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「美穂、明日話があるんだ」
明は美穂の家に電話をかけていた。
「話って、何?」
電話越しの美穂は、少し戸惑っている様子だった。
「明日、学校で話すよ」
明はあえて何も言わないで電話を切った。
今までたくさん電話してきたのに、妙に胸がドキドキした。
なんで、こんなにドキドキするんだろう。
明はその場に寝そべった。
「お兄ちゃん、ご飯だよ」
光莉が明の体を揺らす。
しばらく寝ていたらしい。
「あ、もうそんな時間か」
明はあくびをした。
「ここで何してたの?」
光莉が聞いてきた。
「あぁ、美穂に電話していたんだ。明日大事な話があるからって」
「え、大事な話って何?美穂ちゃんに大事な話って何?」
光莉が前のめりになって聞く。
光莉はちょうどこういう話に興味が出てくるお年頃なのだ。
「言ったって、どうもならんだろ」
「えー、美穂ちゃんにだけに言ったってことはそういうことなんじゃないの?」
「とにかく、そういうのじゃないから!」
「ケチ!教えてくれたっていいじゃん!」
「ほら、ご飯だそ!」
明は早めに話を切り上げると、リビングに向かった。
次の日の放課後。
明美穂の姿は、校舎裏にあった。
「ここなら誰にも聞かれないな」
明は辺りを見回しながら言った。
「え?聞かれちゃダメな話なの?」
美穂は少し警戒した様子を見せた。
「いや、まぁ、その、そんな感じなんだけど…。」
「え?大丈夫なの?」
美穂はまだ警戒を解かない。
「あ、うん、大丈夫は大丈夫なんだけど…。」
「なんなの?ちょっと怖いんだけど…」
美穂のガードはどんどん固くなる。
「じゃあ、単刀直入に言うよ」
明は深呼吸をした。
そうでもしないと、胸のドキドキが収まらないと思ったからだ。
どう言ったらいいか分からない。
必死に言い方を考える。
色々知っているつもりなのに、こう言う時にどう言ったら分からない。
考えに考え抜いてた言葉を明は美穂に言った。
「美穂が好きです。付き合って下さい」




