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川崎は大きく息を吸って、吐いた。
ノーアウト二、三塁。きっと相手はスクイズをしてくるだろう。
川崎は第一球を投げた。外角低め。
バッターはバットを降らない。
「スットライクー！」
審判の声が響く。
第二球。今度は内角高め。
バッターはここでも振らない。
おかしいな。もしかしたら、狙い球をしぼっているのか？
川崎は、そう思った。
ちょっと外してみるか。
川崎の第３球目。
内角高めのボールになるかならないかぐらいのコース。
「ボール！」
審判が手を横に突き出す。
コイツ、選球眼はあるな。
川崎は思った。
「いいか、笹山！ノーアウト二、三塁だぞ！流れは江南に来ているんだからかっ飛ばしていけ！」
江南高校の監督が激を飛ばした。
笹山はうなずき、バットを構え、川崎を見た。
気持ちで負けたくない。
大村がサインを出す。
外角の低め。これだったら打ち取れる。
川崎はゆっくりとうなずいた。
第４球目。セットポジションから川崎が投げた。
外角低め。狙い通りだ。
これなら打ち取れる。
大村は確信した。
明も、
「打ち取れる！」と信じていた。
笹山がスイングする。
音がした。
ボールとバットがぶつかる音。
その音と同時に、ボールは川崎の頭上に飛んでいった。
高い。
「レ、レフトォ――！」
大村が叫ぶ。
しかし、その叫びはむなしく響くだけだった。
ボールはレフトスタンドを軽々越えていった。
「ホームラン！」
審判の声と同時に、一塁側の江南高校は歓喜に包まれた。
４-２。逆転されてしまった。
川崎は呆然と立ち尽くしている。
おい、これじゃ負けちゃうぞ。
明はじわっと汗をかいていた。
