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山岡は動揺していた。

俺のせいでランナーを出してしまった。

6回表。4-2とリードしている。

これはもう勝ったも当然だった。

なのに…。




「プレイ!」

審判の声が響く。

沢田は森先生に言われた通りに、バントの構えをした。

山岡が第一球を投げる。

速い。まっすぐ伸びる球がバッターボックスめがけて飛んでくる。

しかし、コースは外れていた。

「あっぶねぇ!」

沢田はバットをサッと引いた。

「ボール!」

審判が叫ぶ。

山岡は次もコースから外れた球を投げた。

明らかに制球が定まらなくなっていた。

「ボール、フォア!」

とうとうフォアボールを出してしまった。

「よっしゃ!」

沢田はバットを放り投げた。

8番の小宮もバントの構え。





チクショウ…。チマチマと…。

山岡はイラっときた。

しかし、制球は定まらない。いや、もっとひどくなっていた。

「ボール、フォア!」

小宮もフォアボール。二死満塁。

「よっしゃあ!逆転のチャンスだ!」

「ピッチャー、ストライク入らなくなってるよ!」

明北のベンチからヤジが飛ぶ。

9番の川崎がバッターボックスに立つ。

「いけぇ!川崎!」

川崎もバントの構えをとった。

このやろう。バントで俺を揺さぶろうたってそうはいかねぇぞ。

山岡は投げた。だが、手に力が入らない。内角の甘い球。

明らかに力の抜けた球だった。

「川崎ぃ!打てぇ!」

大村の声を聞き、川崎がバットを持ち直し、フルスイングした。

バットはいい音をたてて、ボールをはるか後方に飛ばした。

「レ、レフトォ!」

山岡が江南高校のレフト、篠原に叫ぶ。

だが、ボールは篠原のはるか後ろにスドンと落ちた。


「よっしゃあー!」




明北ベンチが歓声に包まれる。

臼田、沢田、小宮がホームインしてくる。

5-4。川崎のスリーベースヒットで明北はついに逆転した。

「川崎!よくやった!」

大村が川崎に叫ぶと、川崎は笑いながら手を振った。




「お、俺が…。ち、ちくしょお…。」

山岡はマウンドでうなだれている。

「お、俺は…こ、江南高校のエースなんだ…。こんな格下の相手に…。」

あまりのエースの落胆ぶりに、江南ナインはかける言葉が見つからなかった。



「タイム!」




江南高校の監督が叫んだ。

監督はマウンドの山岡の所に行くと、

「山岡、交代だ」

と言った。

山岡はハッとした顔で監督を見つめた。

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