表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/90

(56)

「古舘さんがキャッチャー...?」

大西は交代を宣言したキャプテンの顔を見た。

「言っただろ?交代じゃないって」

古舘は余裕たっぷりの顔をしている。

「おい平田、お前サードにいけ」

古舘はキャッチャーの平田に指示を出し、平田はサードに向かった。

「よし、投球練習しようぜ」

古舘はポジションにつき、ミットを構えた。

大西は古舘のミットめがけて投げ始めた。





「荒谷高校の守備の交代をお知らせします。キャッチャーの平田くんに代わりまして、古舘くん、平田くんがサードに入ります」

「なんだ?交代するのか?」

井川がベンチに腰掛けて言った。

「古舘はあの嫌みなヤツだろ?キャッチャーなんてできるのか?」

「もしかして前のヤツより下手だったりしてな」

臼田と小宮がせせら笑っている。

「プレイ!」

投球練習が終わり、試合が再開された。

「よし、藤田!飛ばせ!」

4番の藤田が打席に立つ。

「ねぇ、君さ4番なんでしょ?」

突然古舘が藤田に話しかけてきた。

「な、なんだよ突然」

藤田はびっくりしたように答えた。

「その割には全然打ててないじゃん。4番のくせにバットに当たってないよ」

「な、お前...」

「ストライク!」

藤田が気をとられているうちに大西は第1球を投げていた。

「どうしたの?あんまり打ててないからど真ん中に投げさせたのに、見てなかったら意味ないじゃん」

古舘はまた嫌みを重ねた。

「なんか藤田、よそ見してなかったか?」

「それに、なんかイライラしてない?」

臼田と小宮が藤田の方を見て言う。

「あ、やべ...」

藤田は我にかえり、バットを握り直した。

「君さ、もしかしてこのまま勝てると思ってるでしょ。でも、そんな余裕こいてるとあっという間に負けるよ」

古舘がまた嫌みを言う。

「何言ってるかわからんけど、俺は負けるつもりはねぇよ」

藤田はそう言うと、ボールをジャストミートした。

「平田!間に合うぞ!」

古舘の指示が飛ぶなか、平田はボールをでしょうか受け止め、ファーストに投げた。

「アウト!」

「あ~、ダメかよ~!」

臼田と小宮が頭を抱えた。

「あのキャッチャーうるせぇよ!誰か注意しろよ!」

藤田はかなりイラついている様子だ。

「次は立脇か...」

「打てないかもな...」

井川と北野が身もふたもないことを言う。

立脇が打席に立つ。

「やぁ、ヘボキャッチャーじゃないか」

古舘は立脇に対しても嫌みを言う。

すごい精神力だな。

明はベンチから見て思った。

「守備はなんとかなったけど、バッティングはそうはいかないよ。君に大西の球は打てないよ」

しばらく沈黙があって、

「...うるせぇ」

と立脇が言った。

「俺は大村先輩のためにもなんとか勝ちたいんだ!絶対打ってみせる!お前こそ俺に打たれないような配球を考えとくんだな!」

と立脇が言ったあと、古舘は少しして笑い、

「俺もお前より2年も先輩だぜ」

と言ってミットを構えた。

第1球。立脇のバットは空を切った。

「大振りしてちゃ当たんないよ」

古舘はボールをマウンドに返した。

第2球。立脇のバットはまた空を切った。

「なんだよ、全然ダメじゃん」

古舘は少し笑いながら返球した。

「うるせぇ。お前の腐った態度ごと吹き飛ばしてやるから、集中しろ」

立脇はバットを握り直した。

「...そうか」

古舘はそう言うと、ミットを外角よりに構えた。

え...。古舘さん、そのコースは...。

大西は一瞬躊躇した。

「大西、早く投げろ!」

古舘の言葉に大西はためらいながらも、構えたコースに投げた。

「これはボールだな」

北野が言った。

「でも、ずいぶん外を攻めたな」

小宮が頬杖をついた。

「立脇!よけろ!」

突然大村が立ち上がり、叫んだ。

「大村?いきなりどうしたんだよ?」

井川がびっくりした顔で大村を見る。

立脇は大村に叫び声にびっくりしてボールを見たが、ボールは立脇の目の前にせまっていた。




ボールは鈍い音を出して、立脇のこめかみ付近に当たった。

立脇はそのままグラウンドに倒れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ