プロットの作り方(補足)
このやり方でプロットが作れなかった、と苦情を受けましたので補足説明させてもらいます。
このプロットスタイルで表に書き込むべきは『設定』ではなく『ドラマ』です。
ここの区別が曖昧なのか、こちらに物語の相談をするのに『設定』の話ばかりに終始する初心者も少なくありません。
そして、こうした『設定』を得意げに語る人に限って、『ドラマ』を作ることを忘れていることが多いのです。
ここの区別を、著作等に配慮して昔話を例にお話ししたいと思います。
皆様は『3枚のお札』という昔話はご存知ですか?
前回お話した「誰が何をどうする話」の形に落とし込むなら、「小僧が3枚のお札を使って鬼婆から逃げることに成功する話」です。これはそのまま、このお話のあらすじでもあります。
さて、では、これは『ドラマ』と言い得るのでしょうか。残念ながら、これは『設定』の、それもほんの一部でしかありません。
物語の根幹となり、物語を結論に導く大事な設定ではありますが、『ドラマ』ではないのです。
ならば『ドラマ』とはどの部分を指すのか、3枚のお札でいえばおおよそ『小僧がお札の力で鬼婆の追跡をかわす部分』を指すのです。
なぜなら、小僧が鬼婆を撃退するシーンには『鬼婆の追跡(原因)→お札を投げつける(反応)→お札の力によって逃げのびる(結果)』という、登場人物たちの行動が書かれていますよね。登場人物がいかな動きを見せるか、そこにどのような気持ちがあるのかを書くのが『ドラマ』なのです。
先に書きましたプロット原型、あれはこの『ドラマ』の流れを制御するものであって、そのドラマ全てをつなぎ合わせた時に「小僧が3枚のお札を使って鬼婆から逃げることに成功する話」という完成形が出来上がるのです。
そのためにも、自分が思い描いている物語のパーツが『設定』なのか、『ドラマ』なのかをきちんと区別して物語を組み立てるようにしましょう。
『小僧さんが3枚のお札を使って鬼婆から逃げることに成功する話』という部分だけでプロットがたてられないのは、ここに登場人物に起きる事件や登場人物の反応という『ドラマ』が欠けているからです。
「芝山さん、例えば異世界転生した主人公がですよ、~~ってスキルで戦うとか面白くないですか?」
そう言われたら、「設定は面白いですね」というしかありません。実際に私は異世界転生ものは嫌いではありませんし、ひねった設定や能力を聞いたときは素直に「面白そうだ」と思うことができます。
しかし、その先のドラマが面白いかどうかを判じるには、きちんと『ドラマ』の流れの見通しが立たなくては無理なのです。
ですから、意地悪ではなく、本心からの「設定は面白いですね」。
そのあと、その設定を生かして主人公がどんなルートで目的を果たすのか、どんな困難が待ち受けているのかを決めるのがプロットです。
ここを見誤ると、プロットの項目に『設定』を書き込もうとして同じところをぐるぐる回る羽目になる。
設定を読者に見せるときは必ずドラマの形で、3枚のお札でいうならばトップシーンの小僧さんが和尚さんからお札をもらうシーン。
これは「設定を説明する」という機能のあるシーンですが、小僧さんが突っ立ってお札の説明をしたり、和尚さんのモノローグでお札の効能を語ったりはしないですね。
プロットとして書くならば「山へ行くと言い出す小僧→和尚は彼にお札を手渡す」と、登場人物の動きを書き込むわけです。
ここにさらに小僧がお札を受け取るという『反応』がある、それがドラマです。
この後も、「山でおばあさんに出会う。おばあさんが親切なので家へ着いて行く」と、行動で書き表すことができますよね。しかも、ここではおばあさんが鬼婆だという種明かしはまだない、小僧は相手がただの親切なおばあさんだと思い込んでいる、だから物語の中でこの部分だけを切り取って考えた時には全く意味をなさないし、『小僧さんが3枚のお札を使って鬼婆から逃げることに成功する話』という本筋に沿っているようにはみえませんよね。
しかしプロット的に見た時に、これは『鬼婆から逃げる』という目的のために作られた『鬼婆と出会う』という絶対に必要な要素であるとわかるでしょう。
しかもこれを鬼婆だと明かさず、「小僧が親切なおばあさんに出会い、この人を信用する」というドラマに仕立てている。
かように、人物が行動をすること、それ自体がドラマであると言っても過言ないでしょう。そのために『登場人物が反応しなくてはならない出来事』を考え、整理するのがプロットです。
さて、設定とドラマの区別、わかりましたか?
せっかく見つけた面白い『設定』を生かすために、プロットにはどんな『ドラマ』を書き込めば良いのか、ここは何度も失敗したり、書き直したりして体得していくものだと思います。
だからこそ、この二者の区別をよくよく考えてプロットを作ること、これをぜひ一度試していただきたいと……私の拙い解説では伝わらないものが、さすればきっとおわかりいただけることでしょう。




