表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/90

(19)

藤田は大きく息を吐く。

ただでさえエースの楢崎が抜け、後輩の川崎が頑張っている。

チームの危機だ。

だったら俺がなんとかしなくてはーー。

ピッチャーが第一球を投げた。内角のストレート。

もらった。

藤田はまっすぐにバットを振った。




次の瞬間、ボールは下に落ち、キャッチャーミットにおさまった。

バットはボールに当たることなく、半回転した。

明稜ベンチは呆然としていた。

「い、今の…、フォークだよな?」

北野が呆気に取られた顔で言った。

「全然わかんなかったよ。いつ落ちたかもわかんない」

井川も何が起きたかわからないような顔をしていた。

なんてことだ。明は目を疑った。

あんなにキレのあるフォークを持っていたなんて。

これはまずい。

たたでさえ自分のチームのエースが抜けているのに、相手は衰えるどころかこんな珠をまだ持っていたとは。




第二球。

ピッチャーはゆったりとしたモーションで投げた。

外角低め。

もらった。

藤田はバットを振る。





キィン!





バットが球をとらえた音を響かせる。

ボールは宙に舞い上がった。





これはイケる!





明は小さくガッツポーズをした。

しかし、その球はあらかじめ深く守っていたレフトのグローブにすっぽりおさまった。

藤田は悔しそうにヘルメットを地面に叩きつけた。

続く大村も三振。フォークボールに手も足も出ず。

続く六番は、ショートの臼田博之(うすだひろゆき)。見た目はひょろっとしているが、バントなどの小技に定評があった。

「臼田ぁ!なんでもいい!転がせ!」

北野が激を飛ばす。

第一球。ピッチャーが投げる。

内角低めのストレート。

ざっと見ただけでも、120キロは出ている。

北野はサッとボールを構えると、その120キロのボールをコツンと当てた。ボールは三塁線に転がる。ピッチャーが拾いに行く。

「待て!俺に任せろ!山岡!」

サードの倉田が叫ぶ。

ピッチャーの山岡は一瞬ためらう。それを尻目に倉田がボールを拾い上げ、一塁に投げる。

送球がそれる。ファーストの大野がなんとかキャッチする。が、

「セーフ!」

という審判の声が響いた。




ランナーが出た。

明はまた小さくガッツポーズをした。

山岡は一塁を見つめたまま、呆然としている。

「これはいけるかも…。」

明はなんとなく、そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ