表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/90

(33)

藤田も三振し、続くバッターは大村。

明北高校のベンチは残り4回もあるのに、すでにあきらめムードが漂っており、もう誰が三振しようが構わない雰囲気だった。

なんというか、チーム全体がどんよりしていた。

それもそのはす、ただでさえ速すぎて球が打てないのに、そのストレートと変わらない速さで曲がるスライダーまで投げられてしまったら、無条件降伏でもしたくなる。

まずい。明は段々ネガティブになっていった。

未来を変えたといっても、そんなに劇的には変わらないのだ。

ドラマや漫画でよく見るタイムスリップ物は夢があるのに、実際にタイムスリップしたらこんなもんだ。

なんだよ。

明は自暴自棄になってきた。





ヤバい。俺がなんとかしないと。

大村は奮起していた。

誰かが突破口を開かないと、この試合は負けてしまう。

なんとかして塁に出る。

大村は意を決して打席に立った。

速水が投げる。やはり速い。

「ストライク!」

やっぱりダメだ。

大村は完全に腰が引けている。

2球目。今度はスライダー。

大村のバットは空を切る。

「あぁ~!大村でもダメかよぉ~!」

井川は手を頭に当てて悔しがる。わかりやすい悔しがり方だ。

「大村当ててくれよぉ!頼むからぁ!」

北野がだだっ子みたいな口調で頼みこんだ。

くそぉ、俺だって打ちてぇよ。

大村はバットを構える。

第3球。内角低めのストレート。

これでまた三振か。

明がそう思った時、

「フェア!フェア!」

審判が叫んだ。

グラウンドの方を見ると、ボールがサードに転がっている。

「大村ぁ!走れ!」

井川が叫ぶ。

大村は全力疾走という感じで、一塁に向かってダッシュしている。

「塚田、早く一塁に投げるんや!」

速水はまさか打たれるとは思ってなかったらしく、少し慌てた様子で指示を送った。

塚田はもたついている。

おさらいしておくが、金橋高校の守備はかなりお粗末なものである。

「セーフ!」

審判が叫ぶ。





やった。

5回裏にしてやっとランナーが出た。

大村は一塁でガッツポーズをしている。





ここで何が起こったか説明しておくと、内角低めにきた速水の球が、大村のバットのグリップに当たったのだ。

あまりにも地味なため、速水をはじめ、誰も気がつかなかったのだ。





「塚田ぁ!てめえ何やってんだ!」

速水は塚田に怒っている。

「す、すいません…」

塚田は頼りにない声で謝った。

「エエわ。次ヘマしたら交代やからな」

速水はマウンドに戻る。

「あんなに怒ることねぇのにな」

金橋高校の控えの選手がヒソヒソ話をしている。





俺を本気で怒らせたようやな。

速水はロージンをマウンドに放り投げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ