(11)
「プレイボール」
審判の掛け声とともにけたたましくサイレンが鳴り響いた。
明達は三塁側。明達は一年のため、観客席からの応援だ。
ーー大丈夫だよな。
明はそう自分に言い聞かせた。
一番はセンターの井川勝俊だ。確か三年生の中で一番足が速く、校内リレー大会でもアンカーを務めていたはずだ。
第一球。相手のピッチャーが投げる。
鋭く速い球は内角低めに構えていたキャッチャーのミットに収まった。
速い。明はそう感じた。多分130キロ前後は出ているだろう。
井川はそのスピードについていけなかったらしく、あっという間に三振になった。
「速いなぁ。あれじゃ打てっこねぇよ」
明のとなりの長瀬が愚痴をこぼした。
続く2番は北野龍太郎。こっちも三年生でショートを守っている。
だが、北野もあえなく三振。
そうだよな。未来なんてそう簡単に変わる訳じゃない。
肩を落としてベンチに帰る北野を見て明は思った。
結局過去に戻ろうが、未来が変わる訳なんてない。自分に何ができるというんだろうか。
明はふとグラウンドに目をやった。3番の岩崎が打席に立っていた。
そういや岩崎先輩は一年からレギュラーだったな。明はそんなことを思った。
とその時、キィンという音が球場に響いた。
ボールはライト方向へぐんぐん伸びていく。それを相手の野手が追っていく。
ボールは野手のグローブにすっぽり収まった。
「スリーアウトチェンジ」
審判の声が響き渡る。
前と一緒だ。
明は守備につく先輩達を横目で追いながら思った。