帰りの電車で
いつもは違うけど、今日は清水さんと同じ電車だ。
「ねえ、私達どう見られてるのかな?」
不意に私は聞いた。
「どうって?」
「こうやって肩に頭乗せてるところ」
「そうね……仲のいい女子高生?」
「えへへ」
「何? ニタニタ笑って」
「幸せ」
「私もよ」
そう言って私の頭を撫でる清水さんの手は温かかった。
私はその温もりを感じながら瞼を閉じた。
「寝たの?」
「ううん」
「いいわよ別に。着いたら起こしてあげるから」
「そうする」
私は安心して目を瞑った。でも、折角清水さんを感じているのに、寝てしまったら勿体無いと思った。だから寝たフリをしてみた。
「寝ちゃったのね」
やさしい声は、寝まいとしている私を睡眠へと誘う。そして頭を撫でる手つきが更に優しくなる。
……もういいや。寝てしまおう。
私が目を覚ました時、すでに降りる駅を超えてしまっていた。
「清水……さん?」
横にいる清水さんもどうやら寝てしまっているらしい。
「清水さん、起きて。清水さん」
「んっ……。今井さん?」
「えへへ。寝過ごしちゃったね」
「え? あっ、ごめんなさい。つい」
急に清水さんが身を引いたので、身体を預けていた私はそのまま倒れ込み、清水さんの膝に頭が乗る。
「……清水さんはまだいいの?」
「私は終着で降りるから」
「電話していい?」
「誰に?」
「家。今日は泊まるからーって」
「どこに?」
「清水さんの隣」
「……明日じゃダメかしら? 今日は親がいるから」
「ぷー。じゃあ明日」
「いいわよ。楽しみにしてるわ」
清水さんが私の頭を撫でる。
「私の頭撫でるの好き?」
「好き。貴方も撫でられるの好きでしょう?」
「うん」
そうこうしていると、駅に着いた。
「ここで降りて、反対側から帰るね」
「見つからないようにね。本当はダメなんだから」
「じゃあ、また明日ね」
「ええ。楽しみにしてるわ」
電車のドアが閉まり、清水さんは行ってしまった。
「明日……」
冷静になって考えてみると、凄く恥ずかしくなってきた。
真っ赤になった顔は翌朝まで治らなかった。