(10)
地方大会当日。空は青々と澄んでいて、大会に臨む明たちを歓迎しているようだった。
明はトーストを口にほお張る。
「よお、明、今日はいよいよ大会だな。」
欽一が話しかけてきた。
「うん、そうだね」
「今日は明にとって初めての大会だな。ちゃんと先輩のサポートをして、甲子園に行けるようにしなきゃな」
欽一はそう言って目玉焼きを口に運んだ。
「うん、わかってるよ」
明はトーストをかじった。
「どうだ、先輩は上手くなってるか?」
「まぁ上手くはなってるよ。毎晩毎晩7時ぐらいまで練習やってるし、バッティングとかも前より上達したみたいだし」
「そうか。じゃあ期待してもいいな」
期待か。明はふと窓を見た。太陽が目に突き刺さるように眩しかった。
「いいか、3年生にとってはこれが甲子園に行けるかどうかの大事な大会だ。気合い入れていくぞ!」
森先生が普段は出さないような大声を出した。円陣を組んだ部員達のオーッ、という掛け声がそれに続く。
明が会場に向かう途中に美穂が駆け寄ってきた。
「先輩達甲子園行けるといいね」
「あぁ、そうだな」
明は知っている。この先どうなるかを知っている。
「先輩達今日までずっと練習してきたもんね。絶対行けるよね、明くん」
「あぁ」
美穂が言った「絶対」という言葉が明には重くのし掛かった。