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人形転生(仮)

作者: 五里霧中

勢いで書いてみました。

 灰色の空の下、雪が降る。

 降り始めたばかりなのか、地面には少し雪が積もっている。

 日が傾くまでには時間があるが、その場所は"彼女"の雪を踏みしめる音しか聞こえてこない。


 彼女、いや少女の体格から年齢は12~13歳程であろうか。

 瞳はスミレ色であり、肌の色は驚くほど白く、白い髪が腰の長さまで伸びている。

 濃紺の膝丈まである長袖のワンピースを着ており、白金の胸当て、小手、肘当て、膝当てを着けている。

 もしもここに人がいれば雪の妖精か戦乙女かと見間違えたであろう―――。


(………)


 そんな妖精のような"彼女"は死んだ魚の目で灰色の空を見上げている。




*****




(ん…ここはどこだ?)


 目を開けると知らない天じょ…ではなく薄明るい暗闇の中にいた。

 首を左右に動かしてみると、どうやら狭い箱の中にいるようだ。

 背中はクッションのようなもので弾力性があるが、昨日寝た布団ではないことは確かだと思う。


(昨日は自宅でさよなら20台、ようこそ30台の1人誕生パーティを行って…)


 部屋の中で寝たのに箱の中にいる。その事実に男は驚き、頭をよぎるのは"拉致監禁"。

 しかし大声を出すのは不味いのではないかと判断し、ぐっと堪える。


(まずは体の拘束の確認かね)


 両手・両足の拘束が無いことを確認し、体を起こすため箱を開けようとするが…。


(あ、あれ?ふたが開かないぞ!?)


 そう、箱のふたが開かないのであった!

 残念!彼の冒険はこれで終わってしまった!











 とはならず、この状況を打破するのにはどうすればよいか男は考えた。

 その結果が以下5通りの案である。


 1.男ならPowerrrrrrrrrr!!!!!

 2.開ける手段が無いか確認する

 3.大声で助けを呼ぶ

 4.寝る

 5.祈る


 男は迷わず4を選択しようとしたが、翌日も出社日であることを思い出し2を選択してしまった。

 そう!悲しいかな、男は企業戦士リーマン、通称社畜であったのだ!


(早くここから出て出社しないと…ただし電車遅延は勘弁な!)


 そう、エリート社畜だったのだ!


(がさがさ…ごそごそ…)


 あれから10分ほど経ち、男はいまだ箱の中であった。

 左手首に鍵5つ紐でくくりつけられているのだが、鍵穴が箱の中心、手の届きにくいところにあったたため中々開錠できないのであった。


(やった!開いたぞ!)




*****




(…おぉ!?部屋だ!)


 箱が置かれていたのは石造りの小部屋であった。

 入っていた箱は鉄製で、大きさは1.5m×2mのサイズで観音開き、小部屋の天井はゲームのダンジョンのように光っており、広さ10畳・高さ2.5程mの大きさだろうか


 部屋の出口は階段で上がるようだが、出入り口が閉じている。

 部屋の隅には金属製のロッカーが2つあるようだ。


(箱の外に変なやつがいなくてよかった…さて部屋の中を調べますか。とその前に…)


 男は自身の格好を見て驚愕…いや戦慄した。社会的な意味で。


 なんじゃこりゃあああぁぁぁ!!!って声が出ない!?

 えええぇぇぇ、スカート着てるぞおい…あと甲冑。Oh…ファンタジー。

 立って気づいたが地面からの目線が低い!170cmはあったのに20cm程度低い気がするんだぜ…。


(まさかスカートって事は……)


 そして男は気づいてしまった、男の象徴が亡くなってしまっている事に。そして胸がなかったことに。


・・

・・・


(はっ、気を失ってしまっていた。早く脱出しなければ)


 男、いや彼女が2つのロッカーを手首の鍵2つ目で開錠し中を確認すると、1つのロッカーは武器が、もう1つのロッカーは服が入っていた。

 武器ロッカーには短剣が2本、弦の無い短弓が1つあり、服ロッカーには予備の服と下着が数着、茶色のローブがあるようだ。

 もちろん服飾はすべて女性用である。そして、残念なことに水・食料は見つからない。


(そしてロッカー扉裏の姿見で気づいたんだが。何この美少女)

 

 彼女が欲しかったけど彼女になりたいわけじゃ無いんですが…。

 あれか、30歳まで童貞を守ると妖精になるってやつかな。ははははは…はぁ。

 白色の髪ってなんやねん。紫の目ってなんやねん。

 髪型ストレートだけどツインテールにすれば攻撃力上がりそうやね。大きなお友達的な意味で。

 これはあれか、ネット小説でよく見る転生か憑依パターンか?深く考えてもしょうがない、先に進もう。


 彼女はポジティブであった。何も考えていないともいうが。


(というわけで短剣2本拝借します)


 彼女は弓を選ばす短剣を取った。弓を扱ったことが無いこと、室内戦を想定してである。

 短剣は戦闘に使うのは1本、予備1本を想定し、ロッカーにあったポーチ兼帯剣用ベルトに装着している。

 そして、ここに死んだ魚の目をした美少女型武装おっさんが誕生したのである。

 

 後に彼女は当時の気持ちについてこう語ったという―――。


(もう、、、どうにでもなーれ☆)




*****




 彼女は部屋の外へ出る覚悟を決めたが、無断欠勤する覚悟はできていないチキン野郎なのである。

 9割がた元の世界へ戻れないことは理解しているが、納得はできていないのである。

 しかし、ここで逆転の発想が閃いた!出社するためにこの世界を抜けるのではなく、この世界にいれば出社する必要は無いのである!


(毎日がエブリデイ?毎日がエブリデイ。毎日がエブリデイ!)

 

 そして、ついに死んだ魚の目をして不気味ににやけている美少女型武装おっさんが爆誕したのである。

 ……これはひどい。


(取り合えず外出ますかね。後は周囲の状況確認と水・食料の確保かなぁ)


 彼女は小部屋の階段に登り、天井の鍵を3つ目の鍵で開錠し、天井を僅かに押し上げ周囲を確認する。

 窓は無いが薄明るい小さな物置部屋の奥に地下室の出入り口があるが、物置の床は埃がたまっている。

 人気が無いことを確認し、地下室の出入り口を閉じ、物置の出入り口へ移動する。出入り口には鍵が無いようだ。


(潜入といえばダンボール箱)


 ここで彼女は思う。ダンボール、それは必然。ダンボール、それは神器。ダンボール、それは約束の地…。

 ついでにごちゃごちゃしている物置小屋もダンボール箱で整理したい。

 少し出入り口を開けると、向こう側は廊下のようだが、ひと気がない。


(あれ?何で人が居ないのが分かるんだ?)

 

 彼女は疑問に思ったが、ドアを開け先に進む。




*****




 彼女は悩んでいる。

 この家は平屋で、全ての部屋を確認したがひと気がないことと併せ、長年使われていないような形跡がある。

 また、部屋の物品を確認すると文化水準が中世程度であること、水と食料がないこと、そして一番の問題は置いてある本の文字が読めないのである。


(これはまずい)


 書物から状況を把握しようとしたけど読めないって無いわー。

 あとは"聞き取り"と"会話"だけど、嫌な予感しかしないのは何故だ…。

 絵本とか図入りの本があれば、少しは改善するのかねぇ。

 読めないものはしょうがない!保留、保留!


(さて、次は外なんだが。今すぐ外に出るべきか否か)


 家の中を確認した後、次に外の確認を考えているが、部屋の木窓が全て閉められている為、外の状況が確認できないのである。

 家の中がこれからも安全かどうかという問題もあるが、少なくとも現時点では安全である。

 ここで異世界に行き、安全地帯から抜けてしまった場合のパターンについて彼女は考えた。


 1.何かしらの問題は起きるが、解決するパターン

 2.家の周りに兵隊や盗賊がいて、捕まる・殺害されるパターン

 3.家の外に魔物がいて、重症・死亡するパターン

 4.実は家の中が危険で外が安全なパターン

 5.何もおきない


(窓を少し開けて周囲の状況を確認。可能ならば全ての部屋の窓から確認後、玄関を少し開く!)


 仕事の事務処理で何度もチェックする癖から、今回も慎重に行くことにした。

 なお、仕事では上司・部下から頑固野郎と直接言われていたのはいい思い出である。




*****




(よし!寝る!)


 彼女は決断した。必ず、かの疲労困憊の原因を除かねばならぬと決意した。

 彼女には戦闘はわからぬ。彼女は、現代一般人である。

 会社に出社し、PCと遊んで暮らしてきた。けれども危険に対しては、人一倍に敏感であった。 


 一つ目の窓から外を見ると夕焼けであった。

 部屋には照明が無い、食料も無いため一旦体力を温存し、明日に備えることにしたのだ。

 窓を閉め、物置を閉め、地下室出入り口を閉め、箱の中に短剣を1本入れてもう1本は武器ロッカーへ戻した。

 閉所恐怖症の人には申し訳ないが、箱に入り内側から鍵をかける。


(おやすみなさい……)


 そして彼女の異世界1日目が終わっていく―――。




誤記は適宜修正しています。

連載は……できたらいいなぁ(遠い目)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 物語の展開が不思議で面白かったです!異世界へ行ったと思ったら全く違う人物になっていたという設定がすごい面白いです!主人公の様子をコミカルに書いていてとてもいいです! [一言] 日記について…
[一言] 楽しそうな匂いが…連載期待してます!
2015/09/25 20:11 レーベルグ
[一言] 続かない感じですか?
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