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3番の岩崎が打席に立つ。
1死2塁。
先制するには絶好のチャンスだった。
「岩崎ー、チャンスだぞ!」
「打てー!」
ベンチからも声が飛ぶ。
岩崎はバットを握りしめ、マウンドを見つめる。
ピッチャーは、ゆったりしたモーションで第1球を投げた。
岩崎はスイングした。
が、球はバットをすり抜けていった。
「ストライク!」
明には球のキレが先程より上がったように見えた。
球の速さといい、さっきとは1段階違うように感じた。
岩崎も事情を察したのか、驚いたような表情をしている。
ーーーふふふ、そうだろ。
ウチが簡単に負ける訳がないーーー。
中原はベンチで微笑んだ。
中原はここ何日かで明北高校のデータを集めまくった。
選手の打席、出塁率、守備などのデータを事細やかに集めた。
それを元に分析に分析を重ね、対策を練ってきたのだ。
ーーーこの試合、絶対に勝つーーー。
中原は、密かに闘志を燃やしていた。
岩崎は苦戦していた。
なんとかツースリーまで持ちこんだものの、ファールが続き気がつけばか10球目。
そして、11球目。
ピッチャーのボールが、少し高めに浮いた。
岩崎はそれを見逃さなかった。
スイングしてボールを叩いた。
ボールは、内野を転がっていった。
ショートはそれを拾い上げて、セカンドに投げ、セカンドはさらにファーストにボールを送った。
ダブルプレーだった。
あのピッチャー、只者じゃないな。
明はベンチから見てそう思った。
一目見ただけでは分からないが、明らかに打ち取ろうとして投げていた。
これは厄介だぞ。
明はマウンドの方に視線を向けた。




