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流星の山田君 ―PRINCE OF SHOOTING STAR―  作者: 神埼 黒音
一章 流星の王子様
1/23

目覚め

 ――最優先保護対象、ヒトを発見。

 ――生命反応微弱。ナノマシン注入。

 ――古代の病魔、パターン345632B5を発見。駆逐完了。

 ――ナノマシン、排出。



 一郎の意識に、そんな機械的が声が混じる。

 まだ頭はボーッとしたままであり、眠気と現実が入り混じっていた。



(あれから、どれくらいの月日が経ったんだろうな……)



 ――およそ5億7000万年が経過。



(ははっ、そりゃ良いや。地球もさぞかし、発展したんだろうな)



 たゆたう夢の中で、一郎が微かに笑う。

 それぐらいの年月が経っていれば、医学も発達しているだろうと。

 流石に5億うんぬんは言いすぎだろうとは思ったが、次の声は更に現実離れしたものであった。



 ――地球は既に壊滅。現在は別惑星745RTに存在。


(そうかい。なら、生まれ変わったら病気とは無縁の存在になりたいもんだ)


 ――了承。あらゆる病魔を駆逐する強靭な肉体を構築します。

 能力「健康体Ⅴ」を付与。能力「ALL777」を付与。


(ついでに、来世では超絶なイケメンになりたいんだが……)


 ――了承。異性を虜にする能力を付与します。

 能力「流星の王子様Ⅴ」を付与。



 次々と願いを叶える声に、脳内で一郎が吹き出す。

 何でもかんでも肯定してくれる奇妙な声に、調子に乗って更にあつかましい願いをぶつけてみる。



(後は出来れば、石油王の家に生まれたいな)


 ――了承。金満家と判断。全通貨を付与します。


(他にも空が飛べたりとか、魔法が使えたりとか)


 ――了承。現惑星における、全魔術回路を付与します。


(屈強な部下やら、頭が良い部下が居て、面倒な事をやってくれたり……)


 ――了承。「魔神召喚Ⅴ」を付与。


(……えっと、たまには断ってもええんやで?)


 ――ヒトの保護、願いは最優先事項です。



 夢とはいえ、流石に気が引けてきたのか、一郎が遠慮がちに思うも、返ってきた返答は実に頼もしい内容であった。

 むしろ、怖さしか感じない。



(君、ウチのオカンより優しいよな……これが噂のバブみか)


 ――当知能は母親には該当しません。


(オカンって呼んでいい?)


 ――拒否。



 一郎が夢の中(?)で遊んでいる間も、どんどんと時間は過ぎていく。

 それから、どれくらいの長い年月が過ぎたのか――

 最早、万能の願望器に近いと言えるAIすら寿命を迎えた時、一郎の意識がようやく目覚めた。


 重い蓋を開けてみると、目の前に広がるのは一面の残骸。

 ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、まるでスクラップの山であった。



「何だここ……くさっ! もう一回、くさっ!」



 後に、流星の王子様と謳われる華麗な存在が放った、運命の第一声である。

 よもや、このふざけた男が不世出の大英雄と呼ばれ、遥か遠い「地上」に到達するなど、神ですら予想出来なかったに違いない。



「くさっっ!」



 まだ言っていた。





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