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予想外の来訪者




もうすぐ夏休みだ。その前に生徒会では、学園祭関係で決めなくてはいけないことが山ほどある。まだ選出されていない1年の生徒会メンバーは夏休み明けから発表になるため、実質夏休みまではこの4人で企画を練らなくてはならない。

そんなクソがつくほど忙しい、なんてことは分かっていた。分かっていたのだが、まさか彼女が手伝いに来るなんて…。



「よろしくお願いします」



そう言って頭を下げると長い髪がサラ、と前に垂れる。ああ、探していた黒髪がそこにある、とついジッと見つめてしまう。緊張しているのか口を結んで目が泳いでいるようだった。目が合わない事が少し寂しく感じたが、落ち着いたイメージだった彼女の新たな一面にグッときた。


会長が彼女の細い肩に触れている。睨むように視線を送ってみたがどちらも気づく様子は無い。いや、おそらくあの魔王は気づいているに違いない。

きっと、悠里さんが俺をいじるために彼女を選抜したんだろうと簡単に予想はついた。癪だが、彼の面白がるような反応を俺が取っていることは否定できない。


いや今はそんなことより

悠里さん手どけろよ彼女怯えてるだろうあ今髪に若干触れたよな許さん俺だって彼女の髪を触りたい目見てほしい話したい触りたい。

喉を唸らせながらガン見していたら、隣の雪人に肘で突かれて我に返った。

もうすでに彼女はファイリングされた資料の本棚の前にいて会長から説明を聞いている。


「なに?誠あの子気に入らないの?」


「は?なんでそうなる、逆だろ」


「え!?逆ってどういうこと!?」


雪人がうるさいので無視して彼女の方をみると、悠里さんにありえない量のファイリングを頼まれていた。



「あちゃーなんであんな事するかな…彼女、悠里さんに何かしちゃったとか?」


「…」


「僕あとで声かけに行ってみよう」


「は?なんでユキが行くんだよ、俺が行く」



彼女が会長に何かしたとは考えにくいが、彼女の怯える様子を見るに、おそらく彼も本性を少し見せするくらいはしたんだろう。


そしてユキ、お前は引っ込んでおけ。俺が声を掛けるチャンスなんだ。



そこから約1時間、そろそろ声を掛けに行くかと彼女を見つめること数秒、何だか柄にもなく緊張してきて、トイレに行ってからにしようと生徒会室を出る。


あの瞳ともう一度目が合うのか、自分だけに話してくれるのか、と考えるだけで胸が熱くなり自分から出てきたくせに気持ちが逸ってしまう。


さっさとトイレを済ませ生徒会室の扉を開けると、なんとユキが彼女に話しかけていた。


おいユキ、なぜお前が話してる。

俺が行くって言ったのに…


心配性の彼の事だ、なかなか話しに行かない俺に焦れたんだろう。どうせユキが大丈夫?とか何とか聞いているはずだ。

がっくりと肩を落とし席に戻る。これで彼女に話しに行くキッカケを失ってしまった。

また2人を見ると、何の話の流れからか彼女がニコっと笑って首をかしげた。


その凶暴的な可愛さに撃ち抜かれながらも、不思議そうな顔でこちらに帰ってきたユキに殺意が芽生えたのだった。


「ユキ、お前記憶喪失になろう、な」


「は?どうしたの、ていうか顔こわいよ」





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