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立脇は自信をつけたのか、楢崎の速球を捕り続けた。

「ストライク、バッターアウト!チェンジ!」

4回裏の攻撃を終え、明北ナインがベンチに戻ってきた。

「立脇、いいぞ!」

「お前、やればできるじゃねぇか!」

「好感度上がったぞ!」

立脇は照れくさそうに先輩達の誉め言葉を聞いていた。

立脇は大村の方を見る。大村も立脇の方を見て、

「立脇、よくやったな。これなら安心して任せられるよ」

と笑った。

立脇も照れくさそうに笑った。



5回表、明北の攻撃。

8番の小宮が打席に立つ。

「あのさぁ、いい雰囲気のところ悪いんだけどさ、こっちの方がリードしているんだよねぇ。忘れてない?」

古館がイヤミを飛ばす。

確かにな。

明はバッターサークルで準備しながらそう思った。

10-4と6点もリードされている。

加えて大西はナックルボーラーだ。

そう簡単に点が取れるわけがない。

「ストライク!バッターアウト!」

小宮があっという間に三振になった。

「くそぉ、あのナックルを打つ方法はねぇのかよ!」

臼田が膝を叩いた。

「投げるピッチャーですら軌道が予測できないからね...」

森先生もあきらめムードだ。

くそ...。ここで負けるのかよ。

明は打席に立った。

大西は第1球を投げた。

ボールがゆらゆらと揺れて、ミットにすっぽりとおさまった。

「ストライク!」

「オイ、初球からナックルかよ!」

北野が声をあげる。

参ったな。これじゃ打つことすら難しいぞ。

明は構えを修正した。

...待てよ。

打つことはできなくても、当てることはできるんじゃないか。

大西は第2球を投げた。

明がバントの構えを取る。

ボールはまたゆらゆら揺れている。

「明のヤツ、バントをするつもりだ!」

「打つのが難しいのに当てられんのかよ」

頼む。当たってくれ。

明は祈った。




すると、コンと乾いた音がした。

明がボールを見ると、ボールは三塁線を転がっていた。

「明、走れ!」

楢崎の言葉に明は一塁に突っ込んだ。

「俺が捕る!」

古館はそう言ってボールを素手で掴み、一塁に投げた。

ボールは一直線に一塁に飛んでいく。

これで、ツーアウトだ。

が、ボールはわずかに左にそれた。

「セーフ!」

明北ナインが歓声をあげた。

「明、でかしたぞ!」

「ナイスラン!」

明はその声援にガッツポーズでこたえた。




「俺のナックルが...、とらえられただと!?」

大西がガックリ肩を落とした。

その様子を古館がじっと見つめていた。

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