(72)
荒谷高校との試合の次の日、大会は休養日を迎えた。
久しぶりの休日である。
「そういえば、あんまりゆっくりしたことなかったな…。」
明は、伸びをして家の部屋のベッドにへたりこむ。
昨日、あんな試合をしたのが嘘のようである。
体は少し痛いが、我慢できる。
ベットに横になり、ボールを手で回す。
俺達がここまでイケるとはなーーー。
次はいよいよ準決勝。
未来を変えるためにタイムスリップしてきたが、まさかここまで変わるとは。
その時、ドアを叩く音が聞こえた。
玄関のドアを開ける。
そこには美穂が立っていた。
「美穂、どうしたんだ?」
美穂は小さく頷くと、
「実は、明くんに話があるんだ」
と小さな声で言った。
「え、話?」
明が聞くと、
「うん、でもここじゃ話せないから、ちょっと公園に行こう」
と美穂が言った。
「うん、わかった」
と言い明は、
「ちょっと出かけてくる」
と一声かけて、家を後にした。
明と美穂は近くの公園のブランコに腰掛けた。
いつも通っていて見慣れているはずの公園なのに、今日は知らない町にある公園のように思えた。
しばらく沈黙が続く。
美穂は話すタイミングをうかがっているような感じだった。
「…話って、何?」
明がそのタイミングを作ってあげるかのごとく、話を切り出した。
美穂は少しの沈黙の後、
「あの、実はね…」
そこで美穂はまた少し沈黙し、
「私、転校するんだ」
と絞り出すように言った。




