寂しさとお色気と頭痛
生徒会のお手伝い最終日はなんともあっさりとした終わり方だった。というかいつもと全く変わらなくて拍子抜けした。
そりゃ皆さんからの熱い抱擁とかを期待していたわけではないけれど、良くやってくれたなの一言ぐらいあってもいいんじゃないかな。
そんな風に思いはしたけど、改めて今日が最後だと自分から言うのも、催促をしているようで気が引けた。
お疲れ様でした、といつものように生徒会室内に一礼して廊下へ踏み出すとむわっとした嫌な熱さが充満していて気持ち悪かった。
帰ったら残りの課題をやって、撮りためていたドラマを見ようかな。
今は14時くらいだから帰ってから昼寝もできるな。
ようやく夏休みらしいことができると浮き足立ちながらシンとした廊下を歩いていると、前から人影がこちらに向かって歩いてくるのがみえた。
だいぶんと着崩しているけど制服を着ているということは学生だ。というか噂の彼ではないか。
その人とすれ違う直前、少しだけ会釈をしてなんとなく目が合わないよう歩く。
すると、その瞬間彼の足がぴたりと止まった。
「ねえ、君今生徒会室から出てこなかった?」
「あ、はい」
「てことは、君がサカグチさん?俺の勉強見てくれるっていう」
「そうです、よろしくお願いします」
ふーんと私を上から下まで眺めた彼は、パッと表情を明るくさせてよろしくねと言った。
初めて会話した印象は軽薄そうにしては冷たさが残る声色だな、だった。
生徒会のメンバーに選ばれるというだけあって彼の人気も凄まじいものがある。特に今のメンバーはファンの子達をあまり構わない人ばかりなので、女の子大好きな彼に群がるのは必至といえる。SNSでも他のメンバーは目撃情報や妄想が多い中、彼に関する投稿にはデートしてもらっただのハグしてもらっただの具体的なものが多かった。
それでもあまり緊張しないで話せるのは、同学年ということもあるけれど何より…
完全に私のタイプじゃないからだ。
「俺今から悠里さんに呼ばれてるからさ!また新学期になったら仲良くシてね」
「はあ」
「あっれー?テンション低いなーていうかタメでいいよ!」
「うん、ありがとう」
この制服をちゃんと着ない感じとか、軽いノリとか、女は全員自分の事が好きなんだろ?と言わんとする態度とか、別に嫌いでは無いけれど好きになれないんだな。
顔はどちらかというと濃い顔立ちだ。目鼻立ちがしっかりとしている。少し垂れ気味の目元や薄い唇が高校生とは思えない色気を醸し出している。さすが女優の息子。
強引に手を取られて握手させられた後は、じゃあ!と生徒会室に向かって小走りで駆けて行った。
これは、思いの外新学期が苦痛になるかもしれない…。
私は頭を抱えながら人気の無い校舎を後にしたのだった。
■五井 隆之介 (いつい りゅうのすけ) 1年
生徒会新メンバー 書記担当予定
女好きで軽い性格、成績が悪い、元は賢い




