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「プレイ!」
秋葉高校との試合が始まった。
明北高校は先攻だ。
明はベンチスタート。
明はベンチに座りながら美穂のことを考えていた。
俺がこの大会で優勝したら、美穂とーーー。
「プレイ!」
審判の声が響き渡る。
井川が打席に立つ。
相手のピッチャーは、ゆったりとしたモーションで第1球を投げた。
「ストライク!」
なるほど。
なかなかいい球を投げるな。
井川はバットを握りしめた。
第2球。
井川は内角に来たボールを打ち返した。
センター前ヒットだった。
「よし、いいぞ、井川!」
ベンチから歓声が上がる。
2番の北野は、落ち着いて送りバントを決めた。
「あれ…?」
明は目を見張った。
チームのレベルが確実に上がっていると感じた。
それだけではなく、チーム全体が自信に満ち溢れている気がする。
数多くの対戦を経験して経験が積み重なって、それが自信に繋がっているのだ。
もしかしたら、もしかするかもしれないーーー。
明は期待に胸を膨らませていた。
「なかなかやるな」
中原はベンチから様子を見て、そう言った。
「ーーーだが、そう上手くいくかな?」
中原はニヤリとした。




