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「うぁっ、すごい重い」

長瀬が苦しそうな顔をしてボールの入ったカゴを持ち上げた。

「一年だけこんな重労働なんて不公平だよな」

長瀬が口をとがらせた。

「おい長瀬、早く運べよ。日暮れちゃうぞ」

立脇が急かすように長瀬をつついた。

「へいへい」

長瀬がかったるそうな声で言った。

地方大会目前ということで2、3年達は練習に熱が入っている。地方大会で優勝すれば、甲子園出場をかけた全県大会のシード権を獲得できる。だから、練習も自然と身が入るという訳だ。

「おい、さっさと部室に運べよ。明日もはやいんだぞ」

明たちの後ろから3年の岩崎秀則が注意した。

「あ、岩崎先輩。お疲れ様です」

長瀬が岩崎に向かって会釈した。

「先輩、すごく気合い入ってますね」

立脇が岩崎に向かって言った。

「そりゃそうだよ。俺たち3年生はこれが最後のチャンスなんだよ。だから絶対甲子園にいくんだ」

最後のチャンス…か…。

明は岩崎の言葉にハッとした。

「じゃあな」

岩崎はそう言って部室の方向に歩いていった。



明はいつもの帰り道を歩きながら考えていた。

これが最後のチャンス…。岩崎が言った言葉だった。

岩崎は高校最後の夏だから絶対に甲子園に行く、と言った。その目は迷いのない目だった。

明は知っている。先輩はこの後、後一歩のところで破れて甲子園に行けなかったこと。泣きながら甲子園の土を拾っていたこと。明は全てを知っている。これからのことを何もかも。




ーーそうだ。これが最後のチャンスなのかも知れない。未来を変えるチャンスなのかも知れない。明はそう思った。

自分がタイムスリップして来たのも、何かの縁かもしれない。自分が未来を変えてやるーー。明はいてもたってもいられなくなった。

明は意気込んだ。俺が未来を変えてやるーー、と。

地方大会は明日だ。

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