貰ったんだよ」
「クアトロ?ああ、あのビスクドールね。何考えてるのかさっぱり分かららない」
ジェシカが嫌悪するように告げると、パトリックは苦笑してクアトロ・セブンのフォローをする。
「彼女は感情表現が苦手なんだよ、きっと」
「違うわよ。彼奴、たった3年でもう1000体近いキメラを殺してるのよ?
殺し屋よ。殺し屋は皆ああ言う風に無愛想なのよ。映画でやってたもの」
ジェシカがヒットマンを持ちだして告げると、パトリックは彼にも感情はあったし、彼女もそうだよと告げる。それに、彼女達は殺し屋じゃないよ。日本におけるスーパーマンさと訂正するとジェシカは面白くなさそうに部屋を去って行く。
それに変わるようにしてボディーガードのトニーが入ってくる。明日の予定を聞きに来たのだ。パトリックの部屋から外に出たジェシカはリビングに置いてある大きな40インチテレビを付ける。テレビには朝に起きた空港でのキメラ事件に付いて報道している。ジェシカは日本語が分からぬので画面に流れているテロップは勿論アナウンサーの話す言葉も理解できていない。しかし、映像だけで何をやっているのかは大体分かる。
怪我人にインタビューをしているようで、ジェーン・ザ・リッパーが担いで避難させた老夫婦が何やらマイクの前で話していた。
「翻訳しましょうか?」
其処に通訳がやって来て告げる。ジェシカはそうねと告げると通訳が老夫婦の言葉とテロップを翻訳した。
テロップには『セントレアで外的身体変形及び反社会性人格障害者が暴れ負傷者多数』と書かれている。老夫婦は派遣されたアナウンサーの言葉にあの2人に命を助けて貰った。キメラは怖かった。と言っていた。多分、もっと何か言っていたのだろうがその所はカットされ、その場に居合わせた一般人が2人の戦闘をカメラに望遠で収めていたらしく、視聴者撮影と隅に書かれた映像が流れる。
クアトロ・セブンが腰を落とし手を組むと、ジェーン・ザ・リッパーがその手に足をかけ上に飛んで行く。そして、クアトロ・セブンはハンディーカムとM870を持ったパトリックと共にジェーン・ザ・リッパーが飛んでいった方に走って行く。映像は其処から少し2人を追い掛け他あたりで急にモザイクが入り、銃声が聞こえた。
隅には番組で画像を一部加工していますと表示されている。
映像の後にスタジオに移り、テロップが『近年増加する外的身体変形及び反社会性人格障害者による死傷事件について』と変わった。其処に丁度パトリックがハンディーカムを片手に戻って来る。
「やぁ、ジェシカ。何を見てるんだい?」
「昼間の空港での事件が報道されてたわ。貴方も映ってたわよ」
「ああ、ジェーンとクアトロがあっという間に片付けてしまった事件だね。
それで何て言われていたんだい?」
パトリックの言葉にジェシカが今やってるわと告げる。通訳は2人のために現在コメンテーターの言葉の訳し始めた。コメンテーターは反魔法少女派でキメラ擁護派と知られるために開口一番ジェーン・ザ・リッパーとクアトロ・セブンを避難し始める。
まず、あんな人混みが多い中で行き成りあんな方法で人垣を超えるとは何事か。もし、途中で失速して人にあたったらどうするのか?また、空港の上から下がっている看板や掲示板にあたってそれが落下したらどうするのか?
次に移動している際に銃を持っているが、何時でも武器の出納は出来るのだから外的身体変形及び反社会性人格障害者を撃つ直前に出せば良いじゃないかと批判と言うよりも重箱の隅を突付くような欠点しか言わない。
流石のジェシカもこの理不尽なまでの物言いに不快感を露わにし、2人の親友と言って憚らないパトリックに至っては怒りを露わにしてこのテレビ局に電話を掛けると言い出した。
「このコメンテーターは馬鹿なのか?
キメラは一般人を殺そうとしている。話し合いが出来るような存在じゃないのを知らないのか?」
パトリックは通訳に電話を掛けさせ、番組でコメンテーターの言った事を今直ぐに訂正し、謝罪するようにと告げる。また、同時にツイッターとフェイスブックでコメンテーターの発言とジェーン・ザ・リッパーにクアトロ・セブンの活躍を交えて、この国の魔法少女達は余りに可哀想な境遇だと送信する。
確かに、アメリカでも魔法少女は褒められることは少ない。しかし、決して貶される事は無い。アメリカにおいてキメラとは絶対的な悪であり、彼、或いは彼女等を問答無用で襲い殺しに来る存在なのだ。そんな存在を取り払う魔法少女は彼等の味方であり、黒人が警官に射殺された事でデモが起きるアメリカにおいても黒人がキメラに成りそれを殺した警官が責められるどころか親族に、息子、或いは娘を大量殺人犯にしないでくれてありがとうと感謝をされることも有るほどである。
勿論、価値観の違いと言ってしまえばそうであるのだが、それでも自分の害になるであろう存在を取り払ってくれる存在をテレビのような公の機関で貶すコメンテーターの神経は有り得ない。パトリックは珍しくそして、本当に怒った様子でその事を書き込んだ。
ジェシカはそんなパトリックを見て、あのビスクドールことクアトロ・セブンが益々気に入らなかった。
ウィーフレでクラン員の人達と初めてレイド行ったんですけどね
1回目、回線落ちで再合流出来ず報酬無し
2回目、回線落ちで再合流出来たけど、3ステはほぼ何もせずに終了
コンテンツ内容増やす前にサーバー強化しましょうよ!ねぇ!!
読み込みの度に回線落ちはレベル80のマニアック3体に追われる以上の恐怖でした




