(79)
明は家で素振りをしていた。
昨日、美穂に勇気を出して告白したが、思いっきりはぐらかされてしまった。
それはそうだ。
いきなり告白されてもいきなり受け入れられる人間なんてそうはいやしない。
ましてや幼なじみならなおさらだろう。
まだ早すぎたかな…。
明は素振りする手をとめ、その場に座りこんだ。
「じゃあ、本日はこれで終わり」
先生が言った。
練習は準決勝が近づいていることもあり、かなり厳しめになっている。
あまりの厳しさに汗がダラダラ出てくる。
明は、タオルでそれを拭った。
「なぁ、美穂に伝えたか?」
立脇が明に聞いてきた。
ホントに気楽だな。
明はそう思いつつ、
「あぁ、伝えたよ」
と言った。
「マジかよ!?美穂、何て言ってた!?」
立脇が大きな声を出す。
「おい、静かにしろよ!美穂に聞こえるだろ!」
明が鼻の当たりに指を立てて、立脇を注意する。
「私がどうかしたの?」
美穂が昨日の告白などなかったように、明達に話しかける。
「あ、いや、こっちの話…」
立脇が苦笑いを浮かべる。
「あ、そう。私、先に行くわね」
美穂はそう言うと、グラウンドを後にした。
昨日あんなことがあったのに、なんで平気でいられるんだよーーー。
明は美穂の背中を見ながらそう言った。
ずっと隠していたが、胸のドキドキが収まらない。
「さ、俺達も帰らないとな」
立脇が他人事のように言う。
全く、呑気なもんだ。
明も帰り支度を始めると、
「あのさ、あそこ…」
立脇がグラウンドの外を指さした。
明は思わず身を乗り出した。
そこには明らかに明北高校ではないユニフォーム姿の生徒が立っていた。




