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「明!よくやった!」

「でかした!」

明北ベンチからは一塁の明に対して、激励の言葉がかけられている。

明はその声援に応えるように左手をあげた。




「すいません...。ランナー出しちゃいました...」

大西はマウンドに集まった古館に頭を下げた。

「大西、何謝ってんだよ。こっちが6点リードしてるんだよ。ランナー1人ぐらいどうってことないよ」

古館は淡々としている。

「それにさ、バントしてきたってことは相手も後がなくなってきてるんだよ。だから、ここを踏んばれば大丈夫だよ」

「は、はい!」

「何それ?俺が珍しく嫌味を言わないから変だなとか思ってんでしょ?」

「い、いや、そんなことありません!」

「まぁ、いいけどさ。ゲッツー狙っていこうぜ」

古館はそう言うと、ポジションに戻っていった。




「よっしゃ!井川いけ!」

「逆転のチャンスだぞ!」

明北ナインは1番の井川に向けて声をかけた。

「明が出たのはたまたまだろうが...。それにナックルがきたら打てるわけないよ...」

井川はブツブツ言いながら打席に立った。

「独り言聞こえてるな」

「聞こえるように言ってるね」

臼田と小宮がニヤニヤしながら言った。

大西は第1球を投げた。

内角高めのストレート。

「ストライク!」

あれ、それほど速くないぞ。

い井川はギュッとバットを握りしめた。

第2球目。

井川はバットを振った。

バットはいい音を出し、ボールはセンター前に落ちた。

「よくやった、井川!」

井川は声援に向かって手をあげた。

2番の北野が打席に立つ。

くそ...。ここで抑えないと...。

大西は投球モーションをとった。

抑えるには...、ナックルしかない。

第1球を投げた。

「え?変化しないの?」

北野が驚くほど、球は真っ直ぐだった。

変化...しない...。

北野はボールをレフト前に引っ張った。

一死満塁。

「大西さぁ、ゲッツーするんじゃないの?逆に打たれちゃってんじゃん」

古舘が不満気に言う。

「つ、次こそは抑えますから」

大西はそう答えるのが精一杯だった。




3番の楢崎が打席に立つ。

「大村...。絶対勝つからな」

楢崎がつぶやいた。

大西は第1球を投げた。

内角低めのストレート。

「ストライク!」

速いな。

楢崎はバットを握りしめる。




俺は絶対抑える。

俺は荒谷高校のエースなんだ。

大西は第2球を投げる。

外角高めのストレート。

楢崎は足を踏み込み、スイングした。

バットは快音を響かせ、ボールを宙に放り出した。

「ライト!」

大西はライトに向かって声をかける。

が、そのライトのはるか後方のスタンドにボールは落ちていった。

「ホ、ホームランだ...」

臼田が口を大きく開けて驚いた。

「やった!これで10-8だ!」

明北ベンチから歓声が沸き上がる。




大西はマウンドでうなだれた。

「まさか...、俺が...」

なかなか顔があげられない。

「タイム!」

その声がすると同時に古舘がマウンドに来た。

「古舘さん...」

大西はやっと顔をあげた。

「大丈夫、交代とかじゃないから」

古舘は大西の肩を叩いた。

「え?」

大西がきょとんとしていると、

「交代するのは、俺だよ」

と古舘が言った。

「俺がキャッチャーをやる」

古舘は大西に告げた。

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