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作者: バオール

もしもし

聞こえているかな

私は聞こえているよ

私の耳は君を覚えている


もしもし

見えているかな

私は見えているよ

私の目は君を覚えている


私は永遠に忘れないよ

君との思い出は

小学生

中学生

高校生

大学生

社会人

私の人生を共有していたもんね

凄い長い間、一緒だったね


台風で交通機関が麻痺した日に

遅れた電車の中で

死んだ、

と母からメールが来た


涙が落ちた


君を最後に見たのは

背中だった

永別した父の最後の姿も

背中だった

何か暗示めいていて嫌だった


私の手には買ったばかりのチーズタルトがあった

医者から食べたがる物を食べさせて良いと言われていた

美味しいと評判のタルトだった

持ち帰っても食べさせたかった君はいない


水脈のように涙が溢れた


台風でガラガラの電車で

大人なのに泣いてしまった

鼻水垂らして泣かせるなんて

酷いじゃないか


駅から降り

夜空の下で泣きながら歩いた

どうにか気持ちを落ち着けようとした


君の瞳の最後に映るのは私のはずだった

それなのに私を置いて


君の亡骸に会った時に

もう少し頑張れよと言って、ごめん

君の亡骸があまりに綺麗で

文句を言ったら生き返ると思ったんだ


ねえ、死んだふりをしてるだけって

言ってよ

心に浮かぶ声が

君の声だと勘違いしてしまうから

私の耳元で囁いてよ

動画でしか会えないなんて嫌だよ


君の綺麗な眼で

私の泣き顔を見てよ

こんなに泣いたのは小学生以来かな?

馬鹿みたいに泣いているよね?

これを書いている今も泣いているよ

君の死が今までで一番辛い

今までで一番泣いている


私が君に会った日

私は君を拒絶した

君がいつか死んでしまうから

君の亡骸を抱き締めたくなかったから

君を愛さなかった


でも君は私を愛してくれた

純粋な態度で愛してくれた

私は拒絶したけど

心はすぐに溶かされた

私も君を愛した

死の恐怖に怯えながらも

絶対に後悔しないと決めた


膝を付き

君の亡骸を抱えて

埋めた時に

あまりの軽さと

永劫に会えない悲しさで

また泣いてしまった


ありがとう

君に会えて良かった

私の心で君は生きている

私が死ぬまで君を思い出すだろう

私が死ぬまで君を語るだろう

老いの始まりと言われても

愛した君を語り続けよう

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