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「よし!まずは俺からだ!」
立脇は古館に向かってバットを突きつけた。
「あのさ、そういう演出はいいから早く打ってくれない?俺たち結構忙しいからさ」
古館は冷めた感じて言う。
「余裕ぶっこいていられんのも今のうちだぞ!」
立脇のキャラがどんどん崩れていく。
早く帰りたいな。
明はうつむいた。
「よっしゃ!行くぞ!」
立脇が100円を入れ、バットを構える。
ボールが飛び出してくる。立脇のバットがスイングする。
が、バットは空を切り、ボールは後ろのマットに当たった。
「あはは、全然ダメじゃねぇか」
古館の側近の坊主頭が言った。
「え、君さトーシロな訳?」
古館はゲラゲラ笑っている。
「今に見てろよ!これからガンガン打つからな!」
立脇は古館に向かって叫んだ。
しかし立脇はその後も当てることができず、ついに最後の10球目になった。
「おいおい、せめて最後は当ててくれよ。俺たち応援してるからさ」
古館が嫌みったらしく言って、笑う。
「バカにすんな!」
立脇は叫ぶ。
最後のボールが投げられた。
立脇のバットがとらえる。
的の「ヒット」というところに当たった。
「よっしゃ!」
立脇がガッツポーズをする。
「まぁ、ないよりはマシだね。んじゃ、次は俺ね」
立脇が立ち上がる。
「古館さん、頑張って下さい!」
古館の側近の筋肉質の方が声をかける。
「そんなに本気出さなくても勝てるっしょ」
古館は嫌みったらしく立脇を見た。
「こんにゃろ~!」
立脇がまたイラついた。
古館は100円を入れる。
「よく見て、バッティングの参考にしてよ」
古館はまた1つ嫌みを言うと、バットを構えた。
ボールが飛んできた。
古館はそれをいともたやすくバットに当てた。
ボールは「ホームラン」に当たる。
なんと全ての球をホームランにしてしまった。
「全く、準備運動にもならなかったよ」
古館が出てきて早々に嫌味を言った。
立脇はその嫌味に言い返すことも腹を立てることもなく、唖然としていた。
「俺たちの勝ちだからずっとここで練習できるんだけどさ、あまりにも下手だからここで練習した方がいいでしょ。ここ使っていいよ」
古館がまた嫌味を重ねた。
「くぅ…」
立脇はまさにぐうの音も出ない感じだ。
「俺たち荒谷高校は君たちみたいなのに付き合ってる暇はないんだよ。じゃあね」
古館たちは入り口に向かった。
荒谷高校…?
明は何かが引っかかる気がした。
「もしかして、次の対戦相手?」
明は気がついたら、口に出していた。
すると、古館が振り向いた。
「え?もしかして君たちは、俺たちの対戦相手?」
明はヤバいとばかりに口を抑えた。
「こんな相手なら楽勝だね。練習しなくてもいいぐらいだよ」
嫌味しか言えないのかというぐらい、古館は嫌味を言う。
「なんだと!」
立脇が立ち上がって言った。
「言っとくけどね、君らみたいな無名の高校球児に俺たち荒谷高校が負けるわけないんだよ。勝負を挑むこと自体が間違いなんだよ」
「ホントは負けるのが怖いんじゃねぇの?」
古館の嫌味に立脇が嫌味で返した。
「ほう、じゃあ明後日の試合で嘘っぱちじゃないことを見せてやるよ」
「見せてみろよ!」
「あぁ、ハッキリと見せつけてやるよ。覚えてろ!行くぞ」
古館は捨て台詞を吐いて、2人の側近と共に去っていった。
「なんだアイツは!嫌味しか言えんのか!」
立脇は怒りが収まらないといった感じだ。
やれやれ。俺たちの対戦相手は何故こうもめんどくさい人ばっかりなのか。
明は立脇に目をやる。立脇は古館の悪口を言いまくっている。
こっちもめんどくさいなぁ。
明はまた打ち直すことにした。




