夢で見るあなた
いつもの生徒会室だった。いつもと違うのは俺の自席に彼女が座っていること。いつもならキッチリと着ているだろう制服は一番上のボタンだけが外されていて、それくらいならば誰でもしていることだというのに彼女がしているとなんだか微妙な気分になる。
「会長…」
「なんでそこにいる」
いつもよりボーッとしたような彼女は俺に気づくと立ち上がってこちらに近づいてきた。スカートもいつもより少し短いような気がする。見たこともなかった柔らかそうな太ももがチラチラと見え隠れして心臓に悪い。
目の前に立った彼女が俺の腕の裾を控えめに掴む。
「いつも来てたのにあんまり一緒に居られなかったなって思って…」
ふ、と下を向いた彼女の黒い髪が肩から胸に流れて何故か目が離せなかった。
「寂しかったんですよ?」
いつもなら嫌味な一言でもぶつけて突き放すのに言葉が喉につかえて出てこない。というか彼女の口からこんなことが発せられるなんて。それどころか、上目遣いでこちらを見ながら口を尖らせる彼女に心臓がバクバクと止まらない。
「やっと、会長に会えた…」
そう言ってフワリと笑う彼女の肩を抱き寄せる寸前、ジリリリリリリリリという電子音で目が覚めた。
なんという悪い夢を見てしまったのだろうか。今冷静に夢の内容を考えても謎しかない。何故俺が彼女のことがあたかも好きかのように作りあげられているんだ。
おそらく夢のような状況になったとしても、口を回して退けられると思うしあんなに胸が高鳴ることも無いとだろう。といまだにドクドクと音を立てる胸に手を当てた。
では何故あんな夢を見てしまったのか。おそらく、誠が彼女に熱心に視線を送っていたのを毎日監察していたからだろう。
誠から接触をさせようと彼女に釘を刺していたにも関わらず、響に捕まった彼女と誠が仕事の話をしているのを何だか面白く無い気持ちで見ていた。が、そらは俺の計画通りに事が進まなかったからであって決して妬いていたとかいうことではない。
結局、誠と彼女は何の進展もなく新学期を迎えてしまったようだがこれからどうなるのだろうか。
誠にはあと1年以上残っているし、責めていくのはこれからだろうか。
って、誠には、ってなんだ。にはって…
夢のせいで少々混乱しているらしい頭をブンブンと振り朝食のテーブルについた。既に食べ始めていた姉に挨拶をするとこちらを向いた姉にブッと突然笑われた。
「あんたなんて顔してんの。絵の具で塗ったみたいに真っ赤なんだけど」
「…大丈夫。なんともない。」
「なに?ついに青春の話?お姉ちゃんに話しなさいよーあーでも朝の話は女兄弟にはNGかなー」
「…黙って食べたら」
「え、ほんとにそうなの!?何それめっちゃ気になるし!大学行けないじゃん!」
「いけるいける大丈夫」
この人と話していたら癪だけどだんだんと落ち着いて来た。やはり所詮は夢だ。最後は通常運転で棒読みになった俺に、つまんなーいとスープを飲み出した姉を一瞥して自分もバスケットからクロワッサンを取った。




