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棺の皇国  作者: 天海りく
逮夜の花燭
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「出立」

 リリー達の姿が見えなくなってすぐに、バルドは行軍を命じた。リリーとマリウスの姿が見えないと戸惑う者達に、ふたりはこのまま置いていくと告げる。

「最後通告。忠誠は不要。戦いたい者のみ、北へ。他は南へ。ジルベール姉弟を頼るべし」

 そうして、忠誠心ではなく戦を求める者だけでいいと念押しする。

 自分は道連れや皇家への忠義などいらない。そんな理由でついてこられるのも、邪魔くさい。

 ひとりだってかまわないのだ。

(リーも、いなくていい)

 ヴィオラが迎えに行ったら、リリーは勝手なことをと怒るだろう。だけれど戦う以外はいらないと言い張るのだろう彼女をひとりで行かせるために、説得する方法を持たなかった。

 戦が終わった後に、何があるのか何を得られるのかわからない。だが、その先を見ずにリリーが戦場で死ぬのは違うとだけは思った。

 戦以外に好きなことがあるリリーなら、生きた方がいい。生きてみて欲しい。

 身勝手な願望の片隅で、リリーと離れる勇気もなかなか持てなかった。

 ほんの一時でもいいから、永遠が欲しい。リリーとなんの疑いもなく、最期まで一緒にいられると信じられる時間が得られれば、踏み出せる気がした。

 だから、結婚式をしようと思ったのだ。ふたりだけで誓って、リリーの全部を自分のものしてしまって、そうしてやっと手放せると決心がついた。

 我が儘をしたのはよくわかっている。

 全て自分自身の望みであって、リリーの意志を置き去りにしているのは自覚している。

(でも、リーは生きる方がいい)

 バルドは数人がここで離脱するのを見届けて、南に背を向けた――。


―了―


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