(7)
次の日の朝、天気はよく、快晴というべき朝だった。
明は目を開ける。まだ眠たい。明は大きなあくびをした。
あ。今日は朝練があるんだ。
明はベッドから体を起こし、一階のリビングに向かった。
「あ、お兄ちゃんおはよ―」
光莉がトーストをかじりながら挨拶した。
「おはよう。光莉も朝練か?」
「うん。大会も近いしね。これからはもっと技術面を上げていかないと」
「へえ、大変だなぁ」
明はトーストにジャムを塗りながら他人事のように言った。
「お兄ちゃんも今日朝練でしょ?」
「うん、まぁ俺たちはまだ球拾いだから、そんなキツいって訳じゃないけどさ」
明はコーヒーを飲み干した。
「じゃあ、行ってきます」
明は家を出た。日射しが体を照らす。
学校のグラウンドでは、朝練が始まっていた。部員達のかけ声が響いている。
「よう、明」
長瀬が明の肩をポンと叩いた。
「あ、長瀬。おはよう」
「今日はずいぶんゆったりした出勤だったな」
長瀬が笑いながら言う。
長瀬は甲子園に行きたかったんだろうか。ふと、そんな事が明の頭によぎった。
だが、こんな事今聞いてどうするんだ、という感情も沸いてきて、明は聞くのをやめた。
「今、行くから先に行ってて」
明は長瀬に言った。長瀬はおう、とだけ言った。
考えたってしょうがない。タイムスリップしたからには甲子園に行ってやる。これは神様が俺に与えたチャンスなのかもしれない。
変えてやる。俺が甲子園に連れていく。
明はスパイクの紐をギュッと結んだ。