表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/90

(3)

「ただいまー」

「お帰りなさい、明」

母の良子が出迎えてくれる。

「明、試合負けちゃったんだって?残念ねぇ」

「ううん、仕方ないよ。俺たち一生懸命頑張ったし、悔いはないよ」

明は母に精一杯強がって見せた。

「じゃあお母さん、すぐご飯の支度するわね」

「やだなぁ母さん、今日は7時から慰労会があるって言っただろ。もう忘れたの?」

「アハハ、そうだった」

母が笑いながら言った。

明はゆっくり居間に向かった。セカンドバックを脇に置く。

「おー、明、お疲れ様。お前負けたんだってな」

テレビを見ていた父の欽一が母と同じことを言った。そういえば父も昔は高校球児だった。

「うん、残念だったよ」

さっきと同じ返事をするのがめんどくさかった明は、そう答えた。

「へえ、お兄ちゃん毎晩遅くまで練習してたのにね」

妹の光莉がぼそっと言った。

「頑張ったって報われないんじゃしょうがないよ」

明は笑いながら台所で水をコップに注ぎ、飲み干した。



「じゃあ、行ってくるね」

「いってらっしゃい」

「気をつけろよ」

「お兄ちゃんいってらっしゃい」

母と父と妹がそれぞれ別の言葉をかけた。それを背にしながら、明は公園に向かう。

公園までの道を歩きながら、明はふと思った。

俺はこの三年間、何をしてきたんだろう――。

球拾いから始まり、二年の時にレギュラーになって、そしてーー。

色々なことが頭の中を駆け巡る。野球部としての三年間の思い出が明の頭の中に蘇ってきた。

ーー何もしなかったなぁ。

いや、でもしょうがない。

明は公園への道を急いだ。

すると、突然激しい頭痛が明を襲った。

「うっ…、ああっ…」

今まで感じたことのない痛みだった。誰かに頭を叩かれているようなズキズキとした痛みだった。

「うっ…、痛…」

なかなか収まらない。それに、意識ももうろうとしてきた。






明はその場にぱったり倒れ込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ