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小さな村の大きな喫茶店

作者: シラネ

 トール商店5ヵ条の掟



 1,15歳になる者は、トール商店(以下本家)より資金(以下支度金)が出て、16歳には商売を始める事、なお、支度金は20歳になるまでに返却する事。


 2,20歳になるまでに資金が返却出来ない場合や商売が続けられない場合(病気や怪我は除く)は本家にて修行を行う事。


 3,商売の事で親、兄弟、親戚には頼らない事。


 4,期間中、帳簿を付けて半年毎に本家に送る事、不正がないかチェック後に返却する。


 5,期間中は日記を書き資金が返却出来ない場合のみ、日記と帳簿を本家に送る事。返却はせず、後進育成の為の資料となる。



 此所はゲルンレア。聖都アーウィルより馬車で半日行った所にある人口200〜300人程の小さな村です。主な産業は村から徒歩で半日行った山の中腹にある「女神の泉」と知る人は知っている洞窟温泉です。「女神の泉」とは、遥か昔、女神がよく訪れていたとされている泉で、風光明媚な観光スポットです。また、洞窟温泉はあまり知られていない観光スポットで地元民の癒しスポットになってます。


 私はカレン。16歳からこの地に住み早2年、猫のシロと喫茶店を営んでます。もう皆さんはお気づきでしょう、トール商店の掟により無理矢理家を追い出されました。


 あれは忘れもしない15歳の誕生日…一通の手紙が届きました。その手紙を見たお父さんは、手紙を持ち私から目を反らし仕事部屋に籠りました。そしてその日のうちにお父さんに呼ばれ、掟により16歳になったら家を出て商売を始めなければならない事を言われたました。「今まで何にも音沙汰がなかったのにいきなりはなくない!?」との問いに「言い忘れてた、勉強だと思って行って来い。」こうなったら秘技「酷い!お母さ〜ん、お父さんが苛めるよ〜」お母さんに言い付ける発動「あらあら、カリンももうそんな歳なのね、頑張ってらっしゃい」不発でした。


 なんでもお父さんはトール商店の現当主の実兄に当たり、掟の最中にアーウィルの下町の宿屋の一人娘であるお母さんに一目惚れをしたお父さんの取った行動は、ほぼ決まっていた当主の座を次に優秀だった弟に譲り、前当主(祖母)により条件付きでお母さんの家に婿入りしたそうです。その条件とは、2つ、お父さんの実家とは縁を切る事(世間体の問題らしい)と生まれてくる孫に掟を受けさせる事。これ完全にとばっちりじゃない!?


 そんな事を思い出してると、からーんとドアベルが鳴り、雑貨屋のご隠居夫婦が入って来ました。


 「こんにちは」


 「カレンちゃん、いつものお茶を2つちょうだいな」


 「いらっしゃいませ、お菓子はどうしますか?」


 「後で皆来るからその時でいいわよ」


 「わかりました」


 お茶の仕度をし、2人の元へお茶を運び、これから来るであろう人達の分も一緒にお茶菓子を用意しておく。


 雑貨屋のご隠居夫婦は、ブランさんとカリンさんといい、ブランさんは無口で必要最低限しか言葉を交わさないが、お父さんに雰囲気が似ている…見た目は全然違うけど。そしてカリンさんは、見た目は女性と男性の差があるがお父さんとそっくりで…性格は全然違うけど、私は絶対にお父さんは二人の子だと思ってる…姓が違うけど。私は母方の親戚にしか会った事がなく、父方の親戚は紹介された事がない。怪しい人は宿屋に泊まってたけど、それにこのゲルンレア、何年か前に宿屋のお客さんが話してた、確か「いまいちパッとしない」「作物の育ちが悪い」「特産品がない」等々、私が聞いてたゲルンレアとこのゲルンレアは違いすぎる。そして何より…からーんとドアベルが鳴り


 「こんにちは、カレンちゃん」


 「邪魔するぜ」


 「・・・・・(ペコリ)」


 「カレンさん、いつものお茶を4人分とお菓子を適当に持って来て」


 「いらっしゃいませ、奥でお待ちですよ」


 上から前村長のシャルルさん、その夫のジェロームさん、シャルルさんは、前村長でここにお店を出す時にお世話になった人だ…すっごい強引だったけど…ジェロームさんは狩りが得意でよく獲物を仕留めに山に行き、お裾分けと称してはお肉を届けてくれる、きっとシャルルさんには内緒で捕ったお肉なんだろう、私は助かってるけど。次に無口な人は宿屋のジャスさん。ジャスさんは料理人で長年宿屋兼食事処の厨房を一手に担っていた、最近になり息子夫婦に厨房を任せ午後のお茶会に顔を出す様になった人だ時々料理にアドバイスをくれては帰って行く、最後はジャスさんの奥さんのケリーさん、ジャスさんが厨房仕切ってた人ならケリーさんはフロアを仕切ってた人だ、時々お茶会に参加してはすぐに帰って行ってたが、娘さん達が宿屋を手伝う様になってからは段々と長居して行く様になった、こちらも接客に対してアドバイスをしてくれる。

 用意の出来たお茶とお菓子をご隠居会(私命名)に持って行く。


 「お待たせしました。今日のお菓子は新作で木の実と木苺のケーキです、後で感想聞かせて下さいね」


 木の実は去年の秋に森で取ってきた物を砕いて入れてみたし、木苺も同じく去年取った物を蜜漬けにしたのを倉庫から出して来た、今月の自信作だ。


 「カレンちゃんのお菓子は美味しいからつい食べすぎちゃうのよ」


 「またまた、そんな事言っても何にも出ませんよ、カリンさん」


 「もう、冗談じゃないわよ、うちの孫のお嫁さんに来てほしいぐらいよ」


 キタコレ!?何気ない様子を装いながら孫の嫁発言…喫茶店が落ち着いて来たと思ったらこの発言。絶対裏がある。って言うか他の人黙ってないで助けて。


 「もう、そんな事言っちゃって、お孫さんも好い人の1人や2人ぐらいいますよ」


 「そんな甲斐性があったら言わないわよ」


 「あははは、またの機会にお願いします」


 これ以上はマズイから退散します!


 「あらあら、逃げられちゃったわ」


 カリンさんの呟きを聞き…そして何より考える、カリンさんに言われるまで(嫁発言)気が付かなかったけど、このお店のお客さんはほとんどと言っていいくらい年配層がほとんどだ、若い人もいるにはいるが、彼女(婚約者)がいたり結婚してたり、理由は様々だが結婚対象者ではない(あれ?逃げ切らないと結婚させられる??)いい人達だけど、次にお孫さんについて考えてみよう、ブランさん達には3人のお孫さんいる。


 1番上はカインさんで24歳、見た目はブランさん達に全然似てない、でもたぶん商人としては優秀だと思う。普段はゲルンレアで雑貨屋を営んでるけど、揃わない物がないってぐらいなんでも取り寄せてくれる。


 2番目はカイリさん。20歳で主に仕入れを担当してるみたい。あんまりゲルンレアにはいないけど来た時には喫茶店に寄ってくれてお土産をくれる、いい人なんだろうけどなんかチャラい。やっぱりブランさん達に似てない。


 3人目はカナンさん、16歳で今年からゲルンレアに来た。カリンさん曰く、「カナンは北のサガルから来たのよ、仲良くしてあげてね。」たぶん掟の為に来たんだと思う。行商?仕入れ担当交代?よくわからない立場だ、けどブランさん達に一番似ている。


 以上がカリンさんが進める夫候補だ。この人達と結婚する気は全然ないんだけど。


 まあ、実家の宿屋を継ぎたいからここに留まる気は全然ないし、何より実家の厨房で働いてるラス(18歳、13歳から実家の宿屋で働いてる、カレンと結婚の約束をしてからオールマイティーを目指し只今修行中)と結婚の約束しちゃってるんだよね。お父さんもお母さんも知ってるはずなのに、お父さん達何にも言ってないのかな…?


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