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1死、ランナー1、3塁。
犠牲フライでも1点が入るこの状況は、勝負所である。
絶対負ける訳にはいかない。
楢崎は深呼吸した。
あと2人。
あと2人抑えれば勝てるんだ。
7番の川本が打席に立つ。
楢崎は第1球を投げる。
川本は、バットを振る。
「ストライク!」
楢崎はホッとした表情をした。
この試合、色々なことがあった。
正捕手の交代、元チームメイトの登板ーーー。
思い起こせば色々あった。
しかし、その試合もあと2人抑えればーーー。
楢崎はあっという間に川本を三振にした。
「よっしゃー!」
「あと1人!」
グラウンドが一気に活気づく。
荒谷高校は最後のバッターになった。
これを抑えれば、勝てるーーー。
楢崎はまた深呼吸をして、投球モーションに入った。
その時、
「おい、萩原!頼む!絶対に打ってくれ!」
という古舘の大きい声が聞こえてきた。
楢崎は第1球を投げる。
萩原はスイングする。
「ファール!」
ボールは後ろに飛んでいく。
ただでは勝たせてくれないみたいだなーーー。
楢崎は第2球を投げる。
萩原のバットはボールを叩いた。
ボールは高く上がる。
井川が追いかける。
古舘は固唾を飲んで、ボールの行方を追う。
ボールは、井川のグローブに吸い込まれていった。
「アウト!ゲームセット!」
大歓声が鳴り響く中で、古舘はその場に動けなくなった。




