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明北高校と江南高校の試合は、明北高校の大逆転勝利で幕を閉じた。

さっきから明北高校の選手は喜びに浸っていた。

明はそれを微笑ましく見ていた。





それをスタンドから見ていた男と女がいた。

「あれが次の対戦相手かいな。なんかしょっぼいなぁ」

男は頬杖をつきながら、ぼやくように言った。

「速水キャプテン、油断は禁物ですよ。勝負に勝つためには、一瞬の油断も許されません」

女が男に言った。

「大丈夫や。あんな相手、俺が完封したるよ」

速水と呼ばれた男は、笑いながら言った。

「よし、学校に戻って作戦会議や」

速水が女に促すと、女も頷いて後に続いた。






ここは某ファミレス。

ここで明北ナインがささやかな祝勝会を開いていた。

「みんな、今日は本当におめでとう。今日の勝利も本当にみんなのおかげだと思っている」

森先生がナインに言葉をかける。

「一度は絶体絶命なところまで追い詰められましたが、最後の粘りで見事に勝ちました。最後まで勝利を諦めなかったからこそ…」

「先生、いいから早く食べましょうよ」

井川が遮るように言った。

「そうですよ。これじゃ先生のディナーショーですよ」

岩崎が茶化すように言うと、会場は爆笑に包まれた。

森先生はハッとして、咳払いをした。

「そ、そうだな…。じゃあ、乾杯といこうか。今日は俺のおごりだ!なんでも頼むがいい!」

森先生が豪快に言った。

すると、選手から次々に、




「じゃあ、サーロインステーキセット!」

「俺は、三元豚のカツ丼定食とケーキセット!」

「じゃあ、俺はこだわりの握り寿司セットと、期間限定抹茶パフェで!」





と口々に注文した。

「ちょ、ちょっと待て!」

森先生はあわてて財布を取り出して、

「足りるかなぁ~」

と所持金を確認し始めた。

選手達がドッと笑った。

明は周りを見渡す。激戦から解放された選手達は、本当にリラックスした感じで談笑している。

数時間前まで1点を競い合う試合をしていたとは到底思えない。

みんな冗談を言ったり、他愛もない話をしている。それはまるで、無意識の内に労を労っているかのようだった。

明は視線を自分の隣に移す。長瀬と美穂が昔の思い出話に花を咲かせていた。

「そこで明がさぁ…」

「そうそう、そういうことあったね」

多分、自分の悪口を言っている。

明は知らんぷりをすることにした。





「いやぁ、食った食った」

祝勝会の帰り道で長瀬がお腹をさするマネをした。

「ホントに楽しかったなぁ」

明も同調した。

あれから祝勝会は盛り上がってしまい、かれこれ3時間はお店にいただろう。

「ホントに先輩達嬉しそうだったね。なんだか私も嬉しくなっちゃった」

美穂もウキウキした口調で言った。

「そりゃ、楢崎先輩がまさかの離脱で逆転されたのに、その後キレイな逆転勝利。まさにメークドラマってヤツだよ」

「いわゆるひとつのね」

美穂がウイングする。

長瀬と美穂は息ピッタリだ。夫婦漫才ができそうだと明は常々思っている。

「明日からはもっと忙しくなるぞ。記念すべき二回戦に進出したんだからな」

長瀬の言葉に明はハッとした。

明が在籍している間に、明北高校は二回戦に進出したことがないのだ。

と、いうことは…。





未来が変わったのだ。





少しとはいえ未来が変わった。

明自信予想外だったが、今一回戦に勝って二回戦に進出しているのは紛れもない事実だ。




長瀬達と別れた後も明は考えていた。

本来なら一回戦敗退の所を今は勝ち上がっている。

つまり、これからは「明の知らない未来」ということになる。

予想が全くつかない。

明は使いなれていない頭をフル回転させて考えたが、やはり使ってないからか答えは出なかった。

いいや。明日考えよう。

明は家路を急いだ。

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