彼女と僕の情景(描写練習)
タイトルにもありますとおり描写練習です。
もし何かありましたら感想でも一言コメントでもくださると嬉しいです。
誰かを好きになるのに、理由なんていらない。
というのは、まぁよくある言葉である。けれど、真理だなぁと、冷えた彼女の手のひらを握り歩きながら、僕は思う。
寒空の下、お互い手袋はもっているのに、敢えて裸にされて、野晒しにされ、かわいそうに震える手のひらを、お互いにかばい合うように、あるいは巡り合わせるようにして、握りあわせる。
「ん? どしたんですか?」
彼女が顔を上げ、首をかしげる。
「どしたんですか? って、何がですか?」
「何やら嬉しそうな顔をしておりますので」
「それは当然、あなたと手をつないで歩いているからですよ」
「さいですか」
「さいですよ」
心なしか、握り合った手のひらに力が込められる。
力を込めたのは、はたして僕の右手か君の左手か、はたまた両方か、少なくとも、“君の左手だけ”というのが正答ではないとうことだけを、僕は知っている。
イルミネーションと定番のクリスマスソングに彩られる街並み。
ネオンやらそこここを歩きまわるカップルやらそのカップルに意味ありげな視線を向ける人々やらに満ち満ちる街並みは、なんだか酷く、カオスという言葉が似合う。けれども、そんなこと僕には関係なかった。
僕にとって大事なのは、今手を握り、隣を歩く君がいるということと、そのことに対して僕は幸せいっぱい胸いっぱいだなぁということでして。
「またまた幸せそうな顔をしていらっしゃる」
隙を突くような彼女の言葉。
彼女は、首に巻いたもふもふとしたマフラーで唇を隠している。
「とても、幸せだからね」
けれども、赤色に染まるほほまでは、隠せていない。
「……さいですか」
マフラーの下で小さくそう呟いた彼女を、とても愛しいと、素直に僕は思った。